第6話 ベネリ傭兵団
ー古森 ー
「さぁ、お前の願いを言ってみろリック」蜘蛛が再度促した。
「俺の願いは・・・俺の願いは・・・」
「そこまでだ!」
「何だぁお前は?」
気が付くと蜘蛛の後ろにはネイミとベルとかいう男がいた。
「今はリックの願いを叶える時間だ・・・邪魔する者は消えてもらおうか?」
「それがそうもいかないのよね、化け蜘蛛さん」
「何だと?・・・」
「これ、何だか分かる??」ネイミは右手ではさんだ、一枚のカードをヒラヒラさせた。
「そ、それは?!」
蜘蛛はいきなり怯えた様子を見せ始めた。
「お、お前召喚士か・・・!!」
「正解」ネイミはそういうと右手ではさんでいたカードを左手の指で弾いた。
カードはヒラヒラと舞ながら地面に落ちた。
カードは地面に落ちると、眩しい光を放ちはじめ、しばらく時間がたつと、形のある物に具現化した。
「こ、コイツは・・・」
「そう、この子は蝿王ベルゼブブ・・・あんたの苦手な物でしょ?」
光から現れたのは蝿王ベルゼブブ・・・巨大な四枚の羽刀を背中に持ち、金色に光る目、長く伸びた触覚を持つ巨大な蝿。その大きさは人間の五倍はある。
ベルゼブブは長い触覚を敏感に動かしていた。
「ウマソウナ・・・ウマソウナ匂イガスルゾ・・。」
「ヒィ・・・」
蜘蛛は完全に怯えきって、戦意を失っていた。
「今なら許してあげるわ。リックを解放して。」とネイミが言った。
「わ、わ、ゎかりましたぁ、分かりましたから、命だけは助けて・・・」
戦意を完全に失った蜘蛛はリックに絡み付かせていた糸をしまい、森の中に消えた。
「ネイミ、アイツクッテ来テイイカ?」
獲物をまのあたりにして、興奮気味の蝿王が触覚をせわしなく動かして、ネイミに聞いた。
「駄目よ、ベルゼブブ。戦意を失った相手には追い討ちはしないって約束でしょ?」
この言葉を聞いた蝿王は
「チィ」と言うと、眩い光を放ちカードの中に戻った。ネイミは地面に落ちた蝿王のカードを拾い上げると直ぐにリックの元に駆け寄った。
「リック!リック!しっかりして!」
「ん・・・ネイミ?」
リックはうっすらと目を開けた。
「リック、よかった!」ネイミは意識を取り戻した、リックに抱きついた。
「リック、ごめんなさい・・・さっきのこと私が謝るわ・・・」
「・・・・??」
「だから、もう私を置いて一人でいかないで!」
リックは自分の肩で泣きじゃくる少女を不思議そうな目で見つめていた。
「・・・夢をみていたんだ」
「えっ?」
「でっかい、蜘蛛が願いを叶えてやる、ってしつこくいって来る夢を・・・」
「夢じゃないぜ」と二人を黙って見つめていたベルが言った。「あんたは・・・」
「リック、お前はポイズン・バールの幻術にかかっていたんだ。」
「幻術??」
「ああ、ポイズン・バールはただの魔物じゃない。創られた魔物なんだ」
「創られた魔物・・・だと?一体誰に?」
「この戦乱の世の中だ。俺もそこまでは知らないが何処かの研究所で、生きた、人間の脳と毒蜘蛛を合成させて創られたらしい。」
「気持ち悪い・・・」
ネイミが呟いた。「まぁ、お前の願いが叶うっていうのは嘘で、幻術で願いが叶った様に魅せて相手が油断したところで、一気に襲いかかる、それが奴のやり方だ。」
「そうか・・・そうだったのか・・・だとしたら・・・悪かった!!」
リックはいきなりベルに頭を下げた。
いきなりの事態にベルは完全に拍子抜けしてしまった。
「俺は・・・夢の中で、本気であんたに嫉妬してた・・・だから、あんたを殺してくれと言うつもりだったんだ」
「そんな・・・」とネイミは絶句していたが、ベルは冷静だった。
「でも・・・いわなかった。そうだろ?」
「ああ・・・」
リックは何かに躊躇っていた。
「どうした?」
「俺達が初めて、あったときの事覚えてるか?あんた、泣いてたよな?自分の命も省みないで俺に立ち向かって殺された部下の為に・・・」
「あ、ああ?」
「あの時、俺はコイツが敵じゃなかったら、きっといい友達になれるって、戦いでテンションがあがってたけど、心の底からそうおもったんだ・・・だから・・・」
「??リック?」何かに躊躇っている幼なじみをネイミは不思議そうに見つめた。
「俺と、ネイミを一緒にあんたの下にいさせてくれないか?」
それから、長い時間がたったような気がした。俺達三人は一緒に旅をすることになった、リックとネイミは長年暮らしてきた、村と村人たちに別れをつげた。・・・
「ねぇベル?」
「どうしたネイミ?」
「折角、仲間になったんだから、私達3人のグループに名前をつけようよ!」
「ねぇねぇ何がいいと思うリック?」
「お、俺か・・・?そうだな三人の名前の頭文字をとって、
「ベネリ傭兵団」というのは・・・」
「いいね!決まり!」
「ねぇベルも異論ないでしょ?」
「ああ、決まりだな」
「やったー!これから私達は
「ベネリ傭兵団」だー!」
ネイミが子供の様にはしゃいだ。
「子供だな・・・まるで」と俺は呟いた。
「ああ、アイツはまだまだ子供だよ・・・」
とリックが頷いた。二人は可笑くなって笑ってしまった。その笑い声は青い空に響き渡った。
そう、
「ベネリ傭兵団」の門出を祝う雲一つない青空に・・・
こんにちは!以外です。この前ある方から応援メッセージを頂きました。とても、勇気付けられて頑張ろう!という気持ちになれました(涙)。ありがとうございました!架空大戦の第1部はこれで完結です。ここまで、この作品を飽きずに読んで下さった皆様には只只感謝です!ありがとうございました! これからも架空大戦は第2部、第3部と続いていきます。これからも、更新させて頂きますので、読んでいただけたら幸いです。これからも宜しくお願いします!!