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第八話 名付けて「海の魔物をやっつけよう大作戦」!

 2016/5/16 修正

 凶暴な魔獣を止めるため、戦闘準備を終えたコノセの里の全員はそれぞれの配置についていた。


 そして令二はというと……



「アーク、魔物が発見できしだい俺を起こしてくれ。」



「かしこまりました、マスター。」



 のんきに寝ていた。


 午前のケブラとの戦闘は、思いのほか経験値が貰えてレベルが上がった。


 しかしその分、HPの減りも多く、いまだ回復していない状態にあるのだ。



(この世界ではHPは全快していても疲れが残るのか?)



 どうやらMP=魔力ではあるが、HP=体力と言うわけでもないらしい。


 このせかいでのHPは、体力というよりも生命力に近いかもしれない。


 つまり、いくらレベルが上がってステータスに補正が付いても、スタミナや精神力が付くわけでもないらしい。



「でもあのぐらいなら、別段走っても今まで疲れなかったんだよな。」



 そしてそのことを考えながら、山を登った時の走りを思い出してみる。


 あの時は全然と言っていいほど疲れがなかった。


 その時と今の疲労……その違いの原因はやはり、MPの使い過ぎであろう。



「さっきはMPぎりぎりになるまで魔法を使いまくったからな……MPが減ると体力とか精神力も減るのかな?」



 令二はこの世界に来てからいろいろと気になっていることがあった。


 まずはアークのこと。


 なぜアークは自分のステータスが正確にわかるのか。


 そもそもステータスと言う概念はこの世界には存在しない。


 自分自身の肉体の詳細の情報が知られているというのは何かと気味が悪いものだが、それは一体何を基準に定められているのだろうか。


 その理由に見当がつかない。


 確かに自分が強くなるという実感は判るが、魔物も他の人も、ステータスの概念がない以上、比べる相手がいない。


 あまりにも意味のないものだ。


 次に魔法のこと。


 最初におぼえた魔法、《プロテクション》を取得するために書いた魔法陣には

令二がもとの世界で魔術の研究をしているときに見たものが多数含まれていた。


 魔法はもともと異世界に存在していたものなのだろうかと疑念を抱く。


 最後にこの世界に来てしまった理由。


 アークに聞いて検索してもらったが、勇者召喚と呼ばれる特別な召喚魔法により

異世界人が来た場合はよくあるそうだ。


 だが、勇者召喚ではないのは確かだ。


 アークに備え付けられた召喚魔法が自動的に発動した。


 そして偶然本を開いてしまった俺に対してその魔法が働き、この世界に来てしまったというのが現在一番有力な説らしい。



「だけど、元の世界にも魔導書があったぐらいだから、魔導書じゃない人間でもこちらの世界から元の世界に何らかの形で転送することが可能なはずだし……」



 行きの道があれば帰りの道もある。


 そんな楽観的な考えを頭の中でめぐらす。



「勇者召喚された人は帰還したことができないらしいが、希望は捨てないほうがいいか。」


 水中から強力な魔物が来るというのにもかかわらず、寝転がりながらそんなことを考えていた令二だった。





「マスター、魔物の接近を確認、接近を確認。」



「……ん~、わかった……」



 令二は眠そうに目をこすりつけながら、ゆっくり起きた。



「よし、作戦開始だな……」






 作戦開始から5時間ほど前……



「埋めるだと?」



「ああ、魔法……じゃなくて術が利かないんだったら岩や土砂で湖ごと埋めるんだ。」



「バカな!この里の湖は里の命なんだぞ!湖がなくなれば川からしか水がひけなくなる!時間がたてば上流からの水が減るんだぞ!」



「まあ、だから埋めるところは一部だ。埋めても問題ないところならあるだろ?」



「……確かに。里のほうに支障をきたさぬ場所なら問題はない。」



「もちろん、この作戦を実行するにはとりあえず埋める場所に誘導ゆうどうする必要がある。」



「ゆうどう……でござるか?」



「ああ。水中から毎晩接近してくるってことは接近するのに障害物がなく、目印が

あるということだ。だから、バリケードを作ればいい。」



「そんな……毎晩来るのにバリケードなんて作る暇はないのでござる……」



「そうだぞ小僧。それに、魔物を止めるほどの障害物だ。時間もそうだが材料もない。」



「だから大丈夫だって……俺がそのバリケードにとある魔法をかける。とてつもなく防御力を上げる魔法だ。最低でも5分間の間、奴を足止めできる……」



「5分間……でござるか……でもバリケードは?」



「いや、網でいい。湖だから底に付かなくても半分くらいの深さはそれでカバーできるはずだ。そんなに巨大な魔物ならすぐにバリケードにあたる。」



「網……か。確かにここは漁業を中心にかせいでるし、大きな網ならたくさんあるが……いくら魔法をかけても網で魔物の進行を止められるのか?」



「ああ、どんな攻撃でも跳ね返して見せる。その点は心配いらない。」



「ふん、いきがりおって……里長代理であるこの俺を倒したんだ……今日の作戦では

信用してやることにしよう……だが、万が一里に被害が出たなら……」



「ああ、だから部隊はいざというときのためにいつもの場所で戦闘準備をしてくれ。そのかわり、網を引き寄せられる人を20人ほど、土砂を崖から落とす人を20人ほど貸してほしい。」



「ふん、この里に住んでるやつらなら女でも子供でも網を引き寄せられる。……いいだろう。土砂を落としたり、網を張るだけなら危険もないしな。人員を貸そう。」



「拙者もその作戦、参加するでござる……」



 令二とケブラの会話ぞ最中、ルナは申し訳なさそうに手を上げる。



「あれ?ルナは前衛部隊じゃないのか?」



「そうでござるが……」



「ふん、行って来い。よそ者を連れてきたんだ。責任もって最後まで面倒見ろ。」



「ありがとうでござる!父上!」






 そんなこんなで土砂を落とせそうで、里に迷惑のかからない方向に向かって

誘導するように網を仕掛けた。



「網への距離……100……10……かかりました」



「よし……虹色魔法レインボー・マジック、赤!」



 令二は網に向けて《メガ・プロテクション》をかける。


 こうすることで、この網にはいかなる攻撃も通用しない。


 つまり、強力なバリケードができるわけだ。



「よし、あとはこの網のひもを引っ張って退路を塞げば……頼むぞ!ルナ!」



「任せるでござる! みんな、いくでござるよ!」



 そういうと、ルナたちは魔物の引っかかった網を20人で引っ張っていく。



「……()は鋼、汝を守る盾なり……」



 令二は聞こえないように小さな声で引っ張っている里の人たちに《プロテクション》をかけた。



(これで、攻撃力……つまり硬度や腕力、脚力が上がったはずだ。)



(よし、順調だな。どれだけ巨大な魔物かは知らねえが、《メガ・プロテクション》の前じゃ形無しだな。おかげでMPも少なくなっちまったけどな。)



 令二がそう考えていると里の人たちが魔物を崖付近まで引っ張った。



「よし、崖の上の奴ら、頼む!」



「はい!」



「……()羽衣はごろも、汝は守らざるものなり……」



 次に令二は《ディバインド》をかけ、魔物がいるであろう周辺の防御力をMPが

限界になるまで減らした。



 崖の上にいる人たちがそのまま大量の土砂を落とす。



 ……作戦は成功したようだ。



「……油断は禁物だが……あれだけの《ディバインド》をかけたんだ……しばらくは動けないだろう……」



「作戦は成功したのか!」



 前衛の部隊が魔物が網にかかったことにきずいてこちらに向かってきた。



「父上!無事成功しました!」



「そうか、なによりだ……しかし驚いたな、たったこれだけの労力で今までとらえきれなかった魔物をとらえきるとは……」



「あとはここに埋まっている魔物を殺すだけなんだが……これだけ大きいと一苦労だな。」



「マスター、緊急連絡です。」



 アークが小さな声で令二に話しかけてきた。



「なんだ、何か起こったのか?」



 令二も小さな声で応答する。



「先ほど捕まえた魔物は《クラーケン》と判明しました。……そして、《クラーケン》は一体ではありません……」



「なに!」



 そしてその緊急連絡は……衝撃の事実だった。



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