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第六十二話 旅には足が重要なのだ……

「……めんどくさい夢だったな……」

 令二はネピュルのことを思い出してそうつぶやいた。


「おはようーご主人様ー」

 すると、チユの声が令二の布団の中から聞こえてきた。


「ん……チユか……なんで俺の布団の中にいるんだ?」


「えーとねー間違えたー」


「…………次からは気を付けろ。」


「はーい」


 令二はそう言ってベッドから降りると、装備を整え、宿を出た。


 ――――――――――――


「……出発するか…………と、その前に……」


 令二は草原の上でおもむろにアイテムボックスから材料を取り出して、錬成し始めた。


「錬成……発動……!」


 大きな光が材料を包み込み、しばらくするとその光が消えていく……

そして、その光が消えた後、その場に現れたのは……


「ご主人様ーこれなーに?」

 チユが令二の錬成をしたものを見て、興味深そうにそう尋ねると、


「ああ、これは車……というより前が一輪、後ろが三輪の荷台だな。魔力を使えば自動で動くように想像し、かなりスピードも速いはずだ。」


 そう、令二の錬成したもの……それは元の世界での主な交通手段であったくるまだ。その車体は黒色、ドラゴンから取れたダイアモンド並みの硬度を誇るうろこのボディー。タイヤは柔らかいスライムゼリー。車内は《ボルト・タイガー》や《ファニー・ラビット》の毛皮をふんだんに使ったソファー。錬金により作ったので獣臭さがまるでないのがとてもすばらしい。


「くるまー?」


「……そうだ。まあ、正直言ってここまで上手にできるとは思ってなかたが……日頃のファッションセンスがデザインにも影響したということだな。」


「わかんなーい。」


 チユが令二の言ったことが理解できないようで、帆を膨らませて怒ったようだ。令二はそれを見てふいにも可愛いと思ってしまった。


「よし、乗るぞ。」


 令二は車に乗って港町である《ゲイルストール》へと向かうのであった。


 ――――――――――――


「この速度ならどのぐらいで到着すると思う?」

 令二はそのようにアークに尋ねた。


「……計算……でました。港町には今日中には到着しそうです。」


 令二はアークのその返答を聞いて少し驚いていた。


「……やっぱり、《フォービドン》は車にも効果があるみたいだな……ダンジョンで手に入れた材料はほとんどこの車に使っちまったけど、船も自分で作りたいな……」


「……船を錬成するのに必要な材料……検索……でました。木材の束300、鋼材の束100、生地の束800……です。」


「……全然足りないな……」


「これらをマスターが採取するのに要する時間は……約600時間です。」


「えーと、普通に船に乗ったほうが早いのかな?」


「……船の速度はわかりかねます。」


 結局、令二は船を作るのが面倒なようで……それらを断念したのであった。


 ――――――――――――


 その頃、ルナたち一行はというと……


「……ねえ、この馬車もっと速く動かないの?」


「無理を言うなでござる。これでも目いっぱいでござるよ。」


「それに、忍者のためにしつけられてる犬ですから、馬車じゃありません。」


「確かに鼻はきくみたいだけど……私たちなら歩いたほうが速くない?」


「……これから先の旅、歩いて疲れるわけにはいかんでござる。どうしても忍犬は必要なのでござるよ……それにツキヒもカゲツも里では優秀でござる。」


 ツキヒ、カゲツとは忍犬たちの名前である。忍犬とは忍者のお供をする犬のことであり、偵察や伝令の際によく使われる。鼻が利き、賢いので飼い主がいなくとも里に帰還するのもお手の物なのだ。


「そろそろ《ランプス》に到着するわね。」


「……そうですね、見えてきました。」


 三人と二匹は《ランプス》と呼ばれる街に到着しようとしていた。


 《ランプス》の領主、オロブのクエストを承諾したのだ。報酬は《オリハルコンの水晶》……離れている探し人、つまり令二の捜索そうさくを見つけることができる水晶だ。


 この水晶は高価であり、レア度もかなり高い。令二がどこにいるかもわからない三人はこのクエストを受けることにしたのだった。


 こうして、三人の旅が始まるのであった。

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