第百八話 バトルシーンって何度も見ていると見飽きてしまうよね。
「どっちだ、アーク。」
「次の角を右に回り、前方、一七キロ九百二メートルです、マスター。」
「OK!」
今、令二は東の防壁にドラカーに乗って向かっていた。
「今飛んでたのは間違いなくミリーだ。今ならまだ間に合う!」
「ご主人様、乱暴ー。」
「はわわわ怖いですー!」
三人がドラカーで移動している速度はおよそ時速160キロ……計算してもまだ五分以上はかかる。元の世界では運転免許を取っていないが今はそんなことを言っていられない。
「王国は無駄に広いからな……一本道があるだけましか……待ってろよ。」
令二は独り言をつぶ着ながらも、ミリーの言ったその場所へ向かうのだった。
――――――――――――
「間に合ったみたいね。」
「ああー、何が間に合っただ? 一人二人増えてもやることは変わらねえよ!《インフィニティ・ファイア》!」
グリードはミリーがあらわれるとすかさず魔法を発動し、それを彼女に向かって放った。
「ミリー!」
「ええ。《元素分解》!!」
シュワアアアアア!
ミリーが合図をすると、メリルを魔法の方向に突き出す。そして攻撃が当たった瞬間、先ほどグリードが放ったマグマの塊は完全に消失した。
「何!? ならキマイラ、お前が……」
「グオオオオオオオオ!」
「ど、どうしたキマイラ!?」
キマイラが突然とその体をうずくめると、グリードがそれに驚く。
「やっとかかったでござるな……」
「てめえ、これはどういうことだ!」
「さっきから油断して気付いてなかったみたいですけど、地面に突き刺さったその手裏剣……実はただの手裏剣じゃないんですよね。」
レイが先ほどの攻撃に使用した手裏剣へとを指さした。それらは先ほどの爆発にも耐えきり、そのまま地面に突き刺さっている。
「それには特殊な糸が張り巡らせているでござる。里長殿によると……確かまりょく? に反応してきゅうげきにとか……よくわからないでござるが。」
「まあ親方様の道具はともかく、これで完全に動きが封じられましたよ。ちなみにその糸は鋼でも切れるっほど頑丈ですから。後、魔力に反応して吸収する糸ですので、むやみに魔法を使うと……説明しなくてもわかりますよね。」
「く、くそが!」
「レイちゃんがようやく魔法って言うようになって私は嬉しいわ。あの変な子供のおかげとは思いたくないけどね。」
「ところでさっきのアレは何ですか? 私は完全にあの攻撃がミリーさんに当たったと思いましたけど……」
「ああ、あれはね……」
「おーよちよち、かわいい犬でござるな。羽が生えている犬なんて珍しいでござる。今度、忍犬になるように里長に相談してみるでござる。このかわいい犬、飼ってもいいでござるか?」
「「ぜったいダメ(です)!!」」
「はあ、面倒くせえな。寝るか……」
三人の話に面倒くさがりのグリードも付いて行けないようだ。
「寝てしまったでござる。」
「しばらくここから動けないと思いますし、ここで縛っておきましょうか?」
「まあ、向こうの敵は私一人で撃退したから大丈夫だと思うけど。」
「では街の様子を見ましょう。住民の非難を……」
「どうかしたのレイちゃん? あ……」
二人の視線の先にルナも続けて目を向ける。そして、ルナのみならず、彼女ら三人ともがそこで固まった。
まるで何年も会っていないかの苦しさ……悲しさ……その人物と再び会うためだけに、これまで三人で冒険してきた。
その人物が目の前に……
「えっと、久しぶり……だな。」
いつもと変わらず、どことない顔でその人物は言った。