私の力って結局なんなの!?
◆◇プロローグ◆◇
「右、左、ターンして、ハイ拍手!」
体育館に響く教師の号令に合わせて、私は適当にステップを踏んだ。
キュッ、キュッと上履きが床を擦る音が響く。もうすぐ文化祭。恒例のフォークダンス練習は、女子たちにとっての一大イベントだ。なんせ、我が校が誇る「三大イケメン」とお近づきになれる、合法的なチャンスなのだから。
「やばい、次B組の城島くんだよ! 相変わらずチャラかっこいい〜!」
「私は断然、神崎くん派! あのミステリアスな感じがたまらない……!」
「朝比奈くんも優しくていいよねー」
女子たちの黄色いひそひそ声が飛び交う中、私は密かにそろばんを弾いていた。
(城島蓮か、神崎流星か……どっちかとワンチャン付き合えれば、私のスクールカーストも爆上がり?)
打算まみれの考えを巡らせていると、ローテーションが回ってきた。
最初にやってきたのは、城島蓮だった。
遊び人イケメン筆頭、B組の問題児。女子を口説くのが趣味みたいな男で、どうしようもなく顔が良い。ほんの少し、オイルのようなガソリンのような匂いが微かに漂ってくる。
「よろしく」
「あ、う、うん。よろしく!」
心臓が跳ねた。が、蓮は私の顔をまともに見もしなかった。流れるようなステップで手を引きながら、退屈そうに視線を宙に泳がせている。その目が鋭く向いているのは、二列先にいる神崎流星の方角だった。
(……私、いる意味ある?)
整った横顔は文句なしにかっこいい。でも、まるで空気を相手にしているみたいだった。ステップが終わると、蓮はあっさり手を離して次の列へ消えていく。胸のときめきが、しゅるしゅると萎んだ。
次のローテーション。幼馴染みの朝比奈司が、目の前に立った。
「はい手だして、咲」
「あ、うん」
司はいつもと変わらない穏やかな笑顔で、私の手を取った。リードが丁寧で、ステップが乱れそうになると無言でさりげなく軌道修正してくれる。完璧だ。
優しくて、頼りになって、一緒にいると安心する。
(……うん、安心なんだよなあ)
胸がドキドキするとか、顔が赤くなるとか、そういうのは一切ない。小学校からずっと一緒にいるせいだろうか。もはや家具みたいなものだ。ひどいことを思っている自覚はある。ごめん、司。
そして最後のローテーション。
目の前に立ったのは——神崎流星だった。
涼しげな目元に、サラサラの黒髪。女子に一切の興味を示さないと噂の彼が、スッと右手を差し出す。
「よろしく」
「あ、うん。よろしく」
私の手が、彼の手と重なった瞬間だった。
——バチッ!
静電気が走ったような、奇妙な感覚。
見上げると、いつもは無表情に近い流星の瞳が、信じられないものを見るようにカッと見開かれていた。
彼の長いまつ毛が震え、私と繋いだ手をギュッと強く握りしめてくる。
「君……その力は……ッ」
「えっ?」
力? 腕力のこと?
確かに最近、スーパーの袋を両手に下げてダッシュとかしてるけど。
「日向さん。放課後、二人きりで話がしたい。君の『力』について、どうしても伝えなきゃいけないことがある」
「えっ、ええっ!?」
周囲の女子たちが「なにあれ!?」「神崎くんから誘った!?」とざわめき始める。
列の端では、城島蓮がはじめてこちらに視線を向けていた。さっきまで空気扱いしていたくせに、その顔はなぜかムッとしていた。
そして——司は。普段の穏やかな笑顔を一瞬だけ消し、氷のように冷たい目で私と流星を見つめていた……気がしたけど、気のせいだろうか。
そんなことより。
私の力って、なんなの!?
◇◆◇①言えない告白と不憫なエージェント◇◆◇
放課後の裏庭。
私は心臓をバクバクさせながら、壁を背にして立っていた。目の前には、真剣な表情で私を見下ろす神崎流星。絵に描いたような壁ドン状態である。
近い! 近いって!
