第八十一話 看病には卵をかけたオジヤだよね。
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《グール・ミノタウロス》が大剣を頭上に掲げると、その背後に大量の剣が現れた。
その巨人のごとき腕がチユに向かって振り下げられる……すると、空中に浮かぶ大量の剣はその切っ先をチユに向け、彼女ぬ向かって閃光のごとく射出される……
そして…………
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「チユ! おい、チユ!」
令二は立っている……チユを片手で抱えている……
「……おい、白猫! 後ろだよ! ……く……」
サリーが令二に注意を促す……しかし、彼女はその時、ついに気力がなくなったのか、すぐに倒れこんでしまう。
「グオオオオオオ!」
「……うるせえな……」
令二は《グール・ミノタウロス》に背を向けながらつぶやく。
「グオオオオオオ!」
《グール・ミノタウロス》が背を向けている令二に向かって、大剣を頭上に掲げる……先ほどの攻撃と同じ……空中に無数の剣が浮かび上がっているようだ……幻影魔法である。
令二はまだ振り向かない……負傷したチユをずっと抱えている……
「……紫……藍色……」
彼には見えていたのだろうか……《グール・ミノタウロス》が攻撃する瞬間……その巨体は突然と令二の正面に現れた……先ほどまで令二の背後にいた巨体は幻覚であったようだ。
「グオオオオ!」
令二は《グラン・スペルバインド》を発動し、見事呪いをかけることに成功した。
「……藍色の魔法を喰らったお前にはもう、その魔法はもう使えない……それに……収納完了だ……」
令二はそのひれ伏した巨体を見つめず、抱きかかえているチユを見つめる……
彼は先ほどの攻撃の瞬間、《グール・ミノタウロス》の魔法を収納したのである……
「グウウウウウ…………」
《グール・ミノタウロス》は倒れながらも令二を睨み付ける程、まだ気力がありそうだが、どうやらすでに動けなくなっているらしい。
「……もう魔力がない…………このまま決めさせてもらうぞ……」
塔の最上階で鈍い音が響き渡った……
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「……チユ……」
令二は傷つくチユを見つめる……
スキル《応急手当》での治療はすでに開始している……が、先ほどの魔法は幻覚……精神的な傷であるため、治療には限界がある。
サリーの治療を終え、令二はチユの治療に専念する……が、一向にチユの顔色は優れない。
「……どうすれば……」
令二は考える……チユは非戦闘員だ……先ほどの魔法の効力でおそらく精神的ダメージが大きい。一刻も何か彼女を救い出す方法を……何かきっとある……
「……魔法……! そうだ、アークを使えば……」
しばらく考えていると、令二は何か思いついたようで懐に閉まっていた魔導書、アークを取り出す。
「……成功してくれよ……」
令二は彼女の無事を祈り、彼女の額に手を添えたのであった……
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