第3話:銀色の使い魔が結構優秀かもしれません
銀色のうん…………もといミスリルスライムを見る。
状態異常が瀕死ってことは死にかけてるってことだよな?
やばい俺がもしかしてやっちゃったのか?
戦って結果的に死んでしまったのならまだしも
踏みつぶして殺してしまったとなれば罪悪感がある。
うーんどうしたもんか…………あ、あれ使ってみるか、魔術。
まだ確認してないからわからんけど回復魔術くらいあるだろ。
魔導書アプリを起動して確認する。
「えーと、回復回復…………あ、あった」
回復魔術の項目をタップする。
回復魔術の画面が開き回復魔術が表示される。
初級魔術 【ヒール】。
下に書いてある文字が魔術を使用するときの詠唱?を読み上げると使用できると
思うがなんでカタカナ表示なんだ?
でも初級魔術って某ゲームのホ〇ミみたいなもんだろ?
これで瀕死の魔物助けることできるのか?
うーん、まあいいや!これで死んじゃったら死んじゃったらで
そのときはその時だな。
俺は悪くない。そこで寝ていたお前が悪いんだ。うん。
俺は瀕死のミスリルスライムに左手をかざして詠唱を唱える。
「癒しを求める子羊よ、神の一滴の雫を与えよ。初級回復魔術!」
その詠唱を唱えるとミスリルスライムに光が集まり始める。
おお、どうやら成功したみたいだ。カタカナ表記だったから噛みそうだった
けどなんとか噛まずに読めた。
その光はミスリルスライムに集まり始めた。
どんどん集まり始めた。
なんかめっちゃ集まり始めた。
集まり過ぎじゃね?
そう思った瞬間なんかすごい光の柱がミスリルスライムに起きた。
え?大丈夫なのこれ!?回復魔術ってより攻撃魔術にしか見えないんだけど!?
でもよく見るとすごい勢いで回復してる気がする。
いや、めっちゃ回復してるわ。うん、すごい勢いで怪我が治ってる。
でもこれほんとに初級魔術か?
初級魔術使ったのにケア〇ガくらい回復してる気がするんだが。
5秒くらいでその光は消えて無くなった。
たぶんこれで大丈夫だよな?ミスリルスライムの怪我治ったぽいし。
「おーい大丈夫か?」
一応話しかけてみる。
「あ、ああ大丈夫や」
なんか見た目に反してすごいエセ関西人みたいなしゃべり方するなーこのスライム。
つーかしゃべれるんかこいつ。
「いやー油断していたところを後ろからいきなり冒険者にズバッと斬られちまいまして
死ぬところでした。ホンニありがとうございます」
「お、おう」
あれ?もしかして俺が踏んだせいで瀕死になったわけじゃなかったのか?
なんか助け損した気分だ。
「しかし驚きましたわ。あんだけの傷を一瞬で直ちまうその回復魔術、これが噂に聞く
上級のさらに上の回復魔術ってやつかいな?」
「いやアレただのヒールだ」
「いや嘘やろ!?上級ポーション使っても治らんかった怪我やぞ!?
ヒール程度で治るわけないやろ!?」
いやそー言われましてもマジでヒールなんすけど。
「あ、でもその恰好からすると……そういうことかいな」
ミスリルスライムはそういうと一人で納得したように呟く。
「あんさん白魔導士だったか、そりゃあヒールでもあの回復力
はあり得るかもしれへんな」
「あ?いや、俺の職業は旅人だったはずだが」
白魔導士ってあれだよな?回復専門職業、いわゆるヒーラー系
職業の一つだったと思うが。
「はあ?いやいや、あの回復力で旅人なわけないやろ!?」
いやそんなこと言われてもステータス確認したときは
旅人だったと思うんだが。
「それにその恰好みれば誰でも白魔導士ってわかるやろ?」
「恰好?どう見たって俺の恰好は旅人風の服装…………じゃない」
俺はいつの間にか白に赤い色の模様や刺繍が入ったローブに
なっていた。
あれ?いつの間に着替えたの俺?
【職適正のローブ】 職業や戦闘方法に適した服装に自動的に変化する。
あ、そういえばこのローブって自動的に変化するんだっけ?
もしかしてさっきの回復で白魔導士に目覚めたから服装が変化したとか?