まさか本当に告白!?
カースト爆上がり!?
「日向さん。単刀直入に言う」
「は、はい!」
「君自身も気づいていないかもしれないが、君には恐ろしいほどの——」
『ピンポンパンポーン! 業務連絡です。校庭に停まっている業者の方の軽トラ、至急移動をお願いしまーす。——あ、あと、現在旧校舎裏で重機を使った土管の撤去作業を行っています。危険ですので生徒は近づかないように!』
突然、頭上のスピーカーから間の抜けた校内放送が鳴り響いた。
流星がコホンと咳払いをして気を取り直す。
「……とにかく、君は今、ある組織から狙われている。僕が君を保護しなきゃいけない。なぜなら君の能力は——」
「咲〜〜〜!!!」
バンッ! と裏庭のドアが勢いよく開き、親友の麻衣が乱入してきた。
「今日カラオケ行かない!? ポテト無料券もらったの! って、うおっ!? 神崎くん!? ご、ごめんお邪魔しましたァーッ!」
「あ、ちょっ、麻衣!」
嵐のように去っていく麻衣。完全に告白シーンを邪魔してしまったと勘違いしている。明日には「神崎くんが咲に告白してた」という噂が校内を駆け巡るに違いない。
「……で、私の能力って結局なんなの!? 狙われてるってどういうこと!?」
「ああっもう! つまり君の力は、その——」
パララララッパラ〜♪ ピロロ〜〜〜〜!!
真下の窓から、吹奏楽部のトランペットとフルートの不協和音が爆音で降り注いできた。さらに、どこから迷い込んだのか、一羽のハトが「クルックー!」と羽ばたきながら流星の頭上をかすめていく。
「うわっ!? ちょ、待っ、鳥——痛ッ!」
完璧なイケメンだったはずの流星の髪型が、ハトの羽ばたきでボサボサに乱れる。
「こらそこ! 放課後に何騒いでるんだ!」
さらに最悪なことに、騒ぎを聞きつけた生活指導の鬼教師が、窓から身を乗り出して怒鳴ってきた。
「まずい……日向さん、君を巻き込むわけにはいかない! この続きは必ず明日!」
「えっ、ちょっと流星くん!?」
流星は乱れた髪のまま、私を庇うようにして裏庭のフェンスを飛び越え、猛ダッシュで逃げてしまった。鬼教師が「待てこら!」とそれを追っていく。
ぽつんと残された私。
……いや、なんだったの?
私の力ってなんなの!?
◇◆◇②乱入する蓮と司の影◇◆◇
翌日、学校は大騒ぎだった。
『学園一の完璧超人・神崎流星が、日向咲に告白してフラれたらしい』
そんな噂が全校生徒に行き渡っていたのだ。
昼休み。渡り廊下で私を通せんぼするように立っていたのは、万年二番手の遊び人イケメン、城島蓮だった。
彼は私の耳元に顔を寄せ、壁に手をついて甘い声で囁く。
「あの完神崎が、お前にフラれたんだってな。だったらお前を落とせば神崎に勝てるってことだ」
「いやそんなことない……」
「俺ならあいつより上手くやれる。俺と付き合えよ、咲。絶対楽しませてやれるぜ?」
動機が不純すぎる。完全に「流星への対抗心」だけで口説きにきている。普通ならお断りなんだけど、こいつ、顔が良すぎる。
(やばい……! 昨日の流星に続いて、今日は蓮! 私の時代、到来!?)
