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第三十七話 演技がうまいのは良いことなのか?

 ミリーが令二に顔を向けると、おもむろに話しかけた。


「私の魔導書、メリルにはもう……時間が残されていないのよ……」


 令二は黙ってミリーの話を聞いていた。


「魔導書にもね……寿命があるのよ……その本の個性にもよるんだけど……」


「……寿命か……」

令二はアークを見てそうつぶやく。


「メリルにはね、決定的に魔力が足りないのよ……そのせいで寿命が短くて……本の持ち主である私が上げたいところだけど、魔導書同士じゃないと干渉できないみたいで……」


(まあ、《メガ・プロテクション》のMP無限が使われているからな……)


「それで俺の魔導書に目を付けたってことか……」


「……そうよ。」


「残念だが俺は渡すつもりはない。」


「……わかってる。でも……」


 ミリーはなんだかやるせない顔をしていた。

そんなミリーを見て、令二はこんなことを考えた。


(……アーク、魔導書の魔力の増幅はどうすればできる?)


(……かしこまりました……検索……でました。

アークに触れながら、異なる種類の魔導書に触れてください。)


(それだけでいいのか?)


(はい……)


「……わかった。あんたの魔導書、メリルって言ったか……俺の魔導書の能力で魔力を回復させてやる……」


「え……」

 令二の言葉にミリーが顔を上げる。


「ただし、条件がある。」


「……な、なに?」


「ちょっと、なに勝手に進めてるのよ。」

 メリルが令二の提案に口を挟んできた。


「……なんだ?」


「私はそんなこと望んでなんかいない。

ミリーに迷惑がかかるなら、その条件は飲めないわ。」


「……心配するな、危害は加えない。」


「それでも、ミリーが損することにかわりは……」


「やめて!」

 ミリーが突然大声を上げた。


「メリル、あなたのためなら私、どんなことでもするつもりよ……私。なんであなたは……」


「ミリー、あるじに迷惑をかけることなんて魔導書としてやってはいけないことなのよ……ねえ? 『基本魔術ソーサリー』……」


「……はい、アークにはマスターの言葉が絶対です。」

 そのメリルの質問にアークが答えた。


(……こいつらにも心があるんだな……)

 令二はそんなことを考えると、冷静になってメリルとミリーに言った。


「はあ……条件の内容を言う。納得しなければ断ってくれていい……」


 令二のその言葉にミリーは息をのんだ。


 ――――――――――――





 ――――――――――――


「あんたの魔法を全て見せてくれ。」


 ――――――――――――





 ――――――――――――


「………………はい?」


「………………」


 ミリーとメリルは令二の突き出した条件に驚愕していた。


「キャハハハハ!なにそれ!」


「……えっと、そんなんでいいの?」

 信じられないと言うばかりか、ミリーが令二に確かめる。


「……ああ、構わない。」


虹色魔法レインボー・マジックに収納するレベルの上級の魔法が見れるかもしれないしな……あと、こいつの魔法は俺の研究に役立ちそうだ……)


 令二の目的はあくまで魔法の研究である。人を殺さなければ手に入らず、殺して奪ってもすぐに死ぬ本…………それならば、所持者の魔法を全てこの目に刻み付けるほうがはるかに価値があると令二は思ったのだった。


「……それで、返事は?」


「も、もちろんよ!」


「私も、それなら構わないわ。」


「交渉成立だな…………いくぞ……」


 令二はメリルに触れた。すると……


 シュワァァァァァァァァ!


「きゃっ!」


「……すばらしい……」


 令二がメリルに触れると、とてつもない白い光がメリルを包み込む。

それを見た令二はその一言を放った。


「な、何が素晴らしいよ!あやうく吹き飛んでたじゃない!」


五月蠅うるさい、今俺は神秘に感動しているとことだ。邪魔するな。」


 しばらくして光の集束がなくなり、令二はメリルから手を離した。


「……すごいわね、生き返ったみたい。」

 メリルが生き返ったと感想を漏らしていが、


(そもそも生きているのか怪しいけどな……)

 令二がメリルをそんな風に考えている。


「あの、メリルを助けてくれて……あ、ありがとう……」


「交渉はまだ終わっていない。あんたの魔法、余すところなく全て見せてもらうぞ。」


「ぐ……人のお礼は素直に聞くもんよ。それに『あんた』じゃないわよ、『ミリー』よ。」


 ミリーが帆を赤らめていた。


(……たく、命を狙われた相手になぜ俺はこんなことをしたんだ?)


 ミリーのその態度に気付かない令二はなぜか無性に自分に腹が立っていた。


 ――――――――――――


「おかえり~。」

 令二は宿に帰ってきた。

するとルナが令二の隣にいるミリーに気づいたようで……


「レ、レイジ殿……その……図書館に行っていたのでは……」


「ああ、こいつか……しばらくの間こいつを俺の部屋で雇うことになった。まあ気にするな。」


「レ、レイジ殿が……私以外に……」


(あれ?ルナの奴、また一人称が……)


「はじめまして、私はミリーといいます。本日からレイジ様に雇われ、しばらく厄介になることになりました……」


(おし、ナイス演技だ。)


 ミリーは実は今、使用人と言う設定で令二についてきていることになっている。

魔導書の話をするとまた面倒くさくなるからだ。


「レイジ様には命を救っていただき、とても感謝しています。身の回りのお世話、掃除や洗濯、料理に買い物、何でもお任せください。」


(ん?演技がやりすぎてないか?)


「…………う、うわ~ん!レイジ、レイジ殿のバカ~!」


 ルナが慌てて部屋から飛び出していった。


「やべえ、泣かせちまった……」


「令二様、女の子は泣かせてはいけませんよ。」


「俺の前ではその口をやめろ、気色悪い。」


 令二はその後、ルナをなぐさめるのに一時間ほどかかったのだった。

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