第三十四話 地獄に行ってきます……
令二は悪夢に追われていた。
最悪は何の前兆もなく引きおこるものだ……
それが大震災、はたまた大雪崩、はたまたハリケーン、
それらは容赦なく人々を悪夢に連れて行った。
まるで死神のように……
そして今、令二は死にかけていた……
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「グハッ……ハァハァ……もう俺はだめだ……レイ。」
「そんな、レイジさん……まだ話したいことが沢山あるんです!死なないでください!」
「……ハァハァ……グゥ……レイ、《ハイヒール》をかけてくれないか……」
「わ、わかりました。
……其は人、全てを洗い流す聖なる者なり……」
レイは令二に《ハイヒール》をかけた。
さかのぼること3時間前……
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「ただいま~」
令二は図書館から帰宅した。
「あ、おかえりでござる。レイジ殿は調べ物は終わったでござるか?」
「ああ、まだ見つからないから明日も探してみる。時間は結構あるな……」
「そうでござるか。あっ、拙者、スープというものをレシピ通りに作ってみたでござる!」
「え!……作ったのか?……また、どうして?」
「主君のために……ではなく二人のために……いやいや、レイジ殿のために作ったでござる。」
令二はルナがテレて説明していることには目もくれず、ひたすらこの状況から脱出する策を考えていた。
(やっぱ、もう一度図書館に行ってくる……じゃダメだな……レイが心配だから行ってくる……ダメだ。ルナなら一緒についてくる……時間稼ぎにしかならない……)
「どうしたでござるか、レイジ殿?」
「ん、いや、な、なんでもないぞ。」
令二の声は明らかに動揺していた。
「………………いいのでござる。レイにも言われたでござる……どうやら拙者、料理の才能がないようなのでござる……拙者のような若輩者がレイジ殿に料理を作るなんて……」
「いや、そういうわけじゃなくてだな……」
落ち込むルナを何とか慰めようとする令二だが……
「……お気になさらず。私なんてどうせ……」
(『こどもルナ』モードだ~!早く何とかしないと泣いちまう!)
「いや、俺お腹がいっぱいなんだ。でも、ルナがせっかく作ってくれたから、夕食の後にでもいただくよ……」
(完璧!これならバレずに処理できる。ルナには申し訳ないが、
以前、ステータスを確認したら『毒調合』のスキルが現れていたからな……
もし、それが料理にも反映していたら……ゴクリ。)
「あ、その点は心配ござらん!明日の分までいっぱい作っているでござる!」
(……俺……終わった……)
これが死を直感した令二の心の嘆きだった……
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「……あの時は私の分のスープまで食べて……グス、無茶しすぎですよ……」
そこには令二の亡骸(死んでいない)を見て泣いているレイがいた。
「ああ、さすがに今回ばかりは死ぬかと思った……ルナはどうした?」
「どうやら姉上は自分の料理を食べたようで……『とてもおいしい』と言っておりました……」
「……まじか……」
「……はい……」
結局、令二は一命を取り留めた。
しかしその時、レイはあまりの出来事だったせいか、
令二にミリーのことを話し忘れていたのだった……