第7話 道しるべ
こうして、ベル、ネイミ、リックからなる
「ベネリ傭兵団」の旅は始まった。ベルは任務が終っても、イベリアに帰還しなかったため、
「死亡兵」として扱われることになったが・・・彼はそれでもよかった。イベリアに帰っても、もう心の許せる友はいない・・・帰ってもまた任務を明け暮れる日々が待っているだけだっだからだ・・・
それなら今此処にいる心の許せる友、リックとベルと共に気楽に旅をするのも悪くない・・・と思ったからだ・・・
これから起こる事が決して気楽ではないと知らずに・・・ベルたちは休養をとる為に泊めて貰える村を探していた・・・
「誰だい?」
ネイミが村長の家のドアをノックした。中から出てきたのは大柄で不精髭を蓄えた白銀髪の男性だった。
ネイミはその威圧感に圧倒されながらも尋ねた。
「あの・・・私達旅をしているものなんですけど・・・」
「旅人だと・・・?それでなんだい?いちいち区切らないで圓て言ってくれないかな?こっちもいそがしいんでね。」
村長が無愛想に言った。「は、はい、それでどこの村をあたっても泊めてくださらないので、もしご迷惑ではなかったらこの村で一泊させて欲しいんですけど・・・」
「ご迷惑だ」と村長がキッパリと言った。
「この村の財政を見てみろ、分かるだろ?自分達だけ生きていくのも厳しい貧乏村だ・・・残念だが・・・よその者を泊めてやれる余裕なんてないんだ、この村だけじゃねぇ。ここの区域はみんな、あいつらの支配下にある・・・あいつらをとっちめない限り、ここの区域はずっと貧乏村ってわけさ・・・分かったか?分かったなら悪いが他の区域を当たってくれ・・・」
「あっ、待って!」
ネイミが止めたが村長は戸を閉めた。
「どうやら、この村も駄目みたいだな・・・」
リックがうなだれた。
「みんな、おんなじ事を言っている・・・あいつらって?なんなんだ?」
「ダークフェザー・・・漆黒の翼よ」
三人はお互いの顔を見合わせた。後ろに見知らぬ女性が立っていたからだ。
風貌は何処にでもいる、新聞記者のようだが・・・
「あの、あなたは?」
ただ、コートと帽子の間に隠れている目は暗闇にいる猫の様にギラギラしていた。
「アタシ?アタシは・・・フフ、誰でもいいじゃない?」
「何だ?こいつ気味悪いなぁ・・・」
「リック!」
悪言を呟いたリックにネイミが注意した。
「フフフ、いいのよ、お嬢さん。それよりね・・・いい情報をもってきてあげたの。」
「なんだ、それは?」
ベルが聞き返した。「いい、一回しかいわないからね。よく覚えておくのよ。ここから、2km程南西に行ったところに、小屋があってね、一人の老婆が住んでるの・・・そこにいきなさい。そうすれば、きっとその老婆がいまのあなたたちを助けてくれるはず・・・」
そういうと、彼女は消えた、いや姿をくらましたわけではなく、ベル達の前でどんどん透けて最後に消えたのだ。
「なん!?なんなんだあの女?」目の前で起きたことが頭の中で整理されていないリックはすっかり動転していた。
「よし、彼女の言った老婆の所にいってみよう。」
ベルはリックとは対照的にいたって冷静だった。「はぁ?本気でいってんのか!?」
リックは信じられないという顔でベルを見つめた。
「このまま、あてなしにふらつくよりは良いだろ?彼女が言った漆黒の翼っても気になるしな・・・」
こうして、ベル達は彼女の残した、言葉を頼りに老婆の元に向かうのだった。