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many merry bad ENDs  作者: 源泉


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54/62

39話-1(分岐バッドエンド)

※この先は分岐となります。

物語の本筋を追う場合は、40話へ。



血のついた指先が、フィアの顎に触れる。

わずかに上を向かせた。


細い喉が、かすかに震えている。

怯えているのは分かる。呼吸も浅い。肩の力の入り方も、目の奥の揺れも、隠しきれていない。


それでも、女は泣いていなかった。


ただ、見ていた。

血の中に立つ男を。

目の前で野盗を屠ったものを。

理解できない何かとしてではなく、必死に意味を与えようとするような目で。


男は何も言わない。


顎に触れたまま、その顔を見ていた。

怯え方。

息の乱れ。

視線の逃げ場。

どこまで壊れていて、どこがまだ残っているのか。

そういうものを確かめるように、黙って見ていた。


フィアの唇が、かすかに動く。


「……ありがとう」


男が一瞬だけ沈黙する。


小さな声だった。

掠れて、今にも途切れそうなほど弱い。


それでも、はっきり届いた。


男の目が、わずかに細まる。


ああ、とだけ思う。


助けられたと勘違いしている。

血塗れの男を見て、なおそう思う程度には、普通の女だ。


それだけで、興味が薄れた。


理解できる反応だった。

予想できる言葉だった。

つまり、そこまでだ。


顎から手を離す。

フィアの顔が、わずかに下を向く。


そのとき、別の気配が二つ、森の奥から近づいてくるのを感じた。

急いではいない。だが真っ直ぐだ。

一つは荒く、熱を帯びている。もう一つは傷を抱えたまま、それでも止まらない。


面倒だと、男は思った。


ここで待つ理由はない。

この女が特別でないなら、なおさらだ。


殺す依頼もあった。

生かしたまま引き渡せという依頼もあった。

値の高い方へ渡せばいい。

その前に少し遊ぶのも悪くない。どうせ壊れるなら、その方がまだ使い道がある。


そこまで考えて、男はフィアを縛っていた縄に手をかけた。


刃が走る。

縄が切れる。


自由にするためではない。

持ち運びやすくするためだ。


フィアは一瞬だけ、何が起きたのか分からないように目を見開いた。

その顔に残るかすかな安堵が、余計に白けて見えた。


男は何も言わないまま、フィアの身体を肩に担ぎ上げた。


軽い。


乱暴に持ち上げられた衝撃に、フィアの喉から小さな息が漏れる。

だが、抗わない。

まだ助かったと思っているのか、それとも理解が追いついていないのか。どちらでもよかった。


血の匂いの残る拠点を背に、男はそのまま歩き出した。


焚き火はなお燃えている。

死体の間を風が抜ける。

夕方の光が長く伸び、木柵の影を地面に引きずっていた。


近づいてくる二つの気配は、まだ少し遠い。


間に合わない。


フィアは肩の上で揺られながら、何も言わなかった。

言えなかったのかもしれない。

それすら、もうどうでもよかった。


男は振り返らない。


ただ、どの依頼人に渡すのが一番面倒が少ないかを考えながら、山の奥へ消えていった。



bad end.

救いの誤認

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