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第六十七話 拷問と尋問……どっちが怖い?

 ミリーとレイ、二人が宿に戻ると部屋には見かけない獣人がスヤスヤと眠っていた。


「あれ、この子は……」

 ミリーは黒い服をまとったその少女を見て少し戸惑っているようだ。


「レイ、あなた獣人を捕まえたの?」


「……はい、えっと……とにかくお話します。」


 ――――――――――――


「……姉さまはオロブ領主の話したこと、宝石については嘘だとにらんでいます。」


「え、うそ!」

 そのレイの言葉にミリーは唖然と驚いている。


「……はい、たしかに言われてみれば獣人はこの大陸では何も売買できないですし、宝石を盗んだところでどうしようもないんですよね……それにオロブさんは話している時、あまり宝石が盗まれたことに関しては気にしていなかった……獣人であることだけを重要視していた気がします。」


「……それは奴隷の獣人が逃げだしたら誰だって……」


「でも、彼女の様子をみる限り宝石を盗んだ様子はありませんでした……食料はたくさん持っていましたけど……今、姉上がオロブさんやもう一人の獣人の動向を探っています。」


「あ……そう言えば……」


 ミリーはレイに申し訳なさそうにもう一人の獣人を取り逃がしてしまったことを話し出した……


 ――――――――――――


「……そうですか……」

 レイはミリーの話を聞いて残念そうに落ち込む。


「レイちゃん、ごめんね。」


「まったく、ミリーがあんな単純な罠に引っかかるから……」

 メリルがしょぼくれているミリーに文句を言う。


「……ぐ、悔しいけどいいかいせない。」


 ミリーは反論できなかった。それもそのはず、あれは明らかにミリーのせいだからだ。メリルが忠告して、呼びかけたのにもかかわらずミリーはもう一人の獣人を取り逃してしまったのだ……いつもは自由奔放でメリルに反論するのだが、今回の件は責任を感じているミリーだった。


「……ではキャシーさんを起こしますか……」

 レイは顔を上げてキャシーを起こそうとした。


「ねえ、大丈夫? 噛まれたりしない?」

 ミリーは獣人が怖いのかキャシーから大げさに距離をとる。


「大丈夫ですよ、こうして拘束していますし、さっきは散々いじめておきましたから……」


(……レイちゃんって……時々おそろしいわね……)


 レイがニコニコしながらそんなことを言うのでミリーは生まれてこの方味わったことのない種類の恐怖を味わい、そんなことを思っていた。


「キャシーさん、起きてください。キャシーさん!」


「ん……んん……」


「あ、起きました!」


「にゃ、にゃあ! も、もうゆるしてにゃ!」

 

 キャシーは何やら震えているようだ。


「もう何もしませんよ、ちゃんと質問に答えればですが……」


「ひ、ひい! ……ブルブル……」


 キャシーは縄に縛られたままずっと震えている。

その光景を見たミリーはキャシーのことを気の毒に思い、しばらくキャシーをなだめていたのであった。


 ――――――――――――


「……うう、お前は人間だけど、良い奴だにゃ。」


「まあ、私はこう見えてもエルフだけど……落ち着いた?」


「……あ、ありがとうにゃ。」


「少し落ち着きましたか?」


 キャシーが落ち着いたためかレイが横から顔を出す。


「……落ち着いたにゃ。」


「では、質問しますね……あなたのお仲間についてなのですが……」


「パ、パークは……仲間は売れないにゃ!」


「……なるほど、パークさんと言うんですか……」


「し、しまっにゃ!」


 レイは少しずつゆさぶりをかけてキャシーの口を割ろうとしている。レイはキャシーが扱いやすい人間もとい猫であるとにらみ、それを考えたうえで尋問しているのだ。


 レイは忍者としては半人前だが、それ以上に彼女の思慮深さやその頭のキレは彼女の長所だったのだ。それをもってすれば猫の一匹、犬の一匹の尋問など容易い……本人には自覚がないようだが、ルナや父親のケブラにはなんとなくわかっている。



 それから数時間にわたってレイの誘導尋問が開始され二人はもう一人の獣人の住まう場所を知ったのであった。

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