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花の王国  作者: とにあ
奈落の紫陽花
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『箱庭計画』

『箱庭計画』には時折りスネークと呼ばれる存在からの技術提供・情報提供が記載されていた。

 それに対して動く予算額は年間予算の四割を占めているときもあった。

 ただ、その翌年に進む計画の修正案、技術案は飛躍したものに変わていた。

 スネークが知識の、この、象牙の塔を示す呼び名なのだと知れた。

『蛇』

 そう呼ばれる。知識を知恵を与えたと伝えられる悪魔に例えられる。過ぎた知識(ちから)は災いに繋がるからだろうか?

 花の名前を持つ少女たち。ここに住むのは多くの花。

 人の住まないところ。

 彼女は寂しくないんだろうか?


 箱庭計画はずっとあったように思う。

 人は滅亡を、衰退に怯えていたからこそ、逃げ場を欲した。

 生きることに縋るのは自然 から外れた人にとって残された自然な欲求。

 僕は生きることに執着する。

 そして、理解した相手にも生きていてほしい。思うんだ。死の剣がどちらかを刺さなければ全てを滅ぼすという選択の時に僕はその刃に身を晒せるのだろうか?





 たぶん、できない。






 生き物のツトメは『生きる』ことだ。だから、箱庭計画も誕生したのだと思う。

 僕は生きなければいけない。

 僕の身体に『サラ』がいると言う。この眼球は『キラ』だと言う。じゃあ、僕は、僕はなんなのだろう。

 わからない。記憶が指し示す僕は、僕であり得ない。矛盾。


 彼女を求めるこの心すら僕は僕じゃない。


 知らないまま生きれば楽だろう。見ずにいられれば、見ないことにできれば、矛盾を無視できれば、どれほど楽だろう。

 それでも、抱いた疑問は僕を苛む。なかったことに気がつかなかったことにはもうできなくて。

「弟を抱きしめたかった」そう言った姉を出会わなかったことに、言葉を聞かなかったことにはできなかった。

 サラは、いつから僕を弟と呼んでいたのだろう?

 認めたい。認めたくない。

 僕はいったいなんなのか。考えを放棄することは正しいとは思えない。

 そしてきっと正解を与えてくれる存在は、沈黙を守るのだと思える。


 僕は僕。


 そんな単純な答えのはずなのに受け入れることが出来ない。


 終わらない思考。


 僕は……誰?



「お食事は、おえられましたか」

 ぎこちなく言葉を綴るオルテシア。

 僕は差し出される飲み物を受け取りつつ、頷いた。

 緑の瞳。短い髪。

 僕の知る君とは違う君がそこにいた。

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