第五十一話 再開って会いたくない人とでもあるもんだ。
突然ですが、タイトルを変更しました。
新しいタイトルは『基本魔術の魔導書 ~ぼっちの俺の異世界旅行~』です。
令二はベイルに連れられ、大きな屋敷に到着した。
「では、武器をこちらに……」
ベイルが玄関前で武器を回収しようとする。
「……はい、どうぞ。」
(魔法は使えるし、まあいいだろう。)
令二はそう考えて、《エリューブ・ソード》をベイルに手渡した。
「では参りましょう、黒猫殿。」
令二はベイルとともに屋敷の奥に進んだ。
令二の視界に、昨日、令二を従者にしようとしたお嬢様がいるのだった。
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「……ようやく来たか、黒猫……」
そして、お嬢様が放った第一声がこの言葉だった。
「それでは、私は失礼させていただきます。」
「うむ、ご苦労であった。」
お嬢様がそういうとベイルは屋敷の外へ出て行った。
「たびたび予感がしておりました。あなた様とお会いになるのは二度目ですね。」
令二は商人として丁寧にあいさつをする。
(昨日の態度を見た限り、予想していなかったわけじゃないが……本当にこいつだったか……)
「ふむ、楽にしていいぞ、黒猫。……貴様、魔法が使えるらしいな?」
どうやらお嬢様は昨日よりかなり交友的だと令二は思った。
「…………お気づきでしたか……ああ、そうだ。」
令二は『楽にしていい』と言われたので、いつも通りの口調にもどした。
「ふっ、それが貴様の本性か……今回、貴様を呼んだのは他でもない。妾に仕えよ。」
「……断る。」
令二はお嬢様の言葉に対して率直に申し上げた。
「はっはっは!そうかそうか。そう言うとは思っていたぞ。
ならば…………貴様は昨日、目的があると申して居ったな……なんだそれは?」
「……何を言っているかよくわからないが。」
「貴様の願いをかなえると申しておるのだ。ほれ、言ってみろ。」
「…………あんたに言う義務はない。」
「その目的とやらは金か、名誉……それとも女か?」
「……全部違う……とだけ言っておく。」
「……ならば試すしかないな……」
お嬢様はその瞬間、指を鳴らした。
ガチャッ……
すると、屋敷の扉から一人の人物があらわれた。
「なんだ……昨日のヒツジ女か……」
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令二がそれを口にした時、次の瞬間、パーニャが令二にとびかかった。
「なっ!」
令二はその攻撃を紙一重で跳んでかわし、お嬢様の前に着地した。
「……一体、何のつもりだ?」
「貴様には今からパーニャと決闘を行ってもらう。」
「…………何を言っている?」
「……よそ見をしていてもいいのか?」
お嬢様がそういうと、パーニャは令二の真横から短剣を投げつけてきた。
「……赤……」
令二は《メガ・プロテクション》を自身にかけ、その攻撃を無効化する。
キン!
「……別によそ見していてもいいんだよ。」
短剣を体で弾き飛ばし、令二はお嬢様に向かってそう言った。
「はああ!」
すると、パーニャが先ほどと同じ短剣で首を攻撃してくる。
(…………速いな。)
「……藍色……」
素早いパーニャを視界に入れて、《グランスペルバインド》を発動させる。
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「ぐう!」
しかし、次の瞬間に吹き飛ばされたのは令二であった。
令二はそのまま屋敷の壁に激突する。
「……ヒツジ女、何をした?」
令二は《メガ・プロテクション》の効力により、ダメージはない。
壁に激突した後、令二はパーニャにそう尋ねる……
「………………」
令二は問いかけるが、パーニャは無言のままだ。
(ダメージはないが……どうやら藍色は効かないみたいだな。)
令二はそう考えながら立ち上がる。
「これ、パーニャ、妾の屋敷を傷つけるではない。」
「申し訳ありません、お嬢様。」
パーニャは令二を見ずにお嬢様にお辞儀をする。
「………………」
だが、令二はその時、二人を観察していた。
(……なんなんだこいつら……本当に何が目的だ……)
「……どうした、構えないのか?」
令二が考えていると、パーニャがそう尋ねてきた。
「武器を回収しておいて、よく言ったもんだ……」
「貴様は得物を使わないと思っていたが……違うのか?」
「…………いや、格闘のほうが得意だ。」
「そうか……ならば気兼ねする必要はない……参る!」
パーニャは屋敷内を走り、その俊敏な動きはすぐに令二を捕らえた。
「はあ!」
次の瞬間、パーニャが短剣で令二を攻撃することを試みた。
が……
「……橙色……」
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令二はすでに新たな虹色魔法を発動していた。