第八十三話 満潮だっけ干潮だっけ?
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今日は一話追加します。
……あれから五日……令二は約束通り海賊船に乗り込むことにしたのだった。
「そういえば、どうやって船で湖まで来たんだ? 普通、海からはこれ無いだろ?」
令二はサリーニずっと気になっていたことを尋ねた。
「何言ってるんだい? 抜け道を使ったにきまってるだろう? そうじゃなくても海賊船は目立つんだよ。街の奴らに見られたらすぐに軍が押し寄せて来ちまうよ。」
「……抜け道?」
令二はふと疑問に思った……それらしい場所を行きのボートで見ていないからだ。
「……出航だ~! 野郎ども~~~~!」
「「お~~~~~!」」
船は進む……進んでいくと、朝のせいか再び霧が立ち込める……
「これが抜け道なのか?」
令二はふと何かを発見した。
それはこの湖を渡るにつれ、街と湖との間にそびえたつ岩壁である……そこに小さくだが、洞窟のような入口がある。
「ここは朝に干潮になって湖の水位が低くなるとようやく現れるトンネルさ。」
「……すごいな、こんな場所どうやって見つけたんだ?」
(……ん? 干潮は月の引力で起こるんじゃなかったっけ……朝は月が出ていないけど……異世界だとやっぱりなんか違うのか?)
令二は冷静にそんなことを思っているのだったが、サリーは質問に答える。
「ちょっと知り合いに情報屋がいてね……まあ、そんなことはどうでもいいだろう? はやく行先を言ってくれ……そうじゃないとどっちに進めばいいかもわかりゃしない。」
「ああ……それは……」
……これが今に至るまでのすべての話である……
……あと三日……あと三日で令二は獣人大陸を抜け、ついに人間大陸への期間を果たすのだ……
――――――――――――
その日の宴の夜……
「……あ、あの……白猫様……」
テートが口を開く。いつもよりも遠慮がちの小さい声だ……
「どうした、テート?」
「……あの、お名前を教えてくださいませんか? 白猫様の……本当の名前……」
テートは何やら聞いてはいけないようなことを聞いてる様子であった。
しかし、令二は……
(……まあ、いいか……)
いつの間にか令二は船員たちに心を開くようになっていた……獣人大陸で彼は初めて自分の名を告げる。
「令二だ……レイジ・アマノ……」
「……レ……イジ……レイジ様ですね!」
「……他の奴らにはあんまり言うなよ、白猫って呼ばれてるのが慣れてるし……名前で呼ばれると恥ずかしいんだ。」
「……は、はい!」
令二がテートにそう言うと、彼女は何やら喜んでいるのか目を見開いてその目を輝せていた。尻尾もフリフリと振っている……よほど名前を教えてもらったのがうれしいのかと令二は疑問に思っていた。
「……まあ、いいや……じゃあお休み……」
「は、はい……おやすみなさいです……レイジ様……」
テートは何やら寂しそうにそう言ったのであった。
――――――――――――
「あと……三日……長いようでこの獣人大陸には一年もいなかったんだよな……」
「……ご主人様ー、おやすみなさーい」
「ああ……アーク、到着したらすぐにあいつらのところに行くぞ……」
「……かしこまりました、マスター。」
令二はふと眠りについたのだった……