ステータスアプリを開く。
職業 白魔導士
スキル 超魔力 白魔術補正
いつの間にか旅人から白魔導士の職業に変更されてる。
なるほど、職業が追加された場合自動的に服装が変わるのか。
でも俺ぜって―このローブ似合ってない自身があるわ。
「でも、兄ちゃんがそのローブ着ると白魔導士って言うより暗殺者やなw」
「自分で言うのはいいけど人から言われると傷つくって言葉しらないか?」
「じょ、冗談やさかいそんな怒らんといてーな」
俺の視線にビビって一歩下がるミスリルスライム。
いや別に怒ってはいないからな?関西人的なノリだとはわかっている。
ただ、ちょっと落ち込んではいるけどさ。
「あ、そういえば申し遅れておりやした。私ミスリルスライムのヘドリックや
よろしゅうな」
「ああ、俺は絢斗って言う。職業はお前の言う通り白魔導士だ」
一応職業は白魔導士に訂正しておくか。先ほどまで旅人だったが今現在は何故か
白魔導士になってるわけだしヘドリックもあの回復力なら白魔導士だって言ってた
からな。
そう言った方が違和感が出ないと判断した。
「でもケントさんは変わってんな、普通ミスリルスライムは見つけたら経験値稼ぎに
ぶっ殺しにかかるもんやで?」
不思議そうな表情で俺を見上げるヘドリック。
ヘドリックはゲームで言う経験値がむちゃくちゃもらえるいわゆる経験値効率の
高い魔物って感じのようだ。
だから見つけたら即倒すのはこの世界でも常識なんだろう。
ヘドリックよ、苦労してんな。
「あー最近田舎から出てきたばっかでな、経験値がたくさんもらえる魔物とかそういうの
わかってなくてな」
と言うことにしておこう。異世界から来ましたって説明するのもめんどくさいし。
「なるほど、でも見ず知らずの野生の魔物を助けるなんてそうそうできるもんじゃないで?
ケントさんは広い心をお持ちなんやなー」
すまんヘドリック。俺が踏んで瀕死になったと思ったから助けただけだ。
割と心が狭い理由で助けたわ。
「ところでケントさんは旅をしてるのですかい?」
「あー、まあそんなところだな」
「もしよろしければあっしを使い魔として使役していただけませんか?」
とヘドリックが申し出てきた。
うーん使い魔ねー。
「使い魔ってあれだよな?使役する魔物ってことだよな?」
「はい、洗濯や家事から冒険のルート作成からダンジョンマッピング一通りこなす
ことができまっせ?」
なるほど、それだけできるならかなり有用かもしれんな。
それにやはりこの世界にはダンジョンがあるのか、もしダンジョンとかに潜る機会が
あればヘドリックがいるだけでもかなり探索が楽になるかもしれんな。
それにこの世界の常識などもヘドリックからもう少し聞いておきたいからな。
「よし、それじゃあ頼むわ」
「ありがとうございます、これであっしはケントさんの使い魔となりやした」
「え?もうなったのか?」
「はい、あっしにはもう使い魔になるいしがありましたので後はケントさん
から許可もらうだけでしたからね」
ステータスを確認する。
使役 ヘドリック(使い魔)
ステータス画面に使役という項目が追加されてそこにヘドリックという名前が
追加されている。確かに使い魔になったようだ。
「さて、ケントさんの今後の旅とかの予定は決まってるんですかい?」
「いや実は全く決まってなくてな、とりあえず近くの街にいこうと思うんだが
この辺にないか?」
「はい、個々から東に10キロくらい先にミラって街がありますからそこへ
向かいやしょう」
ヘドリックがミラという街までの経路を説明してくれる。
これはヘドリックを使い魔にして正解だったかもしれんな。
「あ、それとヘドリック、道中でいくつか魔術を試したいんだけどいいか?」
「ああ、構いやせんよ?」
ヘドリックから同意を得る。まだ使用してない魔術がいくつかあったから
使ってみたかったんだよな。
「ところでなんの魔術を試すんですかい?」
「ああ、オーソドックスにファイアボールを試したくてな」
「はい…………?」
「あの、ヘドリック?」
あれ?なんかすっごい冷めた目でヘドリックに見られてる気がするんだが
何かまずいこと言ったか?
「あの、ワザと言ってるなら申し訳ありませんがあっしの記憶が正しいななら
白魔導士の職業は攻撃系の黒魔術は使用できないと思ったんですが…………」
「は?」
俺は確認のためにすぐにファイアボールのアプリを開き詠唱を行う。
だが火の粉すらでなかった。
俺は久々に挫折と言うものを味わったのだった。
次回投稿は5月2日の18時投稿予定です。