第二十七話 「尾行」っていうとカッコイイけど、「ストーカー」っていうとカッコわるい
令二たちは馬車に乗りおよそ10時間……ようやく目的地の《ワールヴ》に到着した。
「……でかいなこりゃ。さすが元帝国だ。」
「ふっふっふ、存分に買い物をするでござる。」
街で服をはじめて買って以来、
ルナは食べ物だけでなく一般の服に興味を持ったようだ。
ファッションに詳しい令二だが、こちらの世界のファッションと元の世界のとでは流行が異なる。
(俺もそろそろこの世界の流行にそらないとな……)
「じゃあ最初は服屋に行くか……
武器とか防具を買いたいなら、ついでに買いに行こう。」
「じゃあ、荷物をお願いしますね。
こういう時は男の人が持つと本に書いてありました。」
「お、おう。そうなのか……」
(レイ……俺も服を買いたいのだが……)
そう考える令二だったが、しぶしぶ二人についていき、買い物に付き合った。
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「ふ~ふんふふ~ん!」
ルナがいつもにもなく喜んでスキップしてる。
「ごきげんだな……ルナ。」
「レイジさんが朝、新しく買った服をあんなに褒めたからですよ……まったく……」
(まったくレイジさんは、わかっててやっていないのが余計に腹が立ちます……)
「ところで火魔法の調子はどうだ?」
「ああ、はい。順調ですよ。最初のころよりはコントロールできるようになりました。これも姉上とレイジさんのおかげです。」
「いやいや、俺も火魔法の時はレイに習ったし、おあいこだよ……」
「レイジ殿、こっちの店にも入るでござる!」
「ああ、わかったよ、すぐ行く。」
そうして三人が次の店にはいいて行ったところ、路地の裏に人影があった……
「あれが……レイジ・アマノね……」
その人影は令二たちを尾行している様子だった。
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三人が夜、宿で話し合いを終えると……
「ふー、じゃあ寝るとするか……」
「……レイジ殿に荷物を持っていただくなんて、面目ないでござる……」
ルナは服を買うことを楽しんだせいか、
令二が荷物を持っていたことに気づいていなかったようだ。
「二人とも楽しんでくれたみたいでよかった。俺の都合でここまで来てるんだし……」
「いまさら何言ってるんですか……姉上も私もレイジさんに勝手についてきてるんですよ。気にしないでください。レイジさんが行くなら私たちはついていきます。」
「……そういえばなんでルナは俺について来たんだ?レイの場合はルナについて来たからわかるけど、いくら里の恩人だからって……」
「そ、それは聞かない約束でござる……」
(『レイジ殿と一緒にいたい』なんて言えないでござる……『拙者の主になってください』とも恥ずかしくて言えないでござる……それとも、『あの時のレイジ殿はかっこよかった』でござろうか……ダ、ダメでござる……)
ルナは顔を赤くしていた。
「もう、レイジさんったら。そんなの……ムグ……」
「い、言っちゃダメ!」
(あ、久しぶりに語尾にござるを付けない『こどもルナ』になったな……)
令二は慌てるルナをそんな風に冷静にみているのだった……
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「さて、アーク、ステータスを見せてくれ。」
「かしこまりました、マスター。」
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《魔導書名称》 アーク
《所持者》 レイジ・アマノ
《魔導書Lv》 Lv4
《追加ステータス》 虹色魔法Lv3
念話 Lv2
マップ自動インストール(4件)
思念体 Lv1
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「よし、一件増えてるな。
この次のページに魔力を込めれば、マップが表示されるんだな?」
「はい。」
「よし、ならいい。この都市の情報があるならインストールしといてくれ。」
「……検索……でました。インストール開始……完了しました。」
「じゃ、おやすみ。」
「おやすみなさいませ、マスター。」
《マップ自動インストール》とはその名の通り一度来た街や村、里などのマップの情報を自動でインストールする機能のことだ。いくら検索可能なアークでもその場所の主な建物以外はわからない。最初の街のようにいちいち手動でインストールしなくていいのは楽なのだ。
(まあ、ただ便利なだけなんだけど……情報収集したものを全て記録してくれるんだもんな。便利なだけだと言えばそれだけだけど、地味に使えるな。)
(……いい調子だ。明日は図書館に行くし、早めに寝よう……)
令二の帝都での旅はまだまだ続く。