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第七十四話 海賊……というか、ヤクザ?

 令二は宿で起きると、朝早くから幻影魔法ファントム・マジックをかけられている白い塔にボートをいで向かっていた。


 ギコギコ……


「……スヤスヤ……」

 チユはボートの上でグッスリ眠っている。


「ん、そろそろ霧が晴れてくるな……」


 塔の名前は《レウスの塔》――――――――――――

戦争で戦った獣人の戦姫、レウスをはじめとした戦死者たちがこの塔に祀られているらしい。


 霧が晴れて塔が見えてきた。


「……魔力を感じるな……わかるか、アーク?」


「はい、塔の周辺には結界が張られているのを確認しました。外界からの資格が遮断される結界です。おそらく、塔に到着すれば、確認が可能になると推測されます。」


「結界か……昨日の夜にも何も見えなかったのはそれが原因か……本当に幻影魔法ファントム・マジックが使われているみたいだな。獣人にもこんな魔法を使うことができる奴がいるのか……」


 令二は《レウスの塔》の付近にボートを置き、陸に足を付ける……すると……


 ブウウン!


 そこにいきなり大きな船が多数、出現した。


「なっ!」


「て、てめえは誰だ!」

 令二が突然の船の出現に驚くも、令二を発見した青いバンダナをした男が令二の出現に驚いたようだ。


「て、敵襲だ~! 起きろ~!」

 男はすぐに仲間を呼ぶ。


「……《プロテクション》……」


 令二は自身を強化し、すぐさまその男を気絶させた。

しかし、時すでに遅し。船の中から出てきた仲間と思われる者たちが大勢でこちらを見ている。目の前に男が倒れているため、言い訳ができない。


「てめーよくもロットンを!」

 ロットンとはこのバンダナの男だろうか……そんなことを考えながら令二は冷静に今の状況を分析する。


「……海賊……か……こんなところにいるとはな……チユ、起きろ……」


「んー……おはよーご主人様ー」

 チユが眠そうに眼をかきながら体を起こす。


「俺から離れるなよ……」

 令二はチユが起きると彼女を自分の懐に寄せてそう言う。


「ん……わかったー」

 チユはこの状況にかかわらず、のんびりとしている。


「……かかれー!」


「おおおーーーーー!」


 海賊たちはしびれを切らしたのか、完全に令二たちを囲んだ状態から四方八方からの攻撃を仕掛ける。しかし、この時……海賊たちは考えもしなかっただろう。たった一人に船員が全員手も足も出ないなどと言うことに……


「橙色……」


 グウウウウン!


 令二は《グラビティ・コア》を発動し、令二の周囲以外に動物がひれ伏すほどの大きな重力を加えた。


「な、なんだ……お、重い……」

 獣人とはいえ、この衝撃に耐えられるものはいないだろう。令二を襲おうとした海賊は即座に地面に倒れこむ。


「……すごいですー」

 その光景を見て驚いたのかチユはいつもより目を見開く。


「くっ、て、てめー、何しやがった!」


「船長には手を出させねーぞ!」


 海賊たちが何やら言っている……が……


「……俺は今考え事をしている……黙れ。」


 令二はそう言うと、重力を強めて、鬼のように、悪魔のように冷たく吐き捨てたのだった。そして、


(ふむ……この船を乗っ取るか……)


 そんなことを考えている令二であった。


 ――――――――――――


「サリー船長! 大変です!」

 船の中で赤いバンダナをした男がサリーと呼ばれる者に話しかける。


「んー? なんだ、騒がしいな。敵は一人なんだろ? そんなにいいお宝なんて……」


「そうじゃないんです! ぜ、全滅したんです!」


「全滅? 何人行ったんだ?」


「ご、五十ほど……」


「ふざけんな! たかだか一人のためにそんな……」


 ギイ……


 ドアの開く音がした。だが、とても静かで……しんみりとしている。今まで船内は騒がしかったのに嘘みたいに静かになり、足音が異様に大きく聞こえる。


 コツコツ……


 何者かが船に乗り込んで歩いて入って船内の部屋に入ってくる。


 白い髪、白い尻尾……目は黒く、服装はどちらかというと、黒に近い。


「……交渉に来た、この船を貰い受ける。」


 その男は大勢の船員の前でそんなことを口にするのだった。

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