第四十六話 この世で最も価値のある物・・・それは金だ
「ファンタジーで金問題って……現実的と言えば現実的だが……」
令二はベッドの上で寝転がって、お金をさがす対策を考え、愚痴を呟いていた。
「いかがなさいますか?」
そんな令二に対してアークは冷静かつ適当な質問を投げかけてくる。
「……この大陸で金を稼ぐ方法を教えてくれ。」
「……検索……でました。方法は三つ存在します。
一つ目、仕事を見つけ、働くことです。
二つ目、魔物の部位を高額で店に売ることです。
三つ目、商売をすることです。」
「……二つ目が一番妥当なんだが……価格が一定じゃないよな。」
「その通りです。商人や店によって買い取る値段が異なります。」
「……じゃあ、商人だな。魔物の部位とかの材料は自分で手に入れるとして……
付加魔法の《フォトン・エンチャント》を使えば、武器も強いものが売れるし、料理とかなら俺が作るのは珍しくて美味いらしいからな……」
「……獣人族は人間族に比較すると、魔法を使うことができる者は極端に少ないと記録されております。」
「じゃあ、武器も料理も結構、儲かるな。材料とかはアイテムボックスに入るし、あとは販売する屋台とかを準備しないとな……」
「マップをご覧になりますか?」
「ああ、さっき通ったところに店があったかもしれないからな。」
令二はこうして商売をしながら転々と街をうつり、大陸を超えることにした。
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「それでは、レイジ様が使用した魔法について説明するわ。」
「「はい(でござる)。」」
ルナとレイは令二の部屋でミリーの話を聞いていた。
「まず、この魔法は空間魔法なの。これは容易に想像できると思うけど、ここからが問題。
レイジ様が使った魔法は召喚魔法の中で最も得意な魔法とされる、送還魔法よ。」
「送還忍法……でござるか……」
「私、本で読んだことがあります。召喚忍法の本来、呼び寄せる効力とは逆に発動者ががどこかに行く忍法ですよね。」
「ん?忍法じゃないけど……そうね、当たっているわ。」
「この送還魔法は一般の召喚魔法と同じで目的地に到着用の魔法陣を書いていないと、飛ぶ場所がでたらめになってしまうのよ。多分、あの爆発は事故だったんだろうけど、その反動でどっかに飛ばされてしまったのね。あ、でも大丈夫よ。この魔法陣を見る限りだと、死ぬような場所には転移してないと思うから。」
「それでは、レイジ殿は……」
「……それは安心しました。」
「生きている、それは間違いないわ。」
(……この《変身》のスキルの効力も消えてないしね……)
「……では、これから……どうしましょうか?」
「え?これからって?」
「そうでござる。もちろん拙者はレイジ殿を探すでござる。」
「ですけど、どこにいるかもわからないレイジさんを当てもなく探し回るわけにもいかないですし、一度、里に戻りましょうか?」
「ちょ、ちょっと……里って忍者の住んでいるところでしょう?私は入れないじゃない。」
「大丈夫でござる。父上には無理やりにでもいうことを聞かせるでござる。」
「今の姉上と私なら力ずくでできますね。」
レイがいつもよりも不気味な顔をしていた。
「なんだかものすごく物騒な話をしていると思うのだけど……いいの?」
「もちろんですよ。ミリーさんが来ないと意味ないじゃないですか。」
「そうでござる!」
「……あ、ありがとう……」
この時、ミリーはうれし涙を流していた。
ミリーは昔、孤独となった。
心の痛みは彼女をさらに孤独へと近づけたいた。
そんな彼女の心はもろい。
すぐに砕けてしまいそうに……
(ママ、私……今、幸せだよ……)
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エルフという種族は六大種族、『妖精族』に分類される。
他の種族と比べると、『魔人族』についで、高い魔力をその身に宿す。
そのため、妖精族は古来は風の象徴の種族として人間によりあがめられていた。
魔人族との戦争終結後、そのような信仰は途端になくなり、妖精族はそれぞれ別の辺境の島で静かに過ごしていた。
エルフ族であるミリーもまた、その大陸で静かに暮らしていたのだ……あの出来事が起きるまでは……
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