第5話 過去
「まぁ、まて若造」
な、なんだこいつ!?喋りやがった・・・
よく見ると奴の背中には顔のような何とも形容しがたいものが出来ていて、それが口をパクパクさせることによって声が発生していた。
「お、お前喋れるのか?」
俺には不思議なことに恐怖はなく、好奇心が湧いてきた。
「ああ、喋れるさ。そしてお前の願いを叶えることもできる」
と蜘蛛が答えた。
「俺の願いを叶えるだと?そんな事出来るわけ・・・」
「出来るさリック・・・さぁお前の願いを言ってごらん・・・」
不思議なことに俺は何でこんな蜘蛛に願いが叶えられるのか?という疑いの気持ちはなかった。
「出来るのか?」
「あぁ、出来るさ」
・・・俺の願いはいつも、ネイミとイチャイチャしていたあいつを・・・目障りなあいつを・・・
俺達は古森の近くまで来ていた。二人とも、全力疾走していたので近くまできた時には息が切れて、暫く動けなかった。「はぁはぁ・・・なぁネイミ?」
「はぁはぁ・・・何?」「ネイミはリックの事を怖くないのか?」
「・・・うん、怖くないいよ。だって、リックは」
「リックは・・・?」
「リックは私の友達だもん。」
「そうか・・・俺ははっきり言ってリックが恐い。あの戦いを楽しんでいる目、残酷な敵の殺し方もだ。」
この言葉を聞いて、ネイミはうつ向いた。
「ねぇ、ベル・・・何でリックが戦いを楽しむ様になったと思う?」
「どういうことだ?」
「実はね、リックには負けられない理由があるの。」
「負けられない理由?」
ネイミはフーッと深呼吸して話し始めた。
「私達三人、リックと私とアーサーは十年間、一緒に育ってきた。アーサーはもういないけど・・・私達三人はとても仲が良かった。今では信じられないと思うけど、リックは凄く怖がりでいっつもアーサーの後を金魚のふんみたいに追っかけ回していた。アーサー!アーサー!ってね可笑しいでしょ?」
懐かしげにネイミが笑った。
「おまけに私よりも6歳も上のに女の子が苦手でいっつも私の言いなりになっていたの・・・でもアーサーが私を叱ってくれたお陰でリックは私の尻に敷かれずにすんだの。」
「そのリックっていう人はどういう人だったんだ?それにもういないって?」
「アーサーはリックと同い年でとっても優しくて、私のこともよく分かってくれていて、私はそんな優しいアーサーとちょっと頼りないリックが大好きだった。勿論、このままずっと一緒にいられると思った。でも・・・」
「でも?・・・」
「2年前・・・だったかな?私たちの村に魔物がせめてきたの。それで私の親もリックの親もアーサーの親も他の人もその魔物に殺されて・・・アーサーも私とリックをかばって殺されたの・・・」「・・・・・・」
「とにかく、そんなことがあった次の日からどんどんリックが冷酷になっていくのが分かった。前までは虫も怖がっていたリックが平気で人を殺すようになったの。特に村を侵略しようとしてくる軍人達には容赦しなかった。
そんな・・・・リックを・・・・見てられなくて・・・」
「泣いてる場合じゃないぞネイミ。」
「うん・・・わかってる・・・・よし!行こう!リックを助けに!」