第四十八話 やっぱ本がしゃべることには理由がある……
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今日は二話追加します。
ミリーが魔導書を手に入れてから約半年、エルフの森の近く……人間の集落で大多数の魔物が暴れるという事件が起こった。
エルフの森にもその事件の知らせが届いていた。
「皆の者、静粛にするのじゃ。我らエルフの森の周辺には結界が張っておる。魔物が入ってくることはありえん。」
長老のバーズが慌てているエルフに対してそう言った。
「ですが、長老。人間たちがむざむざ死していくことを見殺しにはできません!」
「それに……万が一と言うことも……」
エルフたちはバーズに対して抗議をする。
「ならん!人間には人間……エルフにはエルフ……自らの問題は自らで解決するのが世の常。魔物に危険をさらされ、森の外に出ていくことを禁じられている我々がどうやって人間を助けるというのじゃ。」
「し、しかし……」
「他の種族のために我ら種族を滅ぼさせるわけにはいかんのじゃ。人間の中には賢い者もいるじゃろ。ここへ救いを求めてくるものもいるかもしれん。だから結界を解き、森の外に出ることは決して許さん。」
「……わかりました。」
バーズの言葉に反論していたエルフたちは皆、納得したのか、自分のねぐらに戻って行った。
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「ねえ、ママ……みんななんで怒ってるの?」
ミリーは森の皆の様子を見て森の雰囲気をおかしく思っていた。
「……それはね……悪い奴が森を襲ってきたからなの。でもね、大丈夫よ。」
ミクリエがミリーにそのように答える。
「う、うん……」
「大丈夫よ。みんなを守るために長老たちは頑張ってるんだから……そんな顔しないで……」
「……うん、ママ。」
ミリーはそういって、苦笑いをした。
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その夜、エルフの森に一人の人間の男が訪れた。
「た、たすけてください!」
エルフたちに助けを求めてきたのだ。
エルフたちはその男を保護し、しばらく世話をすることに決めたのだった。
しかし――――――――――――次の日。
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「大変だ!結界が破れたぞ!」
「な、なんじゃと!」
バーズが一人のエルフの知らせに驚いた。
「あの人間の野郎、裏切りやがった!」
「魔物が……長老、どうしますか!」
「ええい、うろたえるな!魔法が使えるものをすぐに戦わせるんじゃ!」
バーズはそう叫び、エルフたちは戦う準備をしていた。
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「ママ、行っちゃうの?」
そこには悲しげそうにミクリエを見送るミリーがいた。
「ミリー、大丈夫よ。絶対に戻ってくるわ。ミリーもいい子にしてるのよ。」
「うん!」
ミクリエはミリーをなだめると、すぐさま結界付近へ向かった。
(ミリー、あなたのお母さんに顔向けするためにも……私は死なないわ。)
その考えはミリーには理解できないことである。ミリーにとっての母親はミクリエで、ミリーは本当の母親の顔さえしらないのだ。ミクリエもミリーを本当の娘のように思っている。だが、その二人の考えには埋めることのできない違いがあるのだ。
ミクリエは走った。その先で死が待ち受けたというにもかかわらず……
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「…………うそ。」
その次の日、ミリーは泣きながらつぶやいていた。
「……ミリー……本当じゃ。ここにはもうミクリエは……」
バーズがうつむきながらそう答える。
「嘘、嘘よ!帰ってきてくれるって……言ったのに!」
「……ミリー……」
バーズは申し訳なさそうにミリーを見つめる。
「どうして……どうして……」
墓の前に残ったミリーは泣いていた。
ミリーは泣いていた。ずっと泣いていた。実の親に愛されることのないミリーはミクリエによって支えられていた。彼女の死は想像を絶するものであっただろう。
彼女は泣いた。その時、何もできなかった自分に。
彼女は泣いた。一日中……ずっと……
そして、強くなろうと決意したとき……
彼女の隣にあった本が光りだしたのだ……
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『だれになりたい?』
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それから十四年後、ミリーは今ここにいる。
令二の安全を知ったのかレイは泣いている。ルナは喜んでいる。
(……もう、絶対誰も死なせたりしないんだから……)
ミリーは決意した。令二が生きていることを信じて……