第八十八話 テンプレ魔王来た~~~!
何者かの声が聞こえる……人間大陸のはるか北に位置する魔人大陸、《デステア》……
そしてその大陸をすべる国の名は魔国、《レイズ》の魔王城で新たな魔王が会議をしようとしていた。
暗い部屋にはいくつもの水晶が置かれている……長卓にはそれぞれ魔国の幹部たちが座っている。新たな魔王がその場に現れるまで……
「そろったな……」
魔人の一人……黒い鎧をまとった者がそう口に告げる……どうやら新しい魔王が来たようだ。
やがて、それしき影が姿を現す。
「……あ、あの……ここでいいんでしょうか?」
少年だ……しかし、その姿はごく普通の少年で、魔王の服を着ていても、覇気がまったくない。
「……お待ちしておりました、魔王様……私、名をデュークと申します。早速ですがそちらの席に座り、何か一言を……」
「……は、はい……」
少年はオドオドしながらもゆっくりと席に座る。そして、魔国会議が始まった……
――――――――――――
「あ、あの……ボクが新しい魔王の……ルトと申します……はい。」
「……ふん、こんな奴で本当に魔王が務まるのか?」
灰色の髪の男性がルトを見てそんなことを吐き捨てる。
「……ゼノ……貴様、ルト様を愚弄する気か!」
デュークがゼノに向かって大剣の切っ先を向け、睨み付ける。
「……やめておけ……」
すると、黒い鎧を着た者が低い声で注意をする。すると、デュークは仕方なさそうに剣を収める。
「そろそろ本題に入ろう……ルト、人間大陸に攻める……本当にそれでよいのだな?」
「……う、うん。これ以上魔人たちがいなくなっていくのを見たくないしね……」
ルトは真剣な顔で言っている……新しい魔王による人間大陸への攻撃がされようとしている。そしてそんなことを知ったのはつい二か月ほど前……
――――――――――――
そして、長い時間が経過し、今……令二はリーデルからその情報を聞きつけ、その話に興味を持った。
「……魔国による攻撃が行われようとしているのはよくわかった……けど、なんでそんな情報がわかるんだ?」
「……とある占い師による魔法で、未来予知ができる者が王国にいる。貴殿もうわさに聞いたことはあるだろう?」
「全然ない。」
「……ま、まあいいだろう。その者はな、今までにも幾多の占いをしてきているが、それが外れたことがないのだ。名をナーシャと呼ぶ……とにかく、その者そおかげでこのたびの魔王の襲撃が予想できたわけだ……」
「……結果はわからないのか? 戦争になるかもしれないんだし……」
「……それは占い師にもわからないことらしい……何でも大きな運命を見定めることはできないと……」
(……まあ、ご都合主義だな……)
令二はそんなことを考えながらも、
それが何を意味するのか……うすうす気づいていた。
「……戦争か…………報酬によるな……」
「金なら好きなだけ出す……」
「いや、金はいい……それよりも、俺の仲間の捜索に付き合ってほしい。それが条件だ……」
「……仲間の捜索か……貴殿の仲間もギルドに所属しているのか?」
「……ああ……」
「……了解した……それならば私の手に負える条件だ……早速、今回のクエストのレイドパーティ登録をしよう。」
「……わかった。」
しかし、令二たちの重い話を耳にも入れず、テートたちは夢中で料理をほおばっていた……