第4話 ポイズン・バール
リックがその場を去ったあと、ネイミはリックに言われたことがよっぽどこたえたらしく暫く口を聞いてくれなかった。
暫くしてから俺は二人の関係について聞いた。
「私とリックの関係?私とリックは年の離れた幼なじみなんだよ。」「リックは9歳の時、この村にきて、私はその時3歳だから6歳差かな。あれからもう13年たったのかぁ」
ネイミが感慨深そうに言った。
「で、当時この村には護衛隊がなかったから私達は村を守る傭兵団になって、私とリックの二人で長い間この村を守ってきたんだけど・・・その役目も今日までかな・・・村の人たちは無事だけど、建物とかはぐちゃぐちゃだし」
ネイミは悲しそうに笑った。参ったなぁこういう時ってなんて声をかけていいか分からないからなぁ。
おれが彼女になんて声をかけていいか分からず悩んでる時、一人の村人が声をかけてきた。恐らくリックが解放した村人達だろう。
「ネイミ、大変だ!リックがリックがぁ!」
「リックがどうしたの!?落ち着いて話して!」
村人なは息を整えるとこうきりだした。
「リックがひとりで戦ってるんだよ!でっけぇ蜘蛛としかもかなりの劣勢なんだ!なぁ、あんた!軍人さんだろ!アイツのところに行って一緒に戦ってやってくれよ!頼むよ!」村人は俺にすがりついてきた。
「分かった!分かったから場所を教えてくれ。」
「ああ、ありがとう!場所か?場所は古森だ。村人たちはリックが逃してくれたおかげで全員無事だ。」「ポイズン・バールか・・・少し厄介だな・・・」
村人の言っていたでっかい蜘蛛というのは、ポイズン・バールという。その名の通り、普通の蜘蛛の20倍の大きさがあり、でかい奴では2mもある魔物の蜘蛛のことである。尻部には、毒性の強い針が数千本ついており、その針を飛ばして攻撃してくるといわれている。
「ベル、私も行くわ!」
「ああ、宜しく頼む!」
こうして、俺たちはリックの助太刀のためリックのいる古森へと向かった。
ー 古森 ー
畜生、どうなってやがるんだ!?
身体が思う通りに動かねぇ!!
落ち着け、落ち着け俺!今起きてることを冷静に判断するんだ!
あの化物蜘蛛の毒針を浴びたのは3箇所・・・右手と左太股と左肩だ。・・・
頭を動かそうとすると左手が動く・・・足を動かそうとすると右手が動く・・・・・・・・・・・・・・・・・よし、大分理解できたぞ。これならもういつもと同じ様に動ける。奴の毒針には人の命を奪う致死毒がない代わりに、神経や平衡感覚を麻痺させる物質が含まれれているんだな。
俺は目の前でガサガサいっている気持悪い化物蜘蛛に刀を向けた。
「いくぜ。」
俺は肩を左右に振る感覚で走り出す。肘を曲げる感覚で奴の足をめがけて刀をふり払ったが、両断されたのは俺の刀だった。
何?!俺の刀がまっぷたつだと!?なんなんだあの足の硬さは?鋼鉄じゃねぇか・・・なら、直接頭を狙うしかないか・・・
俺は腰に刺して置いた残りのもう一本の刀を構えた・・・次はない!これで決める!俺は奴の頭部をめがけて思い切り刀を振り下ろした。が、その瞬間、化物蜘蛛が喋り出した。
「まぁ待たんか・・・若造」 俺は刀を止めた。
俺とネイミが古森を目指して走っている途中ネイミが聞いてきた。
「ねぇ、ベル。さっき、
「厄介だな・・・」って言ったじゃない?」
「ああ、あの事か・・・ネイミ落ち着いて聞けよ・・・このままもし、俺達が間に合わなかったら・・・リックは死ぬかもしれない。」
(続)