相談する相手間違ってね?
後日。
王都の地下深く。
魔力導管の整備も昼休憩に入り、職人たちは地下道が交差する少し開けた場所へ集まっていた。
工具箱を椅子代わりに腰を下ろす者。
壁へ背中を預ける者。
皆それぞれ弁当を広げ、昼食を取っている。
ヒロも職人たちに混ざり、静かにパンを頬張っていた。
しばらく穏やかな時間が流れた後、ヒロは手を止め、真剣な表情で親方を見つめた。
「親方。」
「相談があります。」
その一言で、その場の空気が変わる。
親方も手を止め、職人たちも一斉にヒロを見る。
「……なんだ。」
「ついに職人へ転職する気になったか?」
「いやいや、新しい技術でも思いついたんじゃねぇか?」
「地下で何か異常でも見つけたのか?」
次々と予想が飛び交う。
ヒロは首を横に振った。
「違います。」
一同は顔を見合わせる。
それなら何だ。
地下には一瞬だけ静寂が流れた。
ヒロは真面目な顔のまま口を開く。
「女の子って、何をプレゼントしたら喜ぶんでしょうか?」
……。
地下道から音が消えた。
親方は固まる。
職人たちも口を半開きにしたまま動かない。
数秒後。
「ぶはっ!」
「はははははっ!」
「お、お前、そんな顔して相談することかよ!」
「心臓止まるかと思ったぞ!」
「地下が崩れたのかと思ったじゃねぇか!」
地下道は腹を抱えて笑う職人たちの笑い声でいっぱいになった。
親方は額を押さえ、大きくため息をつく。
「……お前なぁ。」
そう言いながらも、その口元には自然と笑みが浮かんでいた。
すると、一人の職人が笑いながら親方を指差した。
「でもよ、親方に聞いてもロクな答え返ってこねぇぞ!」
「そうそう!」
「どうせ酒だ!」
「いや、槌だろ!」
「手拭いもありだな!」
「毎日使うもんだから喜ぶぞ!」
「女の子に槌なんか贈るか!」
「親方なら絶対贈る!」
「間違いねぇ!」
再び地下道は大きな笑い声に包まれた。
親方は顔をしかめながら職人たちを睨む。
「てめぇら……。」
「俺を何だと思ってやがる。」
職人たちは顔を見合わせると、声を揃えた。
「鍛冶馬鹿!」
地下道にまた笑い声が響き渡る。
親方はしばらく黙っていたが、小さく鼻で笑った。
「……否定はできねぇな。」
その一言に、笑い声はさらに大きくなった。
ヒロも思わず吹き出し、地下道には昼休憩らしい穏やかな時間が流れていた。
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