第百話 うーん、襲撃犯ってなんで堂々と正面から来るんだろう?
ゼノ・ギスタージュは防壁へと向かっていた。
《ブリュッセ》には四方に防壁が張り巡らされている。魔軍の四天王のひとり、ゼノ・ギスタージュは西、グリード・ヴォックは東、黒騎士フリードは南、デューク・パラディオスと魔王ルトは北へと向かっている。
魔人大陸には様々な階級が存在するが、中でも魔王を側近で守護する者たちは四天王と呼ばれている。四天王になるものは例外なく魔力は高い。
「む……炎の玉か……小賢しい、貴様ら着地しろ!」
ゼノとその魔軍が空を飛んでいると、前方からミリーの放つ《ファイアボール》が飛んでくる。しかし、ゼノと魔軍はその攻撃をかわし、防壁へ接近する。《ファイアボール》をかわすと、ゼノは方向転換をし、防壁の前に着陸した。
「……こんな奴らに時間を取られるとは……」
「ま、魔人だ!皆の者、囲め!」
兵士たちはゼノを取り囲み闘争心をそぐつもりでいる。しかあし、ゼノはそれに一切動揺しない。
「貴様ら人間には威圧で充分……」
ブウウウウン!
「「グウウ……」」
兵士たちがまるで自らの重みに耐えきれない風に倒れこむ。おそらくゼノの威圧により動けないのだろう。
「あいつ、ヤバいわね……」
「ミリー、一旦ここは弾きましょう。こんなに数がいたら勝てっこないわよ。」
「いいえ、ここを突破されたらまだ避難している人たちが襲われてしまうもの……私がここで食い止めないと……」
「……けど……」
「メリル……お願い……」
ミリーは真剣な目で本に語り掛ける。メリルにそれが見えるのか、メリルはため息をつく。
「……はあ、わかったわ……こうなったらミリーは聞かないものね……いいわよ。ただし、やるからには命を大事に戦うこと……いい?」
「わかったわ。」
ミリーはそう言うと、防壁の下に集まる魔人たちをにらみつけた。
ミリーとゼノ率いる魔軍との戦いが始まった。
――――――――――――
令二は二人に絵本を読んだ後、二人と朝食をとっていた。
「どうですか、私の料理?」
「テート、おいしいー」
「うん、美味いぞこれ。」
「あ、ありがとうございます!」
今日はテートが料理をふるまっている。しかし、テートの料理はおいしいのだが見た目が悪い。変な軟体動物の足や魚の頭が入っている……が、美味い。彼女は嬉しそうに尻尾を振っている。
(ルナの料理よりは……見た目はましだが……)
令二がそんなことを思っていると、それは唐突にやってきた。
ドガアアアアン!!
朝食中に爆発音が聞こえてきた。
「な、なんですか!」
テートが驚いて辺りを見渡す。
「……リーデルが出かけて行ったのにはやっぱり何かあるみたいだな……」
一方、令二は予想していたようで冷静に何やらつぶやいている。この爆音はとても遠くから聞こえてきたものだ……しかし、部屋中に響き渡るその音は尋常ではない威力であることを物語っている。
「……二人とも、少し用事ができた、行ってくる。街の人が避難しているようだったらその中に混ざってどこか安全なところに……」
「レイジ様!」
「ご主人様!」
令二が二人に避難するよう、言おうとすると二人が令二に怒鳴りつける。どうやら、相当怒っているようだ。
「……私たちはレイジ様にどこまでも付いて行く覚悟です……ですから、またどこかにいかないでください!」
「チユも同じ……」
(……何やってるんだ……俺は。前にこんなこと言って二人を心配かけさせて……それは俺のこと、心配するよな……心配してくれるんだよな、こいつら。)
令二はふと以前のことを思い出す。二人とも本当に心配していたのだろう……テートなんかは泣きじゃくっていたのをリーデルから聞いた。令二はそれを反省しているつもりだった。
「……わかったよ……ただし、ついてくる代わりに俺からは決して離れないこと。できるな?」
「「は(-)い」」
「よし、行くぞ。」
二人は怒った顔を笑顔に変えて嬉しそうに返事をした。
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タイトルは
『伝説の金貨魔法~異世界はお金でできている~』
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