第百四話 黒騎士って中二病心をくすぐるな~。
令二は睨み付ける……その視線はフリードと名乗るものに向いていた。
「……レイジ・アマノ……か……その名、しかと記憶した。では、始めるとしよう。」
黒騎士が剣を構える。
黒騎士、フリードはどういうわけか、令二の魔法を打ち消すことができるようだ。先ほどの戦闘でそれはわかる……次に攻撃を受けたら、本当に《メガ・プロテクション》を突き破り貫くだろうと令二にはすぐにわかった。
(……あの剣に秘密があるのか……)
令二は《鑑定》のスキルを使用してフリードの剣を確認する。
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《魔剣 デルテロイ》
魔法を切り裂く剣。所持者の魔力によりその能力は変化する。
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(……これは肉弾戦でしか勝ち目がなさそうだな……)
令二はフリードの剣を見てそう思う。
しかし、《鑑定》のスキルでフリード自身のステータスを確認できなかった。それはつまり、フリードが令二のレベルを上回っているということなのだ。肉体を魔法で強化できるならまだしも、それができないのならば到底、肉弾戦でも勝てはしないだろう。
「……となるとこれだな…………其は焔、剣を守護する者なり……精霊の加護を纏いて敵を殲滅せよ……」
令二が呪文を唱えると《クリムゾン・セイバー》の刀身が炎に包まれる……以前、獣人大陸の《レウスの塔》で一度だけ使った技……魔法の錬成である。
「……ほう……なかなか興味深い魔法だな……行くぞ!!」
「……はああ!!!」
令二とフリードは直進に走る。
ギイイイイイイン!!
正面からの攻撃に二人はまったく臆さずに剣を振り下ろす。そして二人の剣圧により、空気が激しく振動する。フリードはその衝撃が収まった後、驚いたような声を漏らす。
「……なぜ……その炎は消えない……」
「さあ……なぜだろうな!」
キイイイン!!
令二は鍔迫り合いとなった剣を弾き、後ろに飛ぶ。
(……どうやら俺の予想は正しかったようだな……)
令二は手に握りしめた剣を見る。
そこにはたしかに魔法がかけられている……しかし、この魔法は令二がスキル《錬成》により新しく生み出した魔法……どうやらフリードの剣では打ち消せない何かがあっても不思議ではない。
「……面白い……人間にここまでの強者がいるとは……驚きと喜びが押し寄せてくるこの高揚感……久しぶりだな……」
フリードは喜んでいるのだろうか…その兜のせいでその顔は決して確認することができない。
「……お前らの目的……いや、お前の目的は何だ?」
令二はフリードの仕草が気になり、その様子を見る。
「俺の目的か……俺はただ魔王軍の一人として……」
「……本当にそうか?」
「……何が言いたいのだ?」
「まだわからないのか……」
「………………」
フリードが黙る……やはり令二の考えは正しいのだろう……
「……お前は……魔導書使いだろ?」
令二は驚きの一言を口にした。