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第百九話 最後の最後で一発逆転できるゲームはあまりない。

 この世界はまるで遊戯である。


 単なる遊び。駒が誰かの思惑通りに運び、誰かがそれに鑑賞したり……何者も何かに支えられ、支配されなければ生きては行けないのだろう。


 それを人の強さ、弱さ……言い分は人によりけりだろうが、どちらであっても人が何かに支えられなければ生きて行けないという事実は変わらない。


 かつての俺もそうだった。他人に頼り、組織の、仲間の一人となっておのれの正義とやらを振りかざし、おのれにとっての悪を完全に打ち滅ぼした。


 しかし、帰ってきた結果、報酬、褒美は何だっただろうか?


 それは達成感でもなければ絶望感でもない。


「それはただの無だ。何もない。そう、何も……」


「我が主、時間だ。」


「わかった。今、行こう。レイジ・アマノ……貴様はかつての俺によく似ている。くれぐれもどちらにも染まらないことを願っている。」


 そう呟くと、黒騎士は姿を消した。 


 ――――――――――――


「はああ!!」


 キイイイン!


 北の防壁でのリーデルとデュークとの戦いはいまだ続いている。

結晶によって囲まれた空間でリーデルは一人、剣を振りまわしながら結晶の壁を破壊していった。


「さすがは《戦火の姫》と呼ばれるほどの剣士、あなたほどの人間がなぜ聖騎士の地位に所属していないかは不思議ですが、まあいいでしょう。外のいくさもいずれ終わります。」


「そう簡単に王国の戦士がやられる者か、はああ!!」


 ギイイイン!!


「そうですか? ですがは現魔王でおられるルト様が外にいて私があなたを足止めしているこの状況……あまりよろしい状況ではないのでは?」


「黙れ!」


 キイイイイン!!


「あと半刻もあればその檻はあなたによって破られるでしょう。しかしその時に外はどうなっているやら、たまらなく心配でしょう?」


 壁全体から聞こえるデュークの声に反応せず、リーデルはひたすら剣を振り続ける。しかし壁が分厚いせいかその先が全くと言っていいほど見えてこない。


「くっ、あれを使うしかないのか……」


 ――――――――――――


「レイジ殿~~~~~~~~~!」


「待て、ルナ落ち着け……グハッ!」


 ルナが令二に向かってヘッドスライディングをした。流石に殴られたり抱き着かれるぐらいは覚悟していた令二だったが、その威力と速度はあまりにも計算外であったため、それをかわすには至らなかった。


「レイジ様! 大丈夫ですか?」


「ご主人様ー、大丈夫ー?」


「だ、大丈夫じゃない……ムグ。」


「レイジ殿~! じんばいしたでござる~!」


 ルナは子供の用に盛大に泣いている。


「レイジさん……よくご無事で……グスッ。」


「まったく、心配させて……あんたのためにずっと探していたんだから……」


「レ、レイジ様! 大丈夫ですか!」


 令二の周りがうるさい。というよりも今、令二は危機的状況にあった。

それは、息ができない……つまりは呼吸が困難だ。


「ル……ナ……わかったからもう放してくれ……」


 必死にルナに言うが、目の前の彼女はそれを聞いておらず、そのまま抱き着いたままである。

このままだと本当に死んでしまう。そう思った令二はそのまま立ち上がった。


「だあああ!」


「わっ! レイジ殿が怒ったでござる!」


「……はあ、はあ、はあ……死ぬかと思った。って、ぐへっ!」


 今度はレイが抱き着いて来た。さっきよりは威力がないが、それでも先ほどまで生死をさまよっていた令二にはかなり堪えた。


「レイ……」


「レイジさん……お久しぶりです。」


「……ああ、久しぶり。」


 レイはルナほど泣いていなかった。彼女は顔を上げると、嬉しそうな顔をする。


「さて……皆、積もる話はあると思うが、今はそんな暇はないんだ。一刻も早く、戦っているとことに行かないと……アーク、あとはどこだ?」


「検索……でました。ここより北西に当たる防壁です。ここがどの場所よりも戦況が悪化していると思われます。」


「皆、聞いたか。まずはこの乗り物に乗ってくれ。話はそれからだ。」


 令二がそう言うと、彼女らはドラカーに乗り、そのまま北の防壁へと向かった。

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