12話1-3(分岐)
※この先は分岐となります。
(12話-1の続き)
物語の本筋を追う場合は、13話へ。
司教は、フィアの腰に回した手を離し、一枚の書類を取り出した。
それに目を落としたまま、淡々と告げる。
「シリウス。貴方は聖女を攫い、穢れた外界へ連れ出しました――」
一枚、紙をめくる音。
「通常であれば、処刑。
あるいは、死ぬまでの投獄が妥当でしょう」
フィアの肩が、わずかに震える。
司教はそれを見ない。
「ですが今回は、事情が異なります」
ゆっくりと顔を上げ、シリウスを見る。
「貴方は、“聖女の願いを聞いた”」
その言葉が、静かに落ちた。
「助けてほしい、連れ出してほしい。
そう言われた結果の行動だった」
司教は、穏やかに頷く。
「それに、フィアも貴方が罪人になることは望んでおりません」
一瞬、希望のようなものが、空気に混じる。
だが、次の言葉で、それは不穏な色に染まる。
「本来なら“終わり”を与えるところを、
別の形に変えるだけです」
フィアが、思わず口を開きかける。
だが、声は出なかった。
司教は微笑みながら続ける。
「シリウス……貴方は、見目がいい」
事実を述べるような口調だった。
「その銀色の髪、整った顔立ち、鍛えられた身体。
そして何より――」
一拍。
「聖女に仕えていた聖騎士、という経歴」
その言葉に、シリウスの指先がわずかに動いた。
司教は、その反応を見逃さない。
「世の中には、何かを所有することで欲を満たす人々がいます」
静かな声。
「それも、人には知られぬよう、密やかに」
司教は、含みを持たせるように口元を歪めて嗤った。
「まして、清廉で、従順。
正しさを疑わずに従っていた美しい聖騎士ともなれば、引く手も数多でしょう」
フィアの喉が、ひくりと鳴る。
「現にこれまでも、貴族の奥方や異国の姫君から……」
司教は言葉を切り、すぐに言い直す。
「――いえ。
そんな世界があるなど、貴女は知らなくてよかった」
司教は、初めてフィアを見る。
その目は、どこまでも慈悲深かった。
「ですが――
彼を罪人にしないでほしい。
そう願ったのは、貴女でした」
フィアの胸が、強く締めつけられる。
「罪“人”でなければ、貴女の願いは叶う」
司教は、静かに言った。
「処刑でも、投獄でもない場所で……
彼は、生かされるはずです」
沈黙。
シリウスは、何も聞かなかった。
行き先も、何を求められるのかも、
問う意味がないことを、すでに理解していた。
ただ一度だけ、フィアを見る。
責める色はない。
恨みも、怒りもない。
それが、何よりも残酷だった。
司教は、書類に署名をしながら、最後に告げる。
「安心なさい、フィア。
貴女の願いは、確かに叶えました」
その言葉が、
二人の世界を、完全に断ち切った。
bad end.
罪“人”ではなく




