対処法
俺は真っ白なノートがどうやったら黒くなるか考えていた。今から努力するなどという考えはない。燃やすか。手っ取り早く黒くなるぞ。ノートの原型はとどめられないかもしれないが。
くそ、いっその事サボるか。
いつ間にかHRが始まっていて、担任が楽しそうに朝のお喋りに興じていた。面白い話が多くてその朝のお喋りは俺の楽しみでもあったのだが、今はそんな余裕はない。
うつむいて、必死にノートをにらんだ。黒くなれ!
「おい、杉浦?顔色悪いぞ?」
「えっ?」
俺が?そりゃ焦ってるし顔色も悪くなるってもんだ。
あ、これサボれるパターンじゃねえか⁉︎
答えられなかったらその時間立たしたままにするという恐怖の物理から逃げれる‼︎
「あー、朝微熱だったんですけど、たいしたことなかったから登校したんですよ」
率先して保健室行きたいなど言ってはいけない。向こうが勧めるのを待つのだ。
「大丈夫か?一応保健室行ったほうがいいんじゃ無いのか?」
「そんなたいしたもんじゃないと思いますが、HR終わったら行ってみますね」
「そうしとけ。先生には俺から言っといてやるから」
よし!成功だ!さよならノート!
俺としたことが少し熱くなっちまった。
「祥平••••••絶対サボりだろお前!」
HRが終わり、そそくさと教室を出ようとした俺を幸雄が止めた。めんどくせえ。
「だったらなんだ。どけ」
「先生に言いつけてやる!」
「ガキかよ。お前」
小学生が言いそうなセリフだ。
「どーしても行きたいって言うなら!」
そこで周りを伺うような動作をして、声を潜めてこう言った。
「眠り姫が本当にいるかみてきてよ」
ああ、こいつこれ目的で近づいてきたな。
「まあ、機会があったらな」
めんどくせえからさっさと切り上げて保健室へ向かう。なんか大声でお礼言ってる男がいるが、無視。
祥平は真面目なので予習してないで授業受けるなんて出来ません。ただし、サボるのには躊躇ありません。