第二章特別編 船旅での船酔いには注意しよう……
カモメ? が海の上を飛んでいる……
バサッバサッ
令二が船に乗ってから四日目の朝……令二は食堂でご飯を作り始めていた。
「ここに俺の作ったこの調味料、ミリン、醤油を入れるんだ。」
「これですか? し、しょっぱいです!」
テートが令二に料理を習いたいと懇願してきたので令二はそれに付き合っているところだった。令二の料理は脱出の祝いに作った後、船員の全員が気に入ったようで、テートは料理長として令二に弟子入りしたのは昨日のこと……もちろん令二は断ったが、弟子にならない代わりに料理を教えてくれるようにとテートは言いそってきた。
「どうせ教えるんだし、弟子とか変わらないんじゃ……」
「白猫様? どうかなさいましたか?」
テートは猫耳をピコピコ動かして首をかしげる。
「……いや、何でもない……さ、これで完成だ。食べてみて。」
「……ゴクリ……パク。」
…………
…………
どうしたのだろうか? テートが料理を口にしたまま動かない。なにやら変なものを混ぜたのかと不安になる令二だったが、テートはしばらくすると大声を出して泣いた。
「お、おいしいいいです~~!」
「な、なんで泣いてるんだ!」
令二は慌ててテートを泣き止ませようとする。
「……ぐす、いえ……おいしすぎて……」
「ま、まあ気に入ってくれたんならいいんだが……大丈夫か?」
「は、はい……し、しかし白猫様はどのようにしてこのような料理を? 私も色々な町で食べ歩きをしていますが、こんな料理、見たことも食べたこともありません!」
テートはいつもよりグイグイ令二に顔を近づけて大声で尋ねる。
「……まあ、俺が考えた料理だし……」
「な、なんと! これを自力で……さすが白猫様です!」
「お、落ち着けって、近い近い!」
その後も令二はテートに褒め続けられた。うれしかった半面、照れ臭かったのだが、それは彼女に言うまい。令二は朝から料理をして疲れたため、船の外に出た。
――――――――――――
「おっ、サリーか。おはよう。」
令二が船の外に出るとサリーが海を眺めているところだった。
「なんだ、あんたかい? 私のことは船長と……まあいい、疲れた。お前は何回言ってもそれを直す気がしない。」
「よくわかってるじゃないか……」
令二はサリーが手すりによっかかっているところ、その隣によっかかる。
「あんたにしては早く起きるなんて珍しいじゃないか。」
「まあな。テートに料理を教えててな、朝早く起きるのもいいもんだな。海がすごくきれいだ。」
「……あいつはお前になついてるみたいだな。」
「…………なあ、あいつは……テートはお前の妹ってのは本当なのか?」
令二がそれを口に出すとサリーは少しおとなしくなる。いつもにもなくシリアスな雰囲気で口を開く。
「……船の奴らから聞いたのか……」
「まあな……訳ありか?」
「……野郎どもと違って気が利く奴だな……」
「まあ、言いたくないんなら言わなくてもいいぞ。」
「……いや、話そう。」
サリーはそう言うとおもむろに語りだした。
――――――――――――
「あいつは……一人っ子でな……壊された船で偶然、見つけてな……攫われたのか……親がその船にいたのか……急にやるせない気持ちになってな……私はいつの間にか、あいつを拾っていた。」
「………………」
「……最初は海賊が人様に預けることもできないし、捨てようかとも考えたが野郎どもが赤ん坊だったあいつを見て、育てるように私に言ってきたんだよ……それから……まあ、成り行きでな……あいつは、私のことを本当の姉だと今でも思っているはずだよ……」
「…………そうか。」
「……笑っちまうだろう? 私らは海賊なのに……」
サリーの声はどこか寂しげだ……彼女は自分の選択が正しいのかいまだに悩んでいるのだろうか……後悔しているのだろうか……令二にはそれはわからなかった。
「……笑わないよ……それにサリーは海賊やってるより母親やっていたほうが似合ってそうだし。」
「ばっ、茶化すんじゃないよ!」
サリーは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「……そっか~、この頃はチユの遊び相手もやってもらってるしな~。」
「あ、あんたって奴は!」
その後、朝のトレーニングに丁度いい剣によるケンカが始まっていた……しばらくするとギャラリーがわいて盛り上がったが、最終的に二人はテートに叱られたのであった。