第九十四話 ペットに餌付けは常識である。
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今日は三話追加します。
令二ら一行は歩きで山を越えようとしていた。
「そろそろ休憩にするか……」
令二がテートとチユの疲れたのを見計らって、そう口にする。
「……そうだな、これだけ進めば明日には目的地に着きそうだ。今日はこの場で野宿することにしよう。」
令二たちは山で野宿することにした……なぜ、車を使わないのかというと、リーデルになるべく好印象、というよりも興味を抱かせてはならないからだ。《錬成》の能力、アイテムボックス……その他もろもろを見せれば彼女は再び令二に追及してくるに違いない……それにここは山である……魔物もでるいじょう、車で移動するわけにもいかないのだ。
令二はたき火をつけると、おもむろに立ち上がり、こっそりとアイテムボックスから食材を取り出し、料理を始めた。
トントントン
コポコポ……
ドザーーー
「ほう、レイジ殿は料理が得意なのか……」
リーデルは感心した目つきで令二の料理の手際を見る。
「昨日は三人に看病してもらったからな……リーデルには初めて料理を作るっけ……今日の料理は一度も作ったことがないから、うまくできるかはわかんないけど……」
「ふっ……」
令二がそういうと、リーデルが何やら笑った。
「なんかおかしいか?」
「……いや、昨日の戦いや貴殿の態度……随分と変わったと思ってな……」
「そうか?」
「ご主人様の料理はおいしいのですー」
「そうです! とにかくおいしいのです! 前に食べた時はおいしすぎて泣いてしまいました!」
令二がリーデルと話していると、テートとチユが大げさに彼の料理をほめたたえる……令二はそこまで料理に執着しているわけではないので、褒められると複雑な気分になる。地球の料理はこの世界のどこへ行っても美味しいらしい。
令二はそのまま淡々(たんたん)と料理を作るのであった……
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「……こ、これは……」
「……満開全席って言うんだ……今日は少し凝ってみた……」
「……ま、まるで上級貴族の料理だな……これは驚いた。」
令二は料理をしている最中、中華料理に挑戦してみた……レシピは一通り頭に入っているので、何とか作れたのだがかなり苦労した……特に餃子の皮が曲者であった。エビチリにギョーザ、シュウマイに肉まん……フカヒレも作ってみた。
令二が食べ始めると三人がそれを見て一斉に食べ始める。
「もきゅもきゅ……」
「ハムハム……おいしいー」
「グスッ、グスッ……ダメです……涙が止まりません……」
三人は息をつく暇もなく令二の作った料理を食べている……テートが泣いているのはおいしいということなのだろう。リーデルは本当においしそうに食べている……以前に食べ放題の店で見たあの顔は見間違っていなかったらしい。かなりのグルメだと令二はすぐに理解したのであった。
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「さ、先ほどは恥ずかしい姿を……面目ない。」
テートとチユが眠ってから、リーデルは顔を赤くして令二に頭を下げる。恥ずかしいとは食事をしているときのあの猛獣のような目つきと、おいしそうに頬張る口のことだろうか……
「美味しく食べてくれるならありがたい……今度からはもっとおいしいの作るからな。」
「も、もっとおいしい……ゴクリ……」
リーデルはそれを聞くと、顔を上げて期待の目でこちらを見つめてくる……
(……これ、完全に餌付けだな……まあ、扱いやすいしいいか……)
令二はリーデルのその反応を見てそんな失礼なことを考えるのであった……令二たちの目的地、ルナたちの元まであと少しだ……