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平凡を奪われた18歳  作者: 佐山 煌多
第2章 逃亡の先に
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クエスト探し

ボフッとベットに体を沈め、襲いくる睡魔に抵抗することもなく眠りに落ちる。


…なんか色々と疲れた。


彼の言葉がどれだけ本気か知らない。分かるわけがない。そんな奴、今まで会ったことがない。

だからか、どこか嘘くさい。信じることができない。

前の俺なら…、馬鹿正直にゲームのイベントと重ねて、重要キャラとの邂逅イベだかなんだとかと1人で喜んだとこだろう。

だがしかし、今の俺は全くと言っていいほど素直に喜べない。もっと言えば不安要素の一つとしか認識できていなかった。


…当たり前だ。これは現実で、ゲームなんかじゃないんだからな。


彼の身分を証明するものは何も無かったが、仮にも王族と名乗ったのだ。それの意味する重さは計り知れない。

…というか、俺じゃあ計れるわけもなかった。

表面上では気さくで人当たりのいい、ちょっとイタズラ好きなフツーの男だとは思う。

が、そんなスクールカースト上位に位置してそうな人間と上手くやれたことは一度もないし、上手くやろうとも思わない。

ボッチで真面目に無駄に青春を過ごした俺だからこそ、そういった人間とは反りが合わない。

得てしてイケメンには女がセットで存在し、大抵はルックスも悪くないというのが相場だ。

そんな色々持っていそうな奴が「友達になりたい」とか、他所へ行けというものだ。

異世界だろうと俺の内面は変わらないし、苦手な人種も変わることはない。

それでいい。何となく馬が合いそうな奴と絡み、死なない程度に出稼ぎをして生きることを目標とすればいい。


そんな後ろ向きな事を前向きに考えつつ、睡魔の淵で誰かに意識を譲った。



ーーー朝。

とりあえずはギルドにやってきた。

こっちの土地感とかまるでないから、とりあえず大人数募集してる仕事を探したいと思う。

ここの内装は俺が知っているより倍以上の広さだが、人が多いこと以外は特別何も変わらなかった。

壁には無造作に張り紙が貼られており、中には指名手配書みたいなものまである。


(どこの世界にも賞金首的なのはいるのな…。)


若干、その金額にそそられないわけではなかったが、何処にいるかも分からない輩を探そうなんて途方も無いのでやめておいた。あと怖い。下手したら返り討ちにあう。

(人探し…、探し物、調査、討伐、実験、採取、囚人移送…。)

ゴチャゴチャとジャンル分けされていない壁のビラは、感覚的なものでしかないがバイトの求人広告とか、ハローワーク的なとこに来たみたいな感覚になる。

精々ネットのバイト探しのサイトくらいしか見たことない上に、ハローワークなんて行ったことないけど。


「…ちょっと、ちょっとどいて。」


何にしようかと漠然と眺めていたら、唐突に聞き覚えのない声に話しかけられる。

が、振り返ると誰もいない。

…なんて、下手なネタな訳だが、マジで後ろには誰もいなかった。

そう、後ろには。


身長差のせいで一瞬どこにいるかわからなかったが、横目にしっかりと赤毛の子どもの姿が視界に入っている。

「あ、ゴメンね。」

…子ども?

壁に貼ってあるビラを取ろうと背を伸ばし、他のビラと重なっているせいで取りづらそうにしている。

「コレかな?」

上から重なっているビラを押さえ、目当てのを引き抜くように取ってみる。

すると端は少し破れてしまったが、どうにか綺麗に取ることができた。

「ありがと。」

「どういたしまして。」

少し萎縮してしまっただろう少年に構わず、視線の先をビラに戻して顔を上げる。


(…簡単…ねぇ。)


賞金首のビラにこそ書いてはいないが、大多数のそれにはこの言葉が入っていた。

…そしてこの手の簡単というのは、雇い主の主観である事が多い。(経験則)

つまりは、やり方を心得ている者でなければ簡単ではない事が多いのである。(あと根性ある奴)