打算と呆れの間で顔を赤くしていると、廊下の向こうから物凄い勢いで走ってくる人影があった。
「そこまでだ、城島ァァァッ!!」
息を切らし、なぜか頭に枯れ葉を乗せた流星がスライディング気味に間に割って入った。どうやら来る途中で植え込みに突っ込んだらしい。完璧イケメンの面影がすごい勢いで削られていく。
「日向さんから離れろ! 日向さん、今度こそ伝える。君の恐るべき能力は——」
「おいおい、そんな必死になって。俺に咲を奪われるのが怖いのか?」
「違う! 恋愛の話じゃない! 彼女の力は——痛ッ!?」
流星が叫ぼうとした瞬間、なぜか床に落ちていたモップの柄が足首にクリーンヒットし、彼は盛大にすっ転んだ。
「……二人とも、何やってるの?」
呆れ声と共に現れたのは、私の幼馴染み、朝比奈司だった。司は転がっている流星と、舌打ちする蓮を一瞥すると、私の腕を引いて少し離れた場所へ連れ出した。
「いいかい、咲。あの二人は遊んでるだけだよ。咲のこと、ゲーム感覚で取り合ってる……。その気になっちゃ駄目だ」
「……そっか。そうだよね」
でも、ふと振り返ると、流星がモップと格闘しながら「くそっ、なぜこんなピンポイントで障害物が……ッ! 日向さん、待って!」と涙目でこちらに手を伸ばしていた。
不器用で、ボロボロで、全然スマートじゃない。でも、私を必死に守ろうとしてくれている。その姿に、胸の奥が少しだけキュンと鳴った。
……もしかしてあたし、流星のこと、気になってる?
なんてことを考えながら、私の頭の片隅では、まだずっと引っかかっていた。
私の力って、なんなの?
◇◆◇③明かされる正体と拉致◇◆◇
その日の放課後。
私は誰もいない旧校舎の空き教室に呼び出されていた。目の前には、あちこち絆創膏だらけになった流星が立っている。
「……日向さん。ようやくわかったよ。校内放送、麻衣の乱入、ハト、昼休みのモップ……すべて仕組まれた妨害だったんだ」
「仕組まれた? 誰に?」
「君の幼馴染み、朝比奈司だ!!」
流星がビシッと指を突きつける。
「彼は裏社会のエージェントだ。『偽の記憶を植え付ける』能力で、君の幼馴染みになりすましていた!」
「ええっ!? 司が!? 嘘でしょ!?」
「本当だ! ヤツは能力を持つ君を組織に売り渡す気だ。僕の組織なら君を保護できる! さあ急いで」
流星に手を引かれて走り出そうとした、その時。私はどうしても我慢できなくて、床に足をピタリと踏ん張った。
「ちょっと待って! 司がエージェントなのは百歩譲って信じるとして!」
「えっ?」
「私の力って結局なんなの!?」
「今それどころじゃないだろ!? いいから、君の力は——!」
「——そこまでだ、流星」
ガラッ!! と教室のドアが吹き飛び、底冷えするような笑みを浮かべた司が立っていた。普段の温厚な幼馴染みの面影は欠片もない。
「司……! 嘘だよね? だって、中学の卒業式で帰り道二人で泣いて……」
私がすがるように言うと、司は虫でも見るような目で私を鼻で笑った。
「ああ、あのデータね。あの日、君はぼっちだっただろ? 可哀想だったから、僕が一緒にいたっていう記憶で上書きしてあげたんだよ」
「え……」
背筋に冷たいものが走る。頭の中の思い出が、ガラガラと崩れ落ちていく音がした。
「悪いね、咲。君の力は僕の組織で有効活用させてもらうよ」
司の手にはスタンガンが握られていた。
「危ないッ!!」
流星が私を強く突き飛ばす。その直後、私をかばった流星の身体にスタンガンが直撃し、バチバチ音を立てた。
「ぐああぁぁッ!!」
「流星くん!!」
一発で崩れ落ちる流星。度重なる不運な妨害のせいで体力が限界だったらしい。なんて不憫なんだ。
「チッ……充電がキレちまった。まあ流星も能力者だ。手土産はこいつでも構わないか!」
司は気絶した流星の襟首を掴み、軽々と担ぎ上げた。そして、床にへたり込む私を見下ろして、ニヤリと嗤う。
「流星を返しいか? なら今夜、第4埠頭の廃倉庫に来い。逃げれば、こいつとは二度と会えないぞ」
ドンッ! と煙幕が弾け、視界が晴れた時には、司も流星も消え失せていた。
静まり返った空き教室で、私は一人、震える拳を握りしめた。
