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many merry bad ENDs  作者: 源泉


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3話

聖女が祈りを捧げる夕刻の聖堂。

その入口を、ひとりの聖騎士がじっと眺めていた。

彼の名前はシリウス。


教会直属の騎士団の中でも聖女専属の騎士として選ばれた彼は、日頃からフィアのそばを守っている。


日の落ち始めた夕暮れの中で、

彼は長い銀色の髪の一本も乱さず立っていた。



(今日は祈りの後、司教様に呼ばれているので、先に戻るように言われているが…)



それは今までも何度もあった。

夜遅く、時には朝を迎えるまで戻らないフィアを彼女の部屋の前で待ち続けた。


その度に疲れ切った様子で力なく歩くフィアに、何度手を伸ばそうと考えたか。

しかし、それは許されないことだった。


正式に聖女としての名前を冠する前の彼女とは、言葉を交わすこともあった。

司教様が神託を受けて教会に導いたという彼女は、どこか皆から距離を置かれて寂しそうに微笑んでいたのを覚えている。



シリウスの青い瞳がふと過去に向けられる。


数年前。

他の騎士団見習いの青年たちと共に訓練を終えたシリウスは、聖堂近くの中庭で彼らと共に休憩していた。


騎士団の一員とはいえ、まだ若い彼らはくだらない冗談を言い合い、笑っていた。


その空気の中、ふと聖堂の扉が開かれる。

現れたのは聖女になる前、それでも聖女候補として側仕えの侍女に囲まれたフィアの姿。


青年たちのじゃれ合う声がふと静まる。


淡い金と銀が溶け合ったような髪が、昼下がりの日をそのまま返すように流れる。

あまり日に当たらないせいか、白く透けるような肌と相まって彼女の存在をさらに儚くさせている。


ふと視線に気づいたのか、淡い瞳を向けて、青年たちのほうに会釈をして去るフィア。


その姿が見えなくなった頃に、彼らはようやく言葉を取り戻す。



「……相変わらず、人形みたいに整ってる」


「本当に司教様のお人形なんじゃないか?俺、見たことあるぜ……夜中に司教様の部屋から出てくる姿」


「おいおい、いくらなんでもあんな幼い子に……いや、でもその気持ちはわかるな」



笑いながら話す彼ら、年相応の冗談だと誰もがわかる。

だが、それでもシリウスには許せなかった。

下卑た会話を続ける彼らに、シリウスは訓練用の木剣を向ける。



「……口を慎め」


「おいおい、冗談だろうが」


「なあ、シリウスお前だってわかるだろう?あの憂いを帯びたような、妙な色気が……」



その言葉を言い切る前に、シリウスは彼らを突き飛ばし、その場は騒然となる。


そして騒ぎを聞きつけた騎士団の団長が駆けつけた頃には、倒れる青年たちと木剣を握りしめたまま振り返るシリウス。



「シリウス!いったいこれは何の騒ぎだ!」


「……申し訳ありません」



ただ頭を下げるシリウス。

理由を説明することでフィアを自分の言葉で汚してしまうのでは、と恐れた。



「何か理由があったとしてもやりすぎだ、処罰は後で」


「かまいませんよ」



不意に割り込む声は、決して大きい声ではなかったが、その場の空気を変える。



「司教様……!」



団長は跪き、シリウスもそれに続く。



「彼は、聖女になる彼女を間違った視線から守ろうとしたのです」



司教は、さらに言葉を続けた



「シリウス、と呼ばれていましたね、顔を上げなさい」



その言葉にシリウスは司教を見上げる。



「彼女……フィアが正式に聖女となった時には、貴方のような方に守っていただこうと思っています」



司教のその言葉が、誇らしくシリウスの心を支えていた。


それから数年後、実際に聖女直属の聖騎士に任命される。




記憶をたどっていたシリウスの意識が、ふと現実に引き戻される。

そのきっかけとなった遠く聞こえる声。



「フィア様?」



シリウスは聖堂の扉を勢いよく開き、飛び込む。

しかし、その中に探す彼女の姿はなかった。


確かに聞こえた悲鳴。

この教会は騎士団によって守られており、侵入者の心配はほとんどない。

この国の魔を払う聖女の祈りの守りが強いため、魔物が現れることもありえなかった。


聖堂の先――司教の部屋。

シリウスは、確かに彼女の声がその方向から聞こえたことを思い出す。


シリウスは考えることをやめ、走り出していた。

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