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many merry bad ENDs  作者: 源泉


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18/21

12話1-2(分岐)

※この先は分岐となります。

(12話-1の続き)

物語の本筋を追う場合は、13話へ。



「シリウス、目をそらさずに見続けなさい。

それが二人への罰になります」



司教は、シリウスから視線を外さないまま、フィアを自分の前に立たせた。


その位置は、近すぎた。

逃げ場がないほどに。



「さあ、フィア……こちらへ」



促す声は、柔らかい。

だが、拒否を想定していない声だった。


フィアは、一歩、前に出る。

迷いはない。

けれど、足先がわずかに震えている。



「よろしい、いい子ですねフィア」



司教は満足そうに頷くと、フィアの髪に指を絡めて愛おしそうにそう囁いた。


「これは、彼女が選んだ結果です」


フィアの背に、司教の手が添えられる。


押し倒すほど強くはない。

だが、その位置と距離が――意味を持ちすぎていた。


シリウスの喉から、掠れた音が漏れる。


「……司教様、やめてください……!」



司教は、初めてシリウスを見た。


「何を、です?」


穏やかな問いかけ。

貼り付いたような微笑み。

衣擦れの音。


「“正しい位置”に戻すためにも必要なのです」


司教の指が、フィアの顎にかかる。

顔を上げさせる動き。


「声を出してはいけませんよ、フィア」


囁きに近い声。


「貴女は、聖女です。苦しみを見せる存在ではない」


フィアの唇が、わずかに開く。

だが――声は、出ない。


その沈黙を確認してから、司教は続けた。


「ほら、シリウス……彼女は拒んでいません」


司教の手が、逃げ場を塞ぐように腰にかかる。

その動きは、儀式の作法のように正確で、迷いがなかった。


フィアの身体が、びくりと跳ねる。


それでも――

声は、上がらない。


「……っ、フィア様……!」


シリウスの声は、完全に崩れていた。


体を床に押し付けられ、膝をつかされ、

“見ること”だけを許された位置で。


司教は、その反応を逃さない。


「分かりますか?」


淡々と、言葉を落とす。


「彼女は、耐えています。貴方のために」


その一言で、シリウスの呼吸が乱れた。



司教の声は、正しさだけで出来ている。


「彼女は今――“聖女として、沈黙する”ことを選んでいる」


フィアの指が、きつく握り締められる。

爪が掌に食い込み、白くなる。


それでも、声は出ない。

司教は満足そうに頷いた。


「……美しいですね。

これが、守られるべき姿です」


その言葉が、

シリウスの中で、何かを完全に折った。


――助けを呼ばない声。

――拒絶しない身体。

――自分のために耐えている沈黙。


「……やめてくれ……!」


その懇願は、誰にも届かない。


司教は、最後にこう告げた。


「……覚えておきなさい……、っ……」


司教は、ほんの一瞬だけ言葉を切った。


「貴方が守れなかったのではありません。

貴方が――“守らせてしまった”のです」


そして。

規則正しく続いていた気配が、不意に乱れ、途切れた。



「……ぁ、いや…っ……」



その瞬間、フィアから、

押し殺していたはずの声と何かが、こぼれ落ちた。


叫びでも、言葉でもない。

ただ――限界が裂けるような、かすかな声だった。



「声を出してしまいましたね、フィア。

……これでは、また最初からです」





badend.

破られたのは沈黙と

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