第七十六話 集団でひきこもり……あまり感心できることじゃない。
サリー・アルディアナは驚いていた……
この世界には自分よりも強い男などいないと……
獣人の中で最強の種族と言われる獅子族……彼女はその中でも優秀な戦士であった。
あの男は何者なのだろう……
そんなことを考えているサリーだったが、しばらくすると視界がはっきりと映ってきた。
「……ここは……」
サリーはどうやら眠っていたようだ。
サリーは辺りを見渡す……どうやら船の個室のようだ……レイの男の姿はない。
「……く、捕まったか……」
サリーは自分の手足が見たことのない光のような縄で縛られていて、そう吐き捨てる。
(やはり……これは魔法なのか……私は魔法のことはよく知らないが、これはかなり高度な魔法のはずだ……私の力でほどけないなんて……)
サリーは令二がかけた付与魔法を外そうと壁に向かってその腕をたたきつける……が、一向にはずれる気配がない。
「……やっぱりダメか……」
サリーが縄をほどこうとしていると、船の個室のドアが開いた。
キィ……
あの男だ……白い猫族……
「おっ、起きてるな……待ってろ、今縄をほどくから……」
男は彼女に近づくと縄に手をかざす。
「ち、近づくな!」
サリーはそれを必死で抵抗する……しかし、令二はそれを気にせず縄をほどく。
「……よし、これで縄はほどけたな。」
男はなぜかサリーの縄をほどいた。しかし、その理由は彼女にはわからない……
「……何が目的なんだ……」
彼女は気が付くとそんな質問をしていた……彼がそれに答える道理はないのにもかかわらず……
「さっきまでの威勢の良さはどこにいったんだ? ……まあ、いいや。この船をもらいに来たって言っただろ? 交渉しに来たんだって……」
「……信じられるか!」
「……信じようが信じまいがどっちでもいいよ。」
サリーは声を上げるが、令二にまったく動揺は見られない。
(変な奴……私を倒せるならほかの船員なんてわけもなく殺せただろうに……船なんて勝手に奪えばいい……いや、船を奪っても此処からは出られないだろうけど……)
そんなそっけない態度にサリーはそんなことを思っていた。
「この船がここから動けないのは船員から聞いた。この結界から出られないんだってな……」
「……その方法を私から聞き出そうってのかい? 残念だけど私も出られる方法があるんだったら知りたいよ。」
「……やはりそうか……」
令二の言っていることは正しい……彼女の言っていることは嘘じゃない……お宝目当てでこの塔に来た彼女ら海賊だったが、どうやら彼女らはなんかの魔法で外に出られなくなってしまったらしい。船の食糧はそろそろ底をつきそうで、塔の中は魔獣だらけ……海賊たちは完全に八方塞がりとなってしまった。
サリーはこれから言う彼の言葉を信じてしまったのは、何かの希望にすがりたかったからかもしれない……自分よりも強い彼ならもしかしたら……と……
「……じゃあ、ここから出られたら俺をこの船に乗せてくれるか?」
彼はまるで自分ならそれを解決できるかのように言うのであった。
そしてサリーはいつの間にかその提案を受け入れていたのだった。