「掃討作業って…。」


このジェネレータスライムとか書いてある依頼、どう見ても何か怖い。

ジェネレーターとかいう英語の意味忘れちゃったけど、機械系なニュアンスだけは伝わってくる。

その上スライムだ。この世界でスライムがどういう扱いを受けているのかはまだ知らないが、最弱なのか酸性なのか…。

「…まぁ、評価もCだし…。」

物は試しというし、他の人探しやら実験台やら講師募集の張り紙よりかは楽なんじゃなかろうか。

そう思い立てばそれ以上の思考は止め、受付へとビラを持っていく。


「スミマセーン。」

「はい、ご依頼ですか?」

なぜに受付というのは綺麗どこばかりが揃うのかあんまり考えたくは無いが、ここの担当の方ももれなく美人と言っても過言では無いポテンシャルの持ち主だった。

「あぁ、えーと、これ受けたいんですけど。」

幾ら可愛い子と何度か喋ったことがあるとはいえ、やはり緊張して声が上ずってしまうのは非モテの特性なのだろうか。…そうなんだろうな多分。

「はい、参加申し込みですね。カードの提示をお願いいたします。」

「はい。」

言われるがままにカードを手渡し、コンビニで商品のバーコードを読み取るが如くレジのアレを当てている。

「ありがとうござます。少々お待ちください。」

ご丁寧に両手でカードを手渡され、少し指に触れてしまった事を内心動揺している俺がいる。いやマジで、なんかスミマセンと連呼したくなるねコレ。

そんな内心を顔には出さず、慣れた手つきで作業を進めるお姉さん。

「…あの、失礼ながら、お受けするご依頼書に間違いはございませんか?」

ピクッと顔のどこかが反応すると同時に、数秒とまたずにそう問いかけられる。

…え、俺なんか間違えました?

「え、えぇ。」

「お客様のランクですと、少々、こちらのご依頼は難易度が高い物ですが…。」

し、知ってて持って来てるんですけど(汗)

「あ…。受けられないって事ですか?」

「いえ、そのようなことはございませんが、我々としては、お勧めできない内容とだけ申しておきます。」

腕に自信がない奴はやらない方がいいって事か。そもそも俺自体が最低ランクだし。

「そ、そうなんですか…。えーと、なら、何かオススメってありますか?」


「かしこまりました。っ、こちらがEランク相当のご依頼書ですので、ご覧ください。」

取り出し辛そうにバインダーに綴じられている依頼書の束を出して来た。

「ありがとうございますっ。」

(分厚いな…)

どんだけ世の中困ってる奴いるんだよ…。


【緊急、トーム探し!!】

報酬:300ブロン

内容:いなくなった黒い長毛種の猫を探してください!!

背中に星の様な模様があります。

その他:見つけてくださった方には、お礼に焼き菓子を差し上げますので!!


…猫探し。


【子供の獣人を探してます】

報酬:10シラバー

内容:草食種のホース、10歳未満男子が行方不明です。2の日から姿が見えていません。どなたか見つけてくださったらご連絡ください。

その他:名前はシーです。


…え、ちょ、誘拐?いや家出か?


【天然の果実を10個】

報酬:500ブロン

内容:魔力の篭った果物をもってきて。質がよければ報酬上げちゃるよ。


まず魔力の篭った果物ってなんだよ…。普通に売ってるのじゃダメか。


【練習台】

報酬:能力付加装備

内容:壊しません!古くなった装備を実験台にさせてください!

その他:複雑な式は組めないので、過度な期待はしないでください。


んん?あれ、これお得なんじゃねーの??


他のページもパラパラ見てみたが、どうやら壁に貼ってあったのより格段に簡単なものばかりみたいだ。

ただ、そこにモンスターと戦うような内容が無かったこと以外は。

「あの、この人の依頼ってどういうことなんですか?」

「こちらですか?こちらは主に学生のご依頼です。魔法が掛けられている装備は高価ですから、お持ちで無ければオススメですよ。」

「随分、美味しい依頼なんですね。」

寧ろこっちがお金出すくらいの依頼だと思っちゃうくらいにはお得だ。

「そうですね。学生さんお一人で大量の武器を仕入れるのはなかなか難しいですから、そこは持ちつ持たれつの関係なんですよ。」

ふむふむ。仕入先が無いとな、そりゃしゃーないか。

「なるほど…。」

「あくまで学生なので、その点を充分に注意していただければと思います。」

「?というと。」

「専門店の様な仕上がりを期待される方も少なくないので、多かれ少なかれトラブルが絶えないんです。過去には暴力沙汰になったこともございます。」

暴力沙汰って…、いやいや、流石にね。壊さないって文言あるし。だいじょーぶ…だよね?だよね?

「な、なるほど。」

「どうします?お受けしますか?」

「…あー、じゃあ、取り敢えずお願いします。」

「かしこまりました。お一つでよろしいでしょうか?」

チラリと持って来た依頼書を確認されるが、流石に止められてしまっている手前やめとくことにする。

粛々とゴブリンでも狩りますよ。

「あー、はい。取り敢えずそれだけで。」

「はい。かしこまりました。」


しかし、結局ジェネレータスライムって一体…。




【掃討作業、ジェネレータスライム】

報酬:5ゴールド

内容:ギルド指定クエスト。ジェネレータスライムの討伐。

近年増加傾向にあるこの個体達をまとめて掃討してもらいたい。主に遺跡群付近に出没することが多いため、パーティーを組んで討伐されることを推奨する。指定数超過時には一体辺り相場の値で買い取りに応じる。


その他:核と報酬を交換のこと。

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