第六十八話 こ、これが猫の触り心地……
レイとミリーはキャシーを連れてミリーが取り逃がしたもう一人の獣人、パークがいると思われる建物に入った。
そこは町はずれにある森林の廃墟で、今では魔物が周囲にいるので使われていないようだ。
「この地下にいるんですんね?」
「ち、違うにゃ! 断じてこんなところにパークはいにゃいにゃ!」
キャシー自身はきずいていないのだろうが、彼女は嘘をつくとき尻尾を丸める癖がある。
レイはそれを知っているので彼女の反応を見て、その言葉が嘘であるとすぐわかるのだ。
「ここで待ち合わせをしているのね?」
それを見てさらにミリーが質問する。
「ち、違うにゃ!」
と、言いながらもキャシーは尻尾を丸めている。
「よし、では行きましょう。」
レイがそう言うと、二人はキャシーを連れて階段を下りていく。
すると目の前に立てつけの悪そうなドアが現れた。
「ムゴムゴ……」
キャシーが大声を出してきずかれないようにレイは彼女の口に手を押し当てながら……
「いくわよ。」
「はい。」
二人はドアを開けた。
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「……キャシー、遅い……あ!」
「其は焔、万物を業火ごうかに見舞わせるものなり!」
パークはキャシーが捕まっていることにきずいたのか体勢を整えようと試みるが、その時間を与えることなく、ミリーは詠唱した。するとミリーの頭上から火の玉が大量にあらわれ、パークを襲う。
「……くっ……」
火の玉のいくつかをかわし、四発の火の玉がパークに直撃した。
「パ、パーク! 大丈夫かにゃ!」
キャシーはレイの手を振り払い、縄に縛り付けられたままパークのもとに走る。
「……だ、大丈夫……キャシーこそケガは……」
「だ、大丈夫とは言えにゃいけど、大丈夫にゃ……」
パークは先ほどの魔法を直撃したのにもかかわらず、気絶していないようだ。
「手加減したけど、獣人って本当に頑丈なのね……」
「……ミリーさん、後で尋問するんですからあまりケガさせないでください。治療するのに時間がかかるんですよ。」
二人は悪役のようなセリフを使って話しているとパークがそれを攻撃するチャンスと思ったのかミリーに体当たりしてくる。
「よっと……」
しかしミリーはすかさずパークの攻撃をかわし、そのままパークは先ほど閉めたドアに直撃した。
「こちとら変な子供に地獄のように鍛えてもらったんだから!」
「ミリーさん、あまり親方様を悪くいってはいけませんよ。」
レイはそう言いながらもパークのローブを剥ぎ取り、縄で縛りつけている。
今までローブのせいでその顔が見えなかったが見てみると美人もとい美獣であった。
その長く青い髪は後ろで止められている、犬耳はふさふさで尻尾は筆のようだ。
「さて、気絶してるみたいですし少し治療しますね。ミリーさんはキャシーさんを見張っててください。後できついお仕置きをしておきますから。」
レイはニコニコ笑ってそう言うとパークに《ヒール》をかける。
「……わかったわ。さっ、こっちに来なさい。」
「パ、パークは……大丈夫かにゃ……」
「大丈夫よ。レイちゃんがちゃんと治してくれるから。」
ミリーはキャシーの頭をなでながらそのようなことを言っているが、キャシーは涙目になって彼女のことを心配しているようだ。それを見てミリーは少しだけ罪悪感を覚えるのであったが、キャシーの頭がフワフワしていて撫で心地がよかったのでその感情もすぐに忘れてしまうのであった。