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第八十二話 祝勝会だ~! タル持って来い!

 ……誰だろう……


 ぼんやりとその人の顔が見えてくる……


 ……ここはどこだろう……


 そこは暗いくらい空間……自分はそこに閉じ込められている……


 ……この人が……


 ……自分の……


 ……新しい……




 ……ご主人様……


 ――――――――――――


「……んー……ここは……」


 ここはご主人様のベッドだ……


 あの時……ご主人様はチユを助けてくれた……二度目だ……


 一度目は閉じ込められた箱のような空間から自分を助けて、さらに名前を付けてくれた……


 二度目は………………



「……ご主人様ーどこー?」



 チユはベッドから起き上がると、ドアを開けて令二を探す。


(……食堂かなー?)


 チユは歩いて食堂に向かった……


 ――――――――――――


 ガヤガヤ……


 食堂が何やら騒がしい……騒がしいのはいつもだが、それよりももっと騒がしい。


「うめ~~! なんだこりゃあ!」


「だんなは飯を作っても最高だ~!」


「おい、てめーら、我らが救世主になんで料理作らせてんだ! てめーらも手伝え!」


「おーい、あんたら、酒追加だ~!」


「は、はーい! かしこまりました~! 少々お待ちくださ~い!」


「おーい、こっちも酒くれ~!」


 ――――――――――――


 食堂はお酒の匂いと料理の匂い……ご主人様が料理しているようだ……

ご主人様の料理はチユも大好きなので、厨房ちゅうぼうにつられて行く。



「おっ、チユか……よかった……」


 ご主人様はチユの心配をしてくれたのか少し泣いている……私なんかのために……


「ご主人様ー、ごはん食べたーい」


 でも、今はチユはお腹がすいた。ご主人様の料理が食べたい……それだけだ……


 ――――――――――――


「おっしゃ~! 《レウスの塔》脱出を祝って……かんぱ~~~~い!」


「「かんぱ~~~~い!」」


 船の人たちは料理がそろったようで、再び乾杯かんぱいした……

これもすべてご主人様のおかげだ……チユの自慢のご主人様である……エッヘン!!


 ……と威張って見せたけど、みんなチユを見て笑うだけ……ご主人様も……ひどい……


 ご主人様はチユに魔力をくれた……暴走するほどの危険もあったのに……チユのために……


 ――――――――――――


 ………………


 ………………


 シュワアアアアアア!!


 光の柱が塔の最上階、部屋の中でそびえ立つよう輝いている……


 令二は『基本魔術ソーサリー』の、ほかの魔導書の魔力を増大させる能力を使用したのだ。

しかし、この能力は依然、魔力が根絶しそうで弱っていたメリルにした状況とは少し違う……


 その一、メリルとは異なり、チユは弱っているが、魔力自体が少ないわけではないということ……魔力の限界値を超えることは、それすなわち暴走の危険があり、周囲に被害をもたらすことがある……


 その二、チユの今の状況が人間であることである……『回復魔術ヒーラー』の能力、擬人化の効力とはいえ、人間としての性質を持っている彼女に魔力の増大がいかなる影響を及ぼすかが明確にわかっていないこと……この二つが危険な理由である……


 いずれにせよチユの危険もあるが、当時はその余裕はなかった……一刻もはやくの対処が必要だからだ……そして、自分への危険……令二はそれを顧みることなく、賭けをすることに決めたのだ……


「……はあ、はあ……」


 結果、令二は負傷した……左手の火傷程度の負傷……軽傷ですんだのが軌跡であった……


「……ったく……俺はあんまりこういうキャラじゃないんだが……」


 令二は倒れ伏したチユに向かってそうつぶやいたのだった。


 ――――――――――――


 そして、その翌日……


 チユは令二の隣で寝ている……普段は見ない満面まんめんの笑みだ……


「……ありがとー……ご主人様……」


 その声は令二の耳には届くはずもない寝言であった……

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