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花の王国  作者: とにあ
薔薇の檻
2/49

夜の女

 ずりずりと這いずる音。

 夜、扉のそばへいくと、その音が異様に耳につく。

 昼間はローズとの時間。

 強気な中に時折覗く寂しげな色。

 放っておくことができず、抱きしめて「心配はない」と撫でてあげたくなる。

 ローズとしか会うことがないせいで、依存しているのかもしれない。

 いると言う使用人「ビー」には未だ挨拶ができていない。

 遠目に見かけて追いかけても追いつけたためしがないのだ。

 長い髪を背で束ね、暗いカラーのパンツスーツと思われる姿。

 この「南海の孤島」にあるお屋敷の使用人。

 そう。

 外部との連絡が取れない。

 少なくともローズは知らなかった。




 扉を開けると天井を這いずる女がこちらを見ている。

 張り出した緑色の目。

 彼女は吊るされているわけではなく、自力で天井にいる。

 ありえない角度にねじくれた四肢。

 動くたびに、ぎちゅりと気味の悪い音を立てる。

 毎夜、僕はその姿を見上げる。


 夜の屋敷と昼の屋敷はまるで別物のように違う。

 昼の屋敷は明るく清潔で心地良くすごせる。

 夜の屋敷は圧迫感と威圧感が支配していて、息が詰まりそうだ。


 それでも僕は廊下に出る。


 必ずそこにいる天井の女を見るために。



 女が僕を見つめる。

 僕は女を見返す。

 そんな夜を幾度過しただろう。


 女がいつもと違う動きをとった。

 僕から視線を外し、動き出した。

 ずぎゅりずぎゅりと天井を這いずり移動する。

 僕はとっさに彼女を追いかける。



 階段部屋のドアの上にある隙間に女は潜り込んでいく。

 昼間こちら側の階段部屋は閉ざされている。

 鍵がかけられているはずだ。




 カチ



 僕の耳に金属音が届いた。


 ドアノブをまわすと開いた。


 赤く暗い廊下が続く。



 女の姿が見えた。



 僕は彼女を追いかける。






 赤い廊下はいつの間にか青白い金属の通路に変わる。


「ここは?」




「お部屋までお送りします。夜間は部屋から出てはいけないとお伝えしておりませんでしたか?」

 濃いボルドーのスーツを着た背の高い女。

「あ、あなたは?」


「ビー。と申します」

 軽い一礼。そのままきびすを返し、進む。

「セキュリティが働く前にこちらへ」

 彼女は待つことなく進む。

 僕はあわてて彼女を追う。


 僕を部屋に送った彼女は静かに一礼する。

「夜は出歩いてはいけませんよ。ココで平穏に暮らしたいならばそれがルールです」



 扉が閉ざされた瞬間、なぜか僕は運命も閉ざされたような気がした。





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