22話-1(分岐バッドエンド)
※この先は分岐となります。
物語の本筋を追う場合は、23話へ。
シリウスとフィアは話し合った末、
ルカの馬車に乗せてもらうことを決めた。
数日療養し、体調が回復しつつあるフィア。
今日こそ出発する予定だった。
しかし、フィアの熱が下がりきらず、
咳もまだ残っていたため、それは延期された。
「あの日、無茶をするから……」
そう言ったのは、ルカだった。
無理にフィアを背負い連れ出そうとしたシリウスは反論の余地はない。
ルカは判断に自信があった。
それは感情ではなく、計算の目だった。
この街での顔、宿との関係、情報の遮断。
一日程度なら、問題はない――
そう判断した。
シリウスも、それを否定できなかった。
だが――
世界は、待ってくれなかった。
相変わらず、穏やかに過ごしていた昼を少し過ぎた頃。
宿の廊下を、重たい足音が満たし始める。
一人ではない。
規則正しく、数が多い。
フィアは、先に気づいた。
胸の奥が、冷たくなる。
(……誰か、来た?知っている気がする……)
理由は言葉にできない。
けれど、身体が覚えている。
教会の気配だ。
次の瞬間。
ドン、と扉が叩かれた。
躊躇のない音。
確認ではなく、宣告。
続いて、低い声。
「教会の者です。少し、お話を。
すぐに済みます」
拒否を想定していない声だった。
廊下の奥で、別の音がした。
押さえつけられる気配。苦しげな息。
「ルカさん!すみません……!
本当に、すみません……!」
震える声で、薬屋の店主が謝っている。
首元に、何か突きつけられているのがわかる。
「……あんたたちを裏切るつもりはなかったんだ……俺は、あの宿の奴らが……!」
言い訳にならない言葉。
事情は、すぐに理解できた。
聖女と騎士が消えたという噂は、
すでに街の裏で静かに広まっていた。
最初に泊まった宿の者たち。
獲物を奪われたという逆恨み。
街へ来た教会の捜索隊への密告。
点が、線になる。
ルカは、静かに息を吐いた。
表情は変わらない。
だが、目だけが状況を正確に測っている。
(……ああ)
心の中で、短く思う。
これだから。
上手くいきすぎているときは、怖い。
再び、扉。
今度は、さらに強く。
「中を確認させていただいても?」
“お願い”の形をした、命令。
宿の外からも、足音が伝わってくる。 逃げ道は、もうない。
フィアは、シリウスの袖を掴んだ。
小さな力で。
けれど、はっきりと。
選ぶ余地は、もう残されていない。
扉が開かれる音がする。
静かで、確実な音。
それは――
出発を延ばした一日が、致命的だったことを告げる合図だった。
bad end.
「遅れた一日」




