第百一話 最終戦争! ちょっとカッコイイかも……
令二は今、街を走っていた。なるべくならリーデルと一緒に戦いたかったが、今はそうも言っていられない。とにかく先ほどの爆発音のあった場所へ向かわなくてはいけない。
「二人ともしっかり摑まってろよ。」
「はーい。」
「レイジ様、私たちを担いで本当に大丈夫でしょうか?いくらなんでも……」
「大丈夫……魔法をかけて腕力も上げているから重くないし、脚力を上げて速度も申し分ない。」
「お、重いんですか……」
テートとチユを担いで令二は走っている。実際にそれほど重くなかったが、重いと言ってしまった。テートは女の子なので少しショックを受けているようだ。
(……悪いことしたか? まあ、今は急ぐか……)
令二はそんなことを思うと、すぐに魔人たちのもとへ急ぐのであった。
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「姉上、あちらではすでに戦闘が行われているようです。」
東の防壁付近ではルナとレイが話している。東防壁には警備は置かれていないが、彼女らは魔人たちの襲撃を察知し、撃退している最中だ。
「……ミリーは来ないでござるな……街の雰囲気も変わって人が一人いないでござる。」
「……魔人が突然攻めてくるなんて……何かあったんでしょうか?」
「……そろそろ第二軍の到着でござる。」
ルナたちは空を見上げる。そこには数えきれないほどの魔人が飛んでくる。
そして、その頭と思われる魔物が先頭を切って着陸した。彼の名はグリード・ヴォック、四天王の一人である。
「へへ……見たところあんたら以外はいないみたいだな……こいつらはあんたらがヤったってことでいいんだよな?」
「……レイ……こいつは……」
「ええ……わかっています、姉上。こいつは別格ですね。」
「ゴタゴタ言ってねーでおっぱじめるぜ! 《エクスプロージョン》!!」
「「なっ!?」」
グリードは詠唱をせずに魔法を唱える。ルナとレイの二人は完全に不意を突かれて攻撃をくらう。
ドゴオオオオン!
「……無詠唱とは驚きましたね……姉上、大丈夫ですか?」
「……問題ないでござる……其は水、汝は敵を打つ球なり……」
ルナの発動した《アクア・スプラッシュ》がグリードに向かう。
「遅えよ! 《フレイム・ウォール》!!」
グリードの魔法で炎の盾が彼の目の前に現れる。その盾によって、ルナの魔法を完全に打ち消してしまう。
「隙ありです!」
キイイイン!!
レイはグリードが魔法を発動する間、その懐に潜り込み短剣で攻撃する。しかし、グリードはその硬質な体を使い背中で攻撃を受け止める。
「見え見えなんだよ!」
「キャア!!」
レイはそのままグリードに吹き飛ばされる。
「大丈夫でござるか、レイ!」
「人の心配している場合かよ!」
ルナがレイの方向を見ると、すぐさまグリードがその隙を狙い、攻撃する。
「ぐ……」
「……あー、面倒くせえなあ……こんな仕事本当は面倒くさいからゴメンなんだがな……魔王の命令となっちゃ、仕方ねえんだよな……人間なんて所詮はこんなもの……弱いったらありゃしない。」
グリードが吐き捨てる。そしてその後ろからは魔物の軍勢が遅れて到着してきた。
「ギギギ……グリードサマ……タダイマ、トウチャク……イタシマシタ……」
「んー、じゃああとは適当にやっておいてくれ……俺は少しやることあるからさー……」
「ギギ……マズハコイツラ……コロス……」
「ギギ…………」
「……まだです。」
魔人たちが来たのを確認し、レイは自身に《ヒール》を発動して立ち上がる。レイが立ち上がると、ルナも続いて立ち上がった。
「……く……速いでござるな……忍術での戦闘は不向きでござるな。」
「……はい、二手に分かれて攻撃を……」
「なんだー? まだ諦めていないのか……面倒くさいが、他のやつらじゃ役不足だしな……いいよ、戦ってやるよ。」
グリードがそう言って構える。
東の防壁、ルナとレイ、グリード率いる魔軍との戦いが始まった。