年末雑談
姉「――――うやぁあぁぁっっ!!?」
弟「煩いですね。縫いますよ」
姉「……せめて『どうしました』位は聞いて欲しかったです」
弟「贅沢を言わないで下さい」
姉「……贅沢なんですか」
弟「えぇ。甘えないで下さい。で、糸は何色がいいですか」
姉「そんな細やかな気遣いは要らないです。あのですね、もう12月なんですよ」
弟「そうですか。じゃあ余っている青の糸で縫いますね」
姉「いえ、あの、縫い糸ではなく。後半の台詞を拾ってください」
弟「……12月がどうかしたんですか」
姉「何で針と糸を用意しながら聞くんですか?えっとですね。もうすぐ一年が終わるんですよ。でも、私には彼氏が居ません。変じゃないですか?」
弟「周りの人達が正常でまともという事ですね。良かったじゃありませんか」
姉「あ、という事は同じように彼女が居ない弟君も」
弟「さて縫い方は何にしましょうか」
姉「いえいえ解ってます。弟君の事ですから、きっと学生の内は学業に励むべきで、女性と付き合うのは成人して自立してからでいいと考えているのですよね?そうですよね?」
弟「えぇ。そうです。そもそも姉さんと僕では立場が違うでしょう」
姉「大学なんて、遊ぶための場所ですよ。もう年齢的にも皆さんセーフな年ですし」
弟「いいんですか。学年トップが其れで」
姉「学年トップだから、言えるのです」
弟「成る程。一理有りますね。小賢しい」
姉「上げてから落とさないで下さい」
弟「上げただけ感謝して戴きたいですね」
姉「……もし、将来彼女さんが出来たとして、そういう態度を取るのですか?弟君は」
弟「まさか。ちゃんと丁重に扱いますよ」
姉「……そう上手く行くでしょうか。長年付き合っている恋人は、家族の様な関係になるそうですよ。そうしたら、困るのではありませんか?」
弟「いえ、家族という枠組みは関係無く姉さん自身を鬱陶しいと思っているので、大丈夫です」
姉「えっ」
弟「大丈夫です。姉さん以外の人には優しい方だと思いますよ。僕は」
姉「う、うぅえ……ぅえぅえぅ……そんな、そんなはっきり言わなくても……」
弟「はっきり言わないと伝わらないでしょう。姉さんには」
姉「此れを苦に自殺したらどうするのですか。遺書書きまくりますからね。もう10パターンくらい、考えますからね。世間様から非難の目を向けられればいいのです」
弟「……其所まで余裕があれば大丈夫でしょう。まぁ、少し安心しましたけれど」
姉「何にですか?」
弟「ちゃんと彼氏を作ろうという気は有ったのですね。毎日僕に気持ちの悪いことばかり言ってはいても、悪趣味な冗談の一種だったのですね。其れにしても悪趣味ですが」
姉「いえ?私が彼氏にしたいのは弟君しかいませんよ?」
弟「は?」
姉「まぁ冷たい態度も私限定だと思えば、特別だと思えなくも無いです。あ、此れはあれですね。もしかしなくてもオンリーワンですね?」
弟「…………取り敢えず、縫い方はかがり縫いにしましょうか」
姉「えっ。えーと。幾ら冗談でも怖いですよ其れは」
弟「何なら文字通りチャックを付けるというのはどうでしょう?あぁいいですねそうしましょう。今すぐ」
姉「わ、真顔は止めてください真顔は。謝ります。謝りますからぁあああああ!!!!」