第十九話 これはデートなのだろうか……いや、そうじゃない
何も知らないギルドマスターを哀れに思っていた令二たちは街に出かけていた。
「レイジ殿、レイジ殿、あれはなんでござるか!」
「あれは屋台ってやつだよ。
ああやって場所を変えて色々な食べ物を売っているんだ。」
いつもはアークが解説しているのだが、街中でアークをしゃべらせるわけにもいかないので、令二がしぶしぶルナの質問攻めに答えていた……
「あれ、買ってきてもいいですか?」
「ん、ああいいよ。金の計算はちゃんとしろよ、だまされないようにな。」
令二がずれた注意をしていたが、気にせずレイは屋台に行った。
「あ、レイジ殿、あれはなんでござるか?」
「ああ、あれは……」
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(こんなに平和なときもあるんだな……魔導書のこととかあのかわいそうな女のことは今は忘れよう。こんな時だからこそ元気に遊ばないとな……ルナもレイも楽しんでるみたいだし……)
二人の後姿を見てそう思った令二だった。
「レイジ殿!こっちでござる!」
「レイジさん、早くしないと食べ放題できなくなりますよ!」
「ああ。今行く!」
(あれ?これってデートなのか?……だが、愛している人同士が二人きり……ではない。愛しているわけでもないし、第一あんなに歳の離れている奴らだかな……歳の差が……)
失礼かつズレている考えを巡らせながら令二は二人のもとについていくのだった。
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「ここか?」
「はい、ここの料理はおいしくて、この時間は食べ放題らしいんです。屋台の方がおっしゃっていました。」
「あのおっちゃんか、意外といい奴だったな。買ったおまけに《バイタル・ポーション》貰っちまったし……」
(疑って悪かったな、おっちゃん。屋台のおっちゃんは良いやつしかいないことがよくわかったよ。)
「レイジ殿、お腹がすいたでござる!早く入るでござる!」
こうして三人は店に入って行った。
カラン、カラン!
「へい、いらっしゃい!」
「三人だ。席は空いているか?」
「ああ、今ちょうどあいたところだ。あそこに座ってくれ。」
「……わかった」
令二がそう答えて、三人は席に座った。
「あ、ギルドマスターがいる。」
「意外ですね、あの固そうなお方がこんな店に入るなんて……」
「格好は普段着だな……めちゃくちゃ食べてるぞ。」
「もきゅもきゅ……」
そこにはおいしそうに食事をとっているリーデルがいた。
(なんだあの量……まさか、全部食べてるのか?)
リーデルの食べている横に積み上げられている皿を見て令二はそう思う。
「うまそうだな、俺たちも早く食べよう。」
「はい!」
そうして食べようとするとルナががっつくようにご飯を食べている。
(そんなに食べてるとふとるぞ・・・とは言えないよな。)
昨日のルナの反応を思い出して、
あまりルナを刺激しないほうがいいと思った令二だった。