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第九十二話 けが人をいたわりましょう。

 ……俺の目の前で誰かが泣いている……


 ……泣くなよ……


 「……泣かないで……」


 「あなたに魔法をかけましょう……」


 その声……どこか懐かしい……そういえば、***は俺に魔法をかけてくれたっけ……


 あれ? あいつの名前は……***……ダメだ……思い出せそうにない……


 誰だ……泣いているのは……


 ――――――――――――


「…………ここは……」


「ご主人様~~~!」


「レイジ様~~~!」


 テートとチユが抱き着いてくる……ここはどうやら宿のようだ。


「お、重い……二人とも……」


「許してやれ、貴殿が眠っている間、ずっと心配そうに看病していたのだ。」


 令二がそう言うと、リーデルがその後ろに立って、リンゴをむいている。


「……リーデルさん……あんたが連れてきてくれたのか?」


「……そうだ。ずいぶん無茶をしたな……二人には謝っておくといい。」


「……ああ、そうするよ……ほら、二人とも……」


「「…………は(-)い」」


 返事をすると二人は涙目をぬぐいながらベッドから降りる。


「レイジ殿、貴殿に少し話がある……」


「……わかった……」


 令二はそう言うと、リーデルとともに部屋を出て行った……


 ――――――――――――


「……単刀直入たんとうちょくにゅうに聞こう。君はいったい何者だ?」


「………………」


「遠目でしか確認できなかったが貴殿のそれは常軌を逸している……常人のBランクの冒険者では、まずあのレベルの魔人を十体倒すのでさえ容易なことではない。それを貴殿はおそらく百は相手にしていたはずだ。そして、コノセ族の里でも最上級の魔物、《クラーケン》を……貴殿は何か隠していないか?」


「……助けてくれた礼に教えろと?」


「……そうは言っていない。ただ、個人的に気になっただけだ。差し支えなければ、教えていただきたいが…………いや、やはりいい……街を救ってくれた恩人に詮索はよくないな……」


 令二は自分の命の恩人に街の恩人と言われて、複雑な気分であった。


「……秘密だ……だが、俺の仲間の捜索が終わったら、少し話そう……」


「……わかった……あれだけの働きをしてくれたんだ。相応の見返りをしなければな……私はそろそろ自分の宿に戻るとする。」


 リーデルはそう言うと、振り返り外に出て行こうとした……


「ああ、それと……」


「なんだ、レイジ殿?」


「……助けてくれて……ありがとうな……」


 去り際に令二の言った一言はリーデルの胸に刻み込まれたのであった……


 ――――――――――――


 令二が部屋に戻ると、テートとチユはベッドにもたれかかったまま寝ている……


「……お前らもありがとう……ゆっくり休んでくれ……」


 令二は毛布を二人の肩にかけ、ソファで寝た……すると、令二は夢を見た……


 ――――――――――――


 令二の目の前にはネピュルがいた……


「……ネピュルか……」


「え! 今、名前で呼んでくれた!?」


 彼女は初めて令二に名前で呼ばれたのがよほどうれしいのか喜びと、驚きを隠せない。


「……ガキのほうがよかったか……」


「いや、いいわよ! 名前で呼んで! ……なんでいきなり名前で……ずるいわよ……まったく……」


 彼女はそう言いながらなにやらブツブツ言っている。


「なんか言ったか?」


「な、何でもないわよ! ……えっと……何かあったの?」


「……いや、何にもない。」


「……そ、そうなの……」


 ネピュルの様子がおかしい……令二の眼にはそう映っていたが、明らかに態度が変わったのは令二であることに彼は気づいていない。


「……えっと……契約おめでとう……」


 ネピュルはしばらくすると、口を開く。


「……? 契約……何のことだ?」


 しかし、令二は彼女の言ったことに疑問を抱く。


「なにって、『回復魔術ヒーラー』との契約よ。」


「……身に覚えがないんだが……」


「……そうなの? じゃあ、寝ている間に契約されたんじゃない?」


「……俺が気絶していたときか……」


 令二は宿で起きた時のことを思い出す。


「身に覚えがあるようね。 ……態度が変わったのはそのせいかしら? でもこれはこれで……」


「何か言ったか?」


「な、何でもないわよ!」


「……相変わらず変な奴……まあ、いいや……要件はそれだけか? 疲れてるから早く寝たいんだけど……」


「……わ、わかったわ……おやすみなさい……」


「……すう…………」


「……寝ちゃったわね……」


 ネピュルが寂しそうに夢の中から出て行き、令二はそのまま眠りについたのだった。

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