第8話 水魔リュムナデス
俺達はあの気味の悪い女のいう通り、南西にある小屋へ向かった。俺は正直あんなに気味の悪い敵か味方かも分からない女のいうことなんか信じたくなかったが、ベルが行くというのだから仕方がない。俺は渋々前を行く二人のあとを付いていった。
あの女が言う小屋には直ぐに着いた。
「ベル、ここがあの女の人が言っていた小屋だよね?」
「多分・・・そうだとおもうけど・・・何とも言えない小屋だな・・・」
確かに俺もそう思った、果たしてこれは小屋と呼べるものなのか?と疑問に思った。何故かというと、目の前にあるのは大岩と正面に穴があるだけ・・・これは小屋というよりも洞窟というべきなのでは・・・と俺は思った。「多分、この中にあの人が言っていた人がいるんだよね?」
「よし、入ってみるか・・・」俺達はベルを先頭に中に入っていってようやく、あの女のいっていたことが分かった。洞窟の中に入っていくにつれて、最初は薄暗かった洞窟もどんどん明るくなってきて、最終的には小さな小屋が出てきた。モヤモヤしていたものが一気にふっきれて、俺達三人は互いに顔を見合わせ頷いた。
「じゃあ、いくよ。」
ネイミが先陣をきってドアをノックした。すると
「入れ」というしゃがれた声が聞こえてきた。俺たちは言われるがままに戸の中に入った。
中は洒落たレストランの様に椅子と机がたくさん並んでいた。
その一番奥の椅子にまるで、魔法使いのような恰好をした老婆がポツンと座っていた。老婆の正面には机と椅子があり、机には不思議な絵の描かれたカードや水晶玉や怪しげな液体の入った瓶が並べられていた。
老婆は何かを膝下で見つめていたが、俺達が入ってきたのが分かると微笑んで、
「よく、来たな。ここに座りなさい。」と正面の机を指さした。
俺達は再び言われるがままに椅子に腰をかけた。
「あの!なんで俺達が来るって・・・」
「「わかったんですか」」老婆とベルの声が重なった。「・・!?」
「「あの何で今俺の言いたいことがわかったんですか?」」
再び老婆とベルの声が重なった。
老婆は微笑みながら膝元に置いてあった緑色に輝く玉を俺達のまえに差し出した。「これは
「未来水晶玉」といってのぅ、念を送れば対象者の未来が分かる優れ物さ・・・これで、お前さん達がくることも分かった。」
「「あの僕達、泊めてもらえそうな村を探しているんですけど・・・」」
老婆とベルの声が三度重なった。
「・・・・」
俺は段々イライラしてきた。このババァ俺達を苔にしやがって・・・老婆は念を水晶玉に送って俺達の未来を調べていた。
「見える、見えるぞお前さん達の未来が、ん・・・これは?お姉ちゃん、そこにあるカードに見覚えはないかのう??」
「えっ?カード?あ、これのことですか?私もこれが気になっていたんです。召喚士が使うカードですよね?・・・」
ネイミが目を輝かせて聞いた。
「ああ、実はのぅ私も若い頃は召喚士だったんじゃ」
「今、そこにあるのは、牡鶏コカトリス、巨人ギガンテス、幻鳥ハーピー、蛇亡霊メデューサ、水魔リュムナデスのカードじゃ。今わしがお前さんの未来を調べたらのお前さんはこれらのカードを使って何かと戦っておった。」
「戦い・・・ですか?」
「気が向かないなぁ」
「これ、お姉さん、未来からはにげられないんじゃ、目を背けてはいかん。」
急に暗くなったネイミを老婆は叱った。「お姉さん!未来から目を背けてはいかん!お姉さんはこれから物凄く強い力に引かれるだろう、でもお姉さんはそれを引っ張り返してやりなさい!分かったか?分かったなら・・・」
老婆は今度はカードに念を送った。
「今、そこのカードに私の力も送っておいた。その
「水魔リュムナデス」のカードを見せれば、村に泊めて貰えるだろう・・・」
こうして、俺たちは老婆に礼を言って、小屋を後にした。なぜ、あの老婆はネイミのことだけ占ったのかはわからなかったがこれからも戦いが続くということは・・・・いや、気を引きしめないとな。
ーネイミ達が去ったあとの小屋ー
(ふぅ・・・まさかあの娘本当に水魔リュムナデスを持って行くとは・・・)
「上出来ね」
気が付くとそこには新聞記者のような恰好をした嬢がいた。
「アルか・・・」
「アル、本当にあの娘に水魔リュムナデスを渡してよかったのか?」
アルと呼ばれた女性は怪しげに笑った。
「いいのよ、あの娘に水魔リュムナデスを使いこなせる力があるかどうか、じっくりと見させてもらいましょうよ。」