第九十一話 ぼっちで倒そう!
令二は街の西……森の中に到着した。
「ざっと、五百はいそうだな……」
令二は森で控えている魔人と魔獣の数をおおざっぱであるが、数える。さきほどの草原にいた魔人たちより大きい魔人がほとんどだ。おそらく、こちらが主戦力と言ったところだ。
(……初軍からこれだけ多く送り込んでくるってことは、魔人大陸にはまだ強い奴がいそうだな……俺の異世界旅行を邪魔する奴は誰であろうとぶちのめす……)
令二は怒りの矛先を完全に魔人たちに向け、魔法を発動する……
「……藍色……」
――――――――――――
令二の視界に入った魔人……それはごく少数であった。魔力を感知したのかほとんどの魔人、魔物が回避したのである……
「ギピャアアーーー!!」
「テ、テキシュウ……」
魔人たちが一斉に襲い掛かる……これだけの大人数となると令二の重力魔法だと分が悪い……接近戦に持ち込められれば、自分にも重圧をかけてしまうためである。
「……赤……」
令二はすぐに剣を抜いて《錬成》と《メガ・プロテクション》で強化する……正面から攻撃してきた魔人らは一撃で真っ二つとなった。
「……ギイイイイ」
「……コイツ、ツヨイ……」
「……マオウサマノテキ……センメツスル……」
魔人たちは人間の言葉を話せるらしい。少し興味深かったが、令二は冷徹に魔人らを切り倒していく。
「グオオオオオ!」
お次は巨人のような魔人である……口から緑色のブレスを吐き出した。明らかに毒系統の魔法である……令二は《メガ・プロテクション》を自身にかけ、そのブレスの中に入り込み、そのまま魔人ののど元に剣を刺す。
「ギャアアア………………」
その後も、次々と魔人が押し寄せてきた……しかし、令二の魔法はあまりに強力で、その動きに一部の隙もなかった……しかし、令二も一人の人間……魔力にも限界がある。それから三時間が立ち、その魔力は尽き果てそうになっていた。
「……ハア……ハア……あと、五十くらいか……残ったのは強そうな奴らだけだな……すっかり、日も暮れて……テートとチユに後で怒られそうだな……」
魔人らは令二を囲んでいる……が、誰も彼に攻撃してこない……それだけ令二のことをこれまでの戦いで警戒しているのだろう。後衛の魔人らが呪文を唱え始めた……」
「……ソハヒ、バンブツヲ……」
令二はそれに反撃しようと試みる……
「……赤……」
火魔法が令二を襲う……むろんダメージはない……が、このままでは魔力がいずれそこを尽きてしまう。
「……エクスプロージョン!!」
令二は無詠唱で火魔法の上級魔法、《エクスプロージョン》を発動する。
ドガアアアアン!!
――――――――――――
「……倒した……」
令二はその場で倒れ伏した……魔力がちょうど切れたようだ……精神も……
しかし……
「グウウウ……」
まだ生きている魔人が数匹いる……一撃では仕留められなかったらしい……
令二の《応急処置》は始まっているが、MPが回復するのは遅い……非常に危険な状況だ……
「……おいおい、そろそろ限界だぞ……」
ズン……ズン……
魔人はゆっくり近づいてくる……すると……
ズシャアア!!
魔人を何者かが斬りつけた……
リーデルだ……
「遅くなってすまない! 大丈夫か!」
彼女は令二のもとに駆け寄る……
しかし、すぐに彼の意識は途絶え、その場で眠りについた……