選択の扉 ひとつめ
じっとりと手の平ににじむ汗は緊張してるしるしだろう。
「ゲートを開けるのは簡単。パネルを割ってレバーを下げるだけよ」
僕はオルテシアの言葉を思い出す。
そうすれば彼女の元に行けるはずだとオルテシアは微笑んでいた。
「ビーはあなたを彼女に会わせたくないの。それが彼女の望みであっても」
オルテシアとトゥーリーだった組み合わせがいつの間にかオルテシアとビーに。
「レバーを下ろせば、保存庫の電源も落ちる。多くの命をその手で奪うのだ」
僕の手を見ながらビーは静かに告げる。
その言葉に僕は迷うべきなんだと思う。事実頭の奥の鈍い部分が揺れるのを感じているから。
「終わりを迎えた命でしょう?」
オルテシアがビーの腕をとり僕を促す。
今、わかること。
僕は、ビーから逃げなくてはいけない。
僕のするべきことと僕が思うこと。
彼女を殺さずに彼女に問うのだ。
僕はなんなのか。
君は何を望むのか。
共に生きることはできないのか。
具体的に保存庫の意味がわかっているわけじゃない。
後悔はする。
どちらを選んでも。
深呼吸する。
行動を頭の中でシュミレートしてパネルは壁を確認。
ここから先は躊躇いは命とり。
他のことは考えない。
ただ、彼女に問うことだけを思う。
深呼吸する。
パネルを割ってレバーを下げる。
開いて、一呼吸もなく閉まるという扉の内側に滑り込み、まっすぐ。
まっすぐ走る。
音をたてて背後で閉まる音が響いても振り返る時間はない。
非常用電源のレバーを上げに行かなければならない。
周囲から灯りが消えていく。
予備電源のレバーが納められているはずのパネルが光ってる。
届け。
間にあえ!!
指がしびれる勢いで僕はパネルをぶっ叩く。




