やっと、泣けたよ。
私には何もなかった。
世の中はただ流れて行き。
逆らうことなく私は流される。
なぜみんな、あんなに楽しそうにできるのだろう。
あんなに感情をいっぱい表に出して。
良い歳した大人が、子どもみたいにどんちゃん騒ぎ。
そんなみんなのことが、大学卒業を迎えた今でもわからない。
そんな、不完全に完全な、私のお話。
サークルのみんなで打ち上げをしに行くと言う。
行きたくないなぁ。
みんなはそれで楽しいのだろう。だけど、私は楽しくないのだ。
けど、ここで断るとみんなは苦い顔をして、反抗的な視線を私に向けるのだろう。
嫌だなぁ。まるで、私がいじめられっこみたいじゃないか。
仕方なく私は、一緒に行くことにした。
居酒屋にやってきた。
みんなで、あんなことこんなこと、楽しかったねーなどという昔話に花を咲かせている。
私はちっとも楽しくない。
無表情に、無感情に。
ただ時間にゆられて。
二時間、私はただその場にいるだけだった。
ボーッとして、たまに飲んだり食べたりしていたけれど。
そんな私に話しかける人もいなかった。ならなんで呼んだのよ、と、文句の一つでも言ってやれば良かったかな?まあそれは、次の機会に。
次の機会なんて、あるのかわからないけれど。
みんなと別れて帰路に着く。
何もない一日だったなぁ。
なんか、なんにも感じない。
感情が、表に出ない。
そんな私は、おかしいのかな?
みんなみたいに、もっと、笑ったり、泣いたり、した方が良いのかな?
その方が上手くやって行けるのかな?
今のままでも充分なのに、変わる必要はあるのかな?
家に着いた。アパートに一人暮らしだから、誰もいない。
疲れたなぁ。おやすみー……。
変な夢を見た。
私が、車に轢かれて死んじゃう夢。
縁起悪いなぁ。
私は、感情がとても静かな人間だった。
表に出るほど大きく揺れることもなく、何度も勘違いされることもあった。
そんな私は、泣くことはなかった。
みんなは泣いていた。
ああ、私はみんなに泣いてもらえるような人になってたんだ。
嬉しいなぁ、嬉しいなぁ。
「──俺、『 』が好きだった」
どうしたの?急に。
「いつも大人しいって言われてて、実際その通りで、でも、本当は優しくて、思いやり深くて、そんな『 』のことが好きだった」
ありがとう。嬉しいよ。
「言えて良かった……よ。本当なら、この言葉で、『 』を泣かせたかったなぁ。泣いたとこ、見たことなかったから」
……見てくれてたんだ。もう、それだけで、充分だよ。私は、満足。
「それじゃあ、また……来るよ」
そう言い残し、私を愛してると言ってくれた人は、大粒の涙を流しながら去って行った。
私には、何もない。
だけど、何もない私でも、誰かの心に、何かを残すことはできたみたい。
そのことが嬉しくて。
その続きが見れないことが悲しくて。
私は────
────大粒の涙で、自分の墓を濡らした。
なんとなーくで書いてしまった短編。
多分、このままじゃまったくわからないと思うので解説入ります。
まず、『私』は、打ち上げの前日に交通事故で亡くなりました。
そのことに気付かず、みんなと打ち上げに行った『私』。だけど、すでに死んでいるので、誰にも相手にされません。
アパートにつき、就寝。その時に見た夢は、『私』が死んだ時のもの。
場面が切り替わり、『私』の墓の前で、『私』が好きだったという男の独り言。
すでに葬式は終わり、『私』自身も死んだことを理解した後です。
あとはわかるでしょうか。
では、1200文字程度の短編にお付き合いいただきありがとうございました。




