第七十一話 嘘をつく相手はよ~く考えよう。
オロブは驚いていた。現在のこの状況に。
(……くそ!吾輩の願いが、ようやく、あと少しで吾輩の求める野望が叶いそうなのを……なぜ、なぜだ!)
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オロブは声を大きく上げてキャシーたちの突然の脱走を聞いて驚いた。
彼の差し金により、領軍の警備はつかせていない。この出来事の裏が知られれば領主であるオロブもその地位を落とされる危険があるからだ。故に冒険者を呼び、ギルドへ依頼としてこの件を任せたのだが……
「こ、このままでは逃げられてしまうではないか!」
オロブは慌てふためいている。
「お、落ち着いてください、オロブ様。今冒険者の方々が後を追っています。」
使用人がオロブの体を支えてそのように言う。
……だが、
この状況を作ったのはルナたちである。彼女らは報酬を得て、事故と見せかけることで獣人、そして自分たちをオロブのもとから離れさせる……一石二鳥の作戦であった。
むろん、それを知るはずもないオロブはその言葉を聞いて安心する。
「……そ、そうか……」
よほどのショックで頭の回らないオロブはこの芝居に気付かない。
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キャシーたちを追いかけたふりをして屋敷を飛び出し、宿に到着するのだった。
しばらく経過すると、レイが腕を後ろで組み、体を伸ばした。
「う~ん、上手くいきましたね!」
「……拙者としてはもう少し真っ当な方法が良かったでござるが……これではまるでオロブ殿をだましたようで……」
「何言ってるのよ! あのヒゲ親父が悪いんじゃない……異種族だからってあんなにかわいい娘たちをまるで物みたいに扱うなんて……」
「あれ~、ミリーさん、初めは獣人に噛まれるのが怖いって言っていたじゃないですか~。」
ミリーが怒っているとレイが冷やかすように笑う。
「も、もう! あれはなしだってば! ……あ、そう言えばキャシーちゃんとパールはまだ来ないわね……強制はしないように言ってたけど……結局来ないのかしら……」
「……まあ、獣人は人間にひどい扱いを受け続けていたでござる。今回のことがあったとはいえ拙者たちのことを信用できないのは仕方がないでござる……さて、これで何の問題もなく依頼は達成したでござるし……今回の件はレイジ殿を見つけるため……やむを得ないでござる。」
「あ! そうだった……水晶使いましょう!」
ミリーが今頃になって思い出す。
「……そうですね……ええと、こうやって手をかざしてっと……」
レイは水晶についてきた説明書のようなものを読んでいる……
「どれどれ、レイちゃん、貸して。えーと、なになに……この水晶は意中の人の居場所を感知する水晶です。探す対象の人の持ち物と水晶を以下の魔法陣の中央に置き、この呪文を詠唱してください……ふむふむ。」
ミリーはレイからそのメモを受け取り、読みはじめた。
それから彼女らは宿の中で魔法陣を描き、その呪文を唱えようとしたが……
「……ね、ねえ、この『意中の人』の意味って……」
「ん? どうかしたでござるか、ミリー?」
「はは~ん、ミリーさん……もしかして……」
「な、何よ……レイちゃん、なんか今日しゃべり方が変じゃない?」
「そんなことはないですよ?」
レイはそう言いながらニッコリと笑う。
「……まったく……始めるわよ……」
こうして彼女らは令二の居場所を知るのであった。
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それから数時間……数日たっても彼女たちはオロブのもとに戻ってくることはなかった。
2か月後には裏取引についてのオロブの行動が発覚し、領主としての地位はなくなったそうである。取引相手のしっぽを掴めなかったが、今もなお、国軍の取り調べ、調査は続いているらしい。
ルナたちの冒険はまだまだ続く……
しばらく主人公の出番がなくて申し訳ありません。
次回は出番があります。