第七十七話 植物は○○ですくすく育つ……
海賊たちを結界内から助けると約束した令二はその方法を模索していた……
「ここは……通れないな……これで全部調べ終わったけど、やっぱりこの塔の中に魔法陣があるみたいだな……」
令二はこの結界を発動している魔法陣を探していた。
結界魔法とは召喚魔法、幻影魔法、呪縛魔法などの周囲の状態を変化させるのに類する魔法を一定の範囲内にのみ永続的に発動させるものである。外側から侵入したものを閉じ込め、外に出られなくするのが主流である。
そしてその発動条件は、魔法陣である。
その結界の核となる魔法陣が消えればその結界は消え、効力を失う……というわけだ。
そして令二はこの結界から出るため魔法陣を探しているのだが……どうやら等にあるらしい。
「あんまりあの塔の中には入りたくないんだけどな……」
令二はサリーやほかの海賊たちから聞いて、塔内が魔物でいっぱいであることをすでに知っていた。令二、本人もまた、塔から感じることのできる威圧感と魔力でその存在に気付いていた。
「……明日にでも行くか……」
これは昨日の出来事であった……
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「一人で塔に行くんですか!」
この海賊船の料理人担当、テートが驚いている。彼女は同じ猫だからか令二のことを初めて会った頃から邪険なく接してくれている。
あれから五日……令二は魔法陣を捜索していたが発見に至らず、断念し、塔の中に入ることにした。
テートの茶髪のツインテールはいつもより激しく揺れている……最初に会った時に見せたそれよりもひどく驚いているようだ。
「……何か問題でもあるのか?」
令二は食堂でテートの作った料理を食べながらそんなことを言う。
「ハムハム……」
そして、令二の隣でチユは料理にかぶりつくように食べている。
「い、いえ……船員のみなさんでも塔の中だけには近づくのをやめているのに、いくら白猫様でも一人でなんて……」
テートはまるで母親のように令二を心配している……気持ちはありがたいが、それではいつまでたってもここから出ることはできない。
令二は初日に食料確保のために魔法で畑を作り、植物の成長を早くしている。そのため、たった一日で野菜や果物が実り、食料に困ることはなくなった。それ以来、船員たちの令二に対する信頼はかなり増したようで、気絶させられた奴の中にも令二を「だんな」と呼ぶものもいるようになった。
それからテートに「様」付けで呼ばれるようになったがそれにはあまり触れないでおこう……
しかし、いくら食料がもつからといって、あまりこんなところで手をこまねいているわけにもいかない。
(……ルナたちと早く合流しないとな……)
令二がそんなことを考えていると……
「白猫様! 聞いていますか!」
「……ん……ああ、悪い……聞いてなかった……なんだっけ?」
「……まったく……とにかく無茶だけはしないで下さいよ……白猫様は私たちの希望なんですから。」
(……俺はいつから希望になったんだ……)
令二はそんなことを考えながらも、テートの作った料理をおいしそうに食べているのであった。
そしてその後、令二はテートに心配しないように言って、一人で塔内に乗り込むのであった。