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やっと、泣けたよ。

作者: SIM
掲載日:2014/03/30

 私には何もなかった。


 世の中はただ流れて行き。

 逆らうことなく私は流される。


 なぜみんな、あんなに楽しそうにできるのだろう。

 あんなに感情をいっぱい表に出して。

 良い歳した大人が、子どもみたいにどんちゃん騒ぎ。


 そんなみんなのことが、大学卒業を迎えた今でもわからない。


 そんな、不完全に完全な、私のお話。



 サークルのみんなで打ち上げをしに行くと言う。

 行きたくないなぁ。

 みんなはそれで楽しいのだろう。だけど、私は楽しくないのだ。

 けど、ここで断るとみんなは苦い顔をして、反抗的な視線を私に向けるのだろう。

 嫌だなぁ。まるで、私がいじめられっこみたいじゃないか。

 仕方なく私は、一緒に行くことにした。



 居酒屋にやってきた。

 みんなで、あんなことこんなこと、楽しかったねーなどという昔話に花を咲かせている。

 私はちっとも楽しくない。

 無表情に、無感情に。

 ただ時間にゆられて。



 二時間、私はただその場にいるだけだった。

 ボーッとして、たまに飲んだり食べたりしていたけれど。

 そんな私に話しかける人もいなかった。ならなんで呼んだのよ、と、文句の一つでも言ってやれば良かったかな?まあそれは、次の機会に。

 次の機会なんて、あるのかわからないけれど。



 みんなと別れて帰路に着く。

 何もない一日だったなぁ。

 なんか、なんにも感じない。

 感情が、表に出ない。

 そんな私は、おかしいのかな?

 みんなみたいに、もっと、笑ったり、泣いたり、した方が良いのかな?

 その方が上手くやって行けるのかな?

 今のままでも充分なのに、変わる必要はあるのかな?



 家に着いた。アパートに一人暮らしだから、誰もいない。

 疲れたなぁ。おやすみー……。



 変な夢を見た。

 私が、車に轢かれて死んじゃう夢。

 縁起悪いなぁ。



 私は、感情がとても静かな人間だった。

 表に出るほど大きく揺れることもなく、何度も勘違いされることもあった。

 そんな私は、泣くことはなかった。

 みんなは泣いていた。

 ああ、私はみんなに泣いてもらえるような人になってたんだ。

 嬉しいなぁ、嬉しいなぁ。




「──俺、『 』が好きだった」


 どうしたの?急に。

「いつも大人しいって言われてて、実際その通りで、でも、本当は優しくて、思いやり深くて、そんな『 』のことが好きだった」

 ありがとう。嬉しいよ。

「言えて良かった……よ。本当なら、この言葉で、『 』を泣かせたかったなぁ。泣いたとこ、見たことなかったから」

 ……見てくれてたんだ。もう、それだけで、充分だよ。私は、満足。

「それじゃあ、また……来るよ」

 そう言い残し、私を愛してると言ってくれた人は、大粒の涙を流しながら去って行った。


 私には、何もない。

 だけど、何もない私でも、誰かの心に、何かを残すことはできたみたい。

 そのことが嬉しくて。

 その続きが見れないことが悲しくて。

 私は────


 ────大粒の涙で、自分の墓を濡らした。

なんとなーくで書いてしまった短編。

多分、このままじゃまったくわからないと思うので解説入ります。


まず、『私』は、打ち上げの前日に交通事故で亡くなりました。

そのことに気付かず、みんなと打ち上げに行った『私』。だけど、すでに死んでいるので、誰にも相手にされません。

アパートにつき、就寝。その時に見た夢は、『私』が死んだ時のもの。

場面が切り替わり、『私』の墓の前で、『私』が好きだったという男の独り言。

すでに葬式は終わり、『私』自身も死んだことを理解した後です。

あとはわかるでしょうか。


では、1200文字程度の短編にお付き合いいただきありがとうございました。

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