どうしよう、流星がさらわれちゃった。けど、それより、
「私の力ってなんなのォ!!??」
◇◆◇幕間 麻衣と、夕暮れの教室◇◆◇
司も、流星も、消えた。
私はしばらく空き教室の床にへたり込んだまま、動けなかった。
司が——あの幼馴染みの司が、偽物だった。
ずっと一緒にいたのに。ランドセルを並べて登校したはずの記憶も、全部植え付けられたものだったなんて。本当の私は、あの日ひとりで泣いていたんだ。
胸の中に、冷たくてどうしようもない穴がぽっかりと空いていた。
そこに、バタバタと足音が響いた。
「咲。探したよ」
麻衣だった。
息を切らして駆け込んできた彼女は、床にへたり込む私の顔を見て、すぐに隣にしゃがみ込んだ。何も聞かずに、ただそこにいてくれた。
しばらく沈黙が続いた後、麻衣がぽつりと言った。
「神崎くんのこと、好きなの?」
「……え」
「だってそんな顔してるじゃん」
そんな顔、ってどんな顔だろう。自分ではわからない。
ただ、さっきまで頭の中をぐるぐると回っていたのは、ボロボロになりながらも私を庇ってくれた流星の背中だった。スマートじゃなくて、全然かっこよくなくて、でも、目が離せなかった。
「……わかんない」
正直に答えた。
「でも」と、私は立ち上がった。
「でも、助けに行かなきゃ」
「危なくないの?」
「危ない」
怖い。本当に怖い。廃倉庫とか、異能力とか、裏社会とか、どう考えても私の日常じゃない。
でも——このままにしておいたら。
流星が。
私の力を教えてくれないまま、消えてしまう。
「私の力ってなんなのォ!!」
教室に私の叫びが響いた。麻衣が盛大にずっこけた。
「そっちかい!」
「そっちだよ!!」
私は鞄を掴んで立ち上がった。動機は不純かもしれない。でも足は、ちゃんと前に向いていた。
◇◆◇④クライマックス(能力発動……からのユンボ)◇◆◇
夜の第4埠頭、冷たい海風が吹き抜け、錆と潮の匂いが鼻をつく廃倉庫。
私はたった一人で、軋む鉄扉を押し開けた。
「来たか、咲」
薄暗い倉庫の中央。すっかり悪役の顔になった司と——パイプ椅子に縛り付けられ、すっかりヒロインのポジションに収まった流星の姿があった。顔には泥と擦り傷。完璧だった学園のアイドルは、司の暗躍のせいでボロボロになっていた。
「日向、さん……! なぜ来たんだ、逃げろ……ッ」
「逃げられるわけないでしょ! 流星くんを返して!」
私は司を強く睨みつけた。
「それから、いい加減教えてよ! 私の能力ってなんなの!? 狙われるほどの力って、いったい何なの!?」
私の叫びに、司はフッと冷酷な笑みを漏らした。
「いいだろう。冥土の土産だ、教えてやる。咲の恐るべき能力、それは——」
ゴクリ、と私が息を呑む。
流星が「やめろォォォ!」と悲痛な声で叫ぶ。
司が勝ち誇ったように口を開き、いよいよ私の力の正体が明かされようとした——静寂が張り詰めた、まさにその瞬間だった。
——ドゴォォォォォォォォォンッ!!!
鼓膜を破るような轟音と共に、廃倉庫の分厚いトタン壁が紙切れのようにひしゃげ、ぶち破られた。もうもうと舞い上がる粉塵。飛び散る瓦礫。けたたましく鳴り響くディーゼルエンジンの咆哮。
その土煙の中から現れたのは——黄色い巨大な鉄の塊。
「な、なんだッ!?」
司が素っ頓狂な声を上げる。
それは、巨大なアームを振り上げた一台の重機だった。
「見つけたぜ、神崎ィィィ!!」
操縦席から身を乗り出して叫んだのは、ヘルメットを被った万年二番手イケメン・城島蓮である。
「城島くん!? なんでここに!?」
「勘だ! なんか野生の勘で来てみたら、ビンゴじゃねえか! お前らだけで勝手に盛り上がりやがって! 神崎、お前を倒すのはこの俺だァァァ!! 朝比奈なんかにやらせてたまるかァァァ!」
事件の背景も、裏社会の陰謀も、私の異能力も、何一つ知らない男。ただ「ライバルに勝ちたい」という完全にズレた動機とパッションだけで、バイト先の土建屋からユンボを強奪(?)して突っ込んできたのだ。
「ふざけるな、一般人が! 僕の異能力で——」
「うおおおおおッ!!」
司が黒いモヤを発動しようとした瞬間、ユンボの巨大なバケットが情け容赦なく物理的な一撃を振り下ろした。
ガアァァァァンッ!!
「ぐはぁッ!?」
異能エージェント・朝比奈司。重機の圧倒的質量の前に、なす術もなく壁際まで吹き飛ばされ、白目を剥いて気絶した。
異能力、物理に敗北である。
土煙の中、ユンボの上でドヤ顔をキメる蓮。縛られたまま呆然としている流星。そして、置いてけぼりを食らった私。
……いや私の能力関係ないんかーい!!
私の力で解決する感じかと思ってたのに……
私の力ってなんなのォォォォ!?
◇◆◇エピローグ◇◆◇
数日後。
学校の屋上で、すっかり傷の癒えた流星が、蓮に向かって深々と頭を下げていた。司がどうなったのかは知らないが、流星の組織がなんとかしたらしい。
「城島くん。あの時は本当に助かった。君が来てくれなければ、僕たちはどうなっていたか……」
「ふ、ふん。勘違いすんなよ。俺はお前を倒すために行っただけだ」
「それでもだ」
そっぽを向く蓮に対し、流星は天然の、どこまでも真っ直ぐな笑顔を向けた。
「僕を助けに来てくれてありがとう。僕、君のこと好きだよ」
「はぁッ!?」
蓮の顔が、ボンッ! と音を立てる勢いで真っ赤に染まる。
ちょっと待って。遊び人の城島蓮が、男の言葉一つで、あそこまで照れる?
(……もしかして蓮って、本当は流星のことが——)
いや、ないない。ないわ。うん、絶対ない。
「お、おまっ、真顔で気持ち悪ィこと言ってんじゃねえ! 俺はただのライバルで——っていうか、俺は咲のことが本気なんだよ!」
蓮は照れ隠しのように流星を小突くと、バッと私の方を振り向いた。その目は、いつものチャラチャラした遊び人のものではなく、真剣そのものだった。
「おい咲! さあ、俺と神崎、どっちを選ぶんだ!?」
「えっ、私!?」
「待ってくれ、城島くん。僕だって、日向さんへの想いなら負けないつもりだ」
いつになく真剣な流星の言葉に、私の心臓が大きく跳ねた。
イケメン二人から同時に、しかも本気で見つめられている。ラブコメの主人公ならここで顔を赤くして「選べないよぉ」とかなんとか言うべきなのだろう。
でも、今の私には、それよりも遥かに、どうしても、死ぬほど気になっていることがあった。
「……あのさ」
「「うん(ああ)?」」
「そんなことより、私の力って結局なんなの!?」
私が身を乗り出して詰め寄ると、流星はハッとして真顔に戻った。
「そうだった、まだ伝えていなかったね。君の能力はね、実は——」
流星が口を開きかけた、その瞬間。
『ピロロロロロ! ピロロロロロ!』
彼のポケットの中で、無情にも着信音が鳴り響いた。
流星は顔をしかめてスマホの画面を見る。
「……ごめん! 組織からの緊急要請だ! また今度必ず話すから!」
「えっ、ちょっ、待っ——!」
流星は身のこなしも軽く、屋上のフェンスを飛び越えて(そこ三階だけど!?)あっという間に姿を消してしまった。
屋上に残されたのは、真っ赤な顔で固まっている蓮と、私だけ。
吹き抜ける秋風の中、私の魂の叫びが青空に向かって木霊した。
「だから! 私の力ってなんなのォォォォォォォ!?」
(おわり)
最後まで読んでいただきありがとうございます




