24話-1(分岐バッドエンド)
※この先は分岐となります。
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昼前頃。
馬車は、順調に街道を進んでいた。
日差しは穏やかで、道も乾いている。
このままなら、夕方になる前には次の街に着ける。
三人は、そう思っていた。
異変が起きたのは、唐突だった。
馬車の車輪から、鈍い音がした。
続いて、揺れが不自然になる。
ルカがすぐに手綱を引き、馬車を止める。
確認すると、車輪の軸に歪みが出ていた。
「……参ったな」
致命的ではない。
だが、このまま進めば確実に壊れる。
修理はできる。
しかし――思ったより、時間がかかった。
工具を使い、仮留めを繰り返し、
完全とは言えないが、動かせる状態に戻す頃には、日が少し傾き始めていた。
ここから先、道は二つ。
一つは、広く見通しのいい道。
遠回りになり、途中で野宿を挟む可能性が高い。
もう一つは、少し道が狭いが、近道。
順調に進めば、夜には街に着ける。
フィアの体調は、まだ万全ではない。
長時間の移動や、野宿は避けたい。
そう考え、選ばれたのは――近道だった。
「急がないと」
誰かがそう言ったわけではない。
ただ、そうするのが自然だと思えた。
その道に入って、しばらくしてからだった。
――妙な違和感。
風が止んだように、静かすぎる。
視界は開けているのに、人の気配がない。
フィアが、胸の奥に冷たいものを覚える。
(……何か、変)
その直感が形になる前に、影が現れた。
盗賊だった。
数は多くない。
だが、位置取りが良すぎる。
道は狭く、馬車は急な方向転換ができない。
「いい馬車だな」
低い声。
「まさか、こんな道選ぶなんてな」
その時点で、分かった。
この馬車は、近道に入った瞬間から、目をつけられていた。
シリウスが、即座に剣を抜く。
だが――
次の瞬間、
馬車の中から、フィアが引きずり出された。
「やめ――ッ!」
咄嗟に身体を滑り込ませたルカの肩に、何かが叩きつけられる。
鈍い音。骨に響く感触。
息を呑む間もなく、背中から崩れ落ちた。
「フィア様――!」
剣を構えたまま、シリウスが一歩踏み出した瞬間、
刃が、フィアの首元に当てられた。
「動くな」
その一言で、すべてが止まる。
次に来たのは、衝撃だった。
後頭部に、重い一撃。
視界が揺れ、足元が崩れる。
膝が折れ、視界が傾く。
まるで空気ごと斜めに落ちていく。
意識が遠のく中、
背後で誰かが笑っている声だけが、濁った水のように響いていた。
「馬車には大したもん積んでなかったが……」
「これで十分だろ」
「……そういや最近噂になってる、行方不明の聖女様って、こんな見た目じゃなかったか?」
「知らねえよ」
乾いた笑い声。
「教会に返したって、褒められるだけで金にならねえだろ」
「そりゃそうだ」
短い沈黙。
「じゃあ」
「ああ……決まりだな」
シリウスに最後に見えたのは――
フィアの、こちらを振り返ろうとした横顔だった。
その輪郭も、やがて溶けていった。
視界が、完全に暗くなる。
bad end.
近道




