第六十五話 落ち込んでいる人を笑わせる方法は?
ミリーたちが一方の獣人を取り逃がしたころ、ルナたちは猫耳の生えた獣人を尋問しているのだった。
「にゃははははは! や、やめるんだにゃー!」
「お、この耳が弱点でござるな……ウリウリ……」
コショコショ……
「そこは……にゃにゃーーーーー!」
猫耳の獣人はルナたちに猫じゃらしでくすぐられていた。
そして、しばらくすると、二人はくすぐるのをやめて――――――――――――
「……ハア、ハア……にゃ、にゃんてひどい奴らにゃんだ……」
「そろそろ答える気になりましたか?」
レイは猫じゃらしを獣人の顔の前に押し付けるように見せ、脅した。
「観念したほうが身のためでござる。こうなったらレイは里のだれよりも残酷でござる。」
ルナは追い打ちをかけるように耳元で忠告した。
「にゃ、にゃああ……」
猫耳の獣人は顔を真っ青にしてあきらめたようで、おもむろに口を開いたのであった……
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「……コホン、ではまず、お名前を聞かせて貰いましょうか……」
「……キャシーにゃ……」
「そうですか、ではキャシー、あなたはどうやって奴隷から解放されたんですか?」
レイは手慣れたようにすぐに次の質問を投げかける。
「………………」
「キャシー殿?」
「……に、にげてきたにゃ。」
「……なるほど、それでその後、領主さんの宝物庫から宝石を盗んだんですね?」
「だ、だから、そんにゃことは知らないにゃ!」
キャシーは慌ててその言葉を否定する。
「……いまさらそのような嘘を……」
「う、うそじゃないにゃ!」
「待つでござる!」
キャシーが縄に縛られたまま抗議していると、ルナが横から手を入れた。
「……なにやら様子がおかしいでござる……キャシー殿、もう少しお話を聞かせてもらってもよろしいでござるか?」
「……は、はい。」
ルナは何やらわかったようで、キャシーの事情を聴いたのであった……
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ルナがキャシーの尋問をしている一方で、ミリーは獣人の仕掛けた罠により、木材の下敷きとなって動けずにいたのだった。
「うーん、うーーん……だめ、抜けない……」
「まったく……あんな手に引っかかるなんてミリー……あなたの将来が心配になってきたわ。」
「なっ! しゃべる無機物に言われたくないわよ! この年増!」
「がれきに埋もれても、その口は変わらないみたいね、ふふ。」
「いーーだ!」
「………………」
「………………」
二人はケンカをやめたようだが、その後には静かな雰囲気が流れていた。
「……誰か助けに来ないかな……」
「魔法を使うと今にも崩れそうだわ……学習したのね、ミリー。」
「……なんだか気にいらない言い方だけど……まあ、いいわ。でも、誰も来ないなら風魔法で抜けるしかないわね。……其は風……天空をかける翼なり……」
ミリーは《エアリアル・ウィング》を木材にかけ、宙に浮かせた。
「どっこいしょと……逃げられちゃったわね。」
「一旦、二人のほうに戻りましょう。」
メリルがそう言うと、ミリーたちはルナたちのもとに戻って